高畑勲監督が絶賛、スタジオジブリ協力の「The Red Turtle」制作過程をアヌシーで明かす

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世界各国のトップクラスのアニメーションが、6月15日から6月20日までフランスで開催されたアヌシー国際アニメーション映画祭に集まった。なかでも長編映画は、大きな関心を呼ぶひとつだ。コンペティション部門には日本から審査員賞を受賞した『百日紅』(原恵一監督)、『花とアリス殺人事件』(岩井俊二監督)がノミネートされ話題を呼んだ。
コンペだけでなく、さらに先を見る業界関係者から注目を浴びるのが「Working in Progress」と呼ばれるセクションだ。「Working in Progress」は、現在制作中、近々完成見込みの作品をその制作過程として紹介する。日本からは7月11日に日本公開予定、フランスでは2016年1月13日公開予定の『バケモノの子』もプログラムされ大人気となっていた。

さらにもうひとつ、日本の映画ファンにも見逃せない長編アニメーションがある。『The Red Turtle』だ。監督は前作『岸辺のふたり(Father and Daughter)』が絶賛されたフランスのマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督。その最新作だけにアニメーション関係者の関心は高い。日本とつながりは、スタジオジブリを通じたものだ。
19日に市内の会場のひとつで開催された本作の「Working in Progress」には、マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督、プロデューサーのクリストファー・ヤンコビッチ氏、監督補のジャン=ピエール・ブシェ氏らが登壇し、作品について語った。その冒頭では、スタジオジブリの協力によりプロジェクトが実現したことなどが紹介された。またセミナーの中でも、高畑勲監督、鈴木敏夫プロデューサーに関する言及がたびたびあった。アニメーション制作にあたり、密なコミュニケーションを取っていることが感じられた。

『The Red Turtle』の何が、高畑監督やスタジオジブリの心を捉えたのだろうか?それは今回のプレゼンテーションを見れば明白だろう。セミナーでは設定やデッサン、場面カット、背景美術が次々に映し出されたが、どれも息を飲むような美しさを持っている。淡く、繊細さを持ち、同時に細やかなエモーションな動きを実現する。
一見は伝統的な手描きの映像ではあるのだが、新しい技術が随所に盛り込まれている。手描きのアニメーションにCGを併せて用いることで、はっきりし過ぎない絵が生まれている。それが描きこまれた背景に一体化することで全体として水彩画のような画面が成立する。それは高畑勲監督が『かぐや姫の物語』で目指したものを、別のアプローチから挑んでいるかのようにも見える。高畑監督の応援も納得のいくところだ。

制作コンセプト、映像づくりについてはたっぷり語られたが、物語については今回ほとんど言及されなかった。紹介された映像には、無人に見える島と、ひとりの男、女、子ども、そしてタイトルに言及されている“赤いカメ”が登場するようだ。詳しいストーリーは本編完成を待ちたい。
作品の完成は2016年を予定するとのこと。来年のアヌシー、そして世界のアニメーション界を席巻する可能性もありそうだ。その予感はすでにある。今回の「Working in Progress」における熱狂的な歓声、拍手がそれを示している。制作の経緯も考えれば、日本公開の可能性も高いだろう。いま最も完成が待たれる作品だ。
[数土直志]

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