堀江貴文×石川光久「攻殻機動隊を巡るトークセッション」 『攻殻機動隊ARISE border:3 Ghost Tears』上映記念対談 後編 | アニメ!アニメ!

堀江貴文×石川光久「攻殻機動隊を巡るトークセッション」 『攻殻機動隊ARISE border:3 Ghost Tears』上映記念対談 後編

『攻殻機動隊』25周年、そして『攻殻機動隊ARISE border:3 Ghost Tears』の上映開始を記念し、堀江貴文さんとProduction I.G社長・石川光久さんの行った対談の後編をお届けする。

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今年で25周年を迎えた『攻殻機動隊』、その新シリーズ『攻殻機動隊ARISE』のborder:3が、6月28日に上映開始となった。
『攻殻機動隊』25周年、そして『攻殻機動隊ARISE border:3 Ghost Tears』の上映開始を記念し、堀江貴文さんとProduction I.G社長・石川光久さんの行った対談の後編をお届けする。
[取材:アニメ!アニメ!編集部 構成:細川洋平]

□ 石川光久(いしかわ・みつひさ)
Production I.G代表取締役社長。1958年東京都生まれ。竜の子プロダクションを経て1987年アイジータツノコ(現Production I.G)を設立。『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』『イノセンス』をはじめ、数々のアニメーション作品を制作。

□ 堀江貴文(ほりえ・たかふみ)
1972年生まれ。ライブドア元代表取締役社長CEO。主な著書に『ゼロ-なにもない自分に小さなイチを足していく-』(ダイヤモンド社)『収監なう。(シリーズ)』(文藝春秋)がある。

『攻殻機動隊ARISE border:3 Ghost Tears』
2014年6月28日(土)全国劇場上映【2週間限定】
/http://www.kokaku-a.jp/

■ ひとを好きになること

―アニメ!アニメ!(以下、AA)
『攻殻機動隊』の世界では「自我はいったいどこにあるのか」ということが1つの大きなテーマとなっています。堀江さんは自我をどのようなものだと考えますか?

―堀江貴文氏(以下、堀江)
自我というのは自分が自分であると自己肯定することですよね。頭の中に「自分は自分だ」というループが生まれて毎日毎日それを再確認しながら生きている。
例えば人を好きになるのも同じようなことです。「人を好きになる」って不思議じゃないですか。ある日ある女の子のことをすごく好きになって、どんどんその感情が増幅されていく一方、どうして好きなのかははっきりしない。「何で私のこと好きなの?」って言われても「わかんねえ」「好きだから好きなんだよ」としかいえない(笑)。「好きだから好き」と思い込むことで好きという気持ちを確かめる。
だから超好きだった人に10年後たまたま再会するとループが切れてるから「なんでこいつのこと好きだったんだろう?」ってなるんです(笑)。

―石川光久氏(以下、石川)
なるほど(笑)。それと同じで自我もいい加減だから、ある瞬間にふと自分が自分でであることを忘れることもあるんですよね。

―堀江
そうそう、だから自分であることをずっと再確認し続けないといけない。自我も恋愛も同じようなループの回路ってことです。『攻殻機動隊』っていうのはつまりそういう「思い込み」を軸に考えていく作品ですよね。

―石川
その通りですね。

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■ 意識を転送する

―石川
堀江さんの著書『ゼロ』を読んで目を惹いた箇所が2つありました。「消えることのなかった死への恐怖」と「テクノロジーが世界を変える」という2編のエピソード。前者には死への恐怖と克服とが書いてありました。「死に対する恐怖はいまもある」とも。人間には「死に抗う」といったテーマがずっと存在しています。どうにか「死」を回避できないかと考えます。
続いて書かれていた後者が実に興味深かった。「意識と肉体を切り離して、意識をロボットに転送する」とあったんですよね。
堀江さんが書いた「肉体を切り離して意識を転送する」という考え方は『攻殻機動隊』の世界の「ゴースト(※)」という概念に繋がるんですよ。「脳を移植する」こととは違うんですよね。そもそもコンピューターに「記録」を蓄積させることはできるけど、「意識・感情・欲望」を発生させたり「記憶・経験」を蓄積させることは困難です。そのコンピューター上に「人格・自我」を転送させるという考えが、まさに士郎さんと似ているなと思った訳です。
(※『攻殻機動隊』の世界での「人格・自我」の概念。転送するとオリジナルが失せ、別物が新生する。)

―堀江
そうなんですか。

―石川
そもそも「意識を転送する」ということを具体的に語った人が士郎さん以外で僕の周りにはいなかったんですよ。堀江さんにとって「意識を転送する」は、どういった意味なのですか?

―堀江
人間の細胞というのはかなりの頻度で入れ替わっていて、さらに分子レベルで見ると数ヶ月でほぼ体全体が置き換わるって言われてます。脳の中の分子も常に入れ替わっているわけですよ。なのに意識は連続してる。昨日の自分と今日の自分を「連続した存在だと思っている」。いわば「自分がずっと続いている」と思い込んでるわけです。
「意識の転送」は意識が思い込みを続ける中で、脳を徐々に別のものへと置き換えていくということです。脳って一部の機能が麻痺しても意識は残りますよね。脳梗塞とかで半身不随になった人にも意識が残るように。その状態を保ちながら脳を有機物から無機物へスライドしていって、最終的には意識を無機物の中へ全て移してしまう。そういう世界はいずれあり得るだろうということです。

―AA
それはまさに『攻殻機動隊』的な世界に思えます。そうした世界の訪れは人間にとって幸せな事だと思いますか?

―堀江
幸せとか幸せじゃないとかは僕は考えないんです。技術があるなら人間はそれを使うだけです。
生来的に人間は可能なことは試したくなるという生き物なんです。例えば、アインシュタインが相対性理論を思いついた。[E=mc2](エネルギー=質量×光速の2乗)っていう方程式を導き出したわけです。その結果からとてつもないエネルギーが取り出せることが分かった。するとどうやって取り出そうかってみんな考えて、一番手っ取り早い取り出し方は爆弾とわかってしまった。高濃度ウランの核分裂で連鎖反応が起きるらしい、それによってできたプルトニウムはさらに分裂するらしい、と。そうなると試したくなるわけです。人間って、そういう存在ですよね。パンドラの箱があったら開けたくなる。だからその「いい/悪い」で考えることに僕は意味がないと思っています。結局やっちゃうだろう、ってことです。

―AA
ではもし「義体(※)」の技術があって「これを使えば堀江さんの寿命が三倍延びます」と言われたら、試しますか?
(※『攻殻機動隊』の世界での身体代用パーツ。手足の義体から全身の義体まである)

―堀江
真っ先に試すでしょうね。試さないんですか?

―AA
怖くないですか?自分の体を科学技術に預ける怖さもあると思います。

―堀江
面白いよねって、真っ先にやっちゃいますよ。

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