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[山本寛監督、柿崎俊道プロデューサーら 立命館大学映像学部で「映像と地域活性化」を語る-後編-

[山本寛監督、柿崎俊道プロデューサーら、京都、立命館大学映像学部のクリエイティブ・リーダーシップセミナーで、「映像と地域活性化」について講演] 。後編は山本監督の『Wake Up, Girls!』の経験などを届けます。

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立命館大学映像学部の講演「映像と地域活性化」山本寛監督
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[山本寛監督、柿崎俊道プロデューサーら、京都、立命館大学映像学部のクリエイティブ・リーダーシップセミナーで、「映像と地域活性化」について講演]

■ 東北を元気にしたいという想いが『Wake Up, Girls!』を生み出した

このような中、経験したのが東日本大震災だ。山本監督は、この震災を「国難」であるとし、自身も実際に何度かボランティア活動を行うなど、復興を進めるうえで自分が出来ることを模索していったという。
転機はTwitterに流れてきたあるつぶやきを見たときに訪れたと山本監督。「東北地域を聖地とするアニメが出来ないか?」というものだった。このツイートは、山本監督自身に向けられたものではなかったが、「私が横槍を入れて、『わかりました』と思わず返信した」と山本監督は当時の心境を述懐した。
監督自身、南相馬で除染をやるなど実際に体を動かしながらも、この「国難」において、自分がやはり出来るのは「アニメによる聖地巡礼」だと気がついたという。

むろん、聖地巡礼を生み出すのは簡単ではないのも経験済みだったと山本氏。実際にスムーズにいかないケースとして筆頭に上げれられたのが著作権関連の問題だ。
地域活性化なんだからと、原作者に確認をせずに「勝手に話を進めてしまう」というノリもこれまでの作品の中で関わってきた地方の関係者にはあった。こういった著作権に対する意識の弱さは原作者を疑心暗鬼にさせる要因になる。一方、自治体側は自治体側で「なぜ、使わせないんだ?」といぶかしがるという形で溝が深まっていくことが多いという。

そこで、プロジェクトを進めるにあたってオリジナルで行くと決断するに至った。また、かねてから交流があり、『THE IDOLM@STER』のシリーズ構成も務めた待田堂子氏に相談したところ、被災地を聖地巡礼の場所にするうえでその場所を一過性のものではなく継続的に参加できる状態をつくるにはイベントだとひらめいた。アイドルが居れば定期的なイベントが可能だ。そこで、アイドルをテーマにアニメをつくることを着想した。つまり『WUG!』の原案は東北振興を大前提に進められていったことが分かる。
なお着想時期は2011年5月だったとのこと。従って、『あまちゃん』がご当地アイドルをテーマにしたことを聞いたとき非常に驚いたという。

舞台は仙台とし、取材を進めるうえでは仙台フィルムコミッションを通じ、地元の方々に許可を得ながら進めたので、建物や景色だけでなく、部屋の内装や各種小道具などあらゆるものを取材が出来たと山本氏。ロケーションハンティングで得た
情報はトータルで40GB以上にも及んだ。また、グリーンリーヴス・エンタテインメントの事務所は学習塾が選ばれ、外観のみならず、そこに設置されていたストーブ、コンポカセット、蛇口までもが忠実に再現されたとのこと。また主要キャラクターである林田藍里の実家として設定された、仙台駄菓子の老舗「熊谷屋」は、店舗内で実際に林田藍里の実家であることをアピールし、作品にちなんだ菓子も販売しているとのこと。
一方、ロケハンを進めてきた中で偶然見つけた場所もある。一例として挙げられたのが、勾当台公園野外音楽堂。実際にその場所に行ったときに音楽堂で大学生が公園をライトアップしてイベントをおこなっていたとのこと。当時、映画における最後のライブ公演をどこにするか決めていなかったのがそれを見て即決したと、山本監督は語った。

なお、これらを背景にするにあたり、彩色はするものの、写真の構図をそのまま再現する場合も多いという。もともと、その意図でロケーションハンティングをするのではこれは当然のことと言えば当然だが、聖地巡礼を一種のオリエンテーリング的現象と分析した山本監督は、画面で使われている構図をファンが見つけ出し、それを忠実に写真で写してコミュニティと共有することも聖地巡礼の楽しみであると理解を示した。
遊び感覚でWin-Win関係を築き上げ、ファンが、地元に行ってラーメンを食べたり、お菓子をたべたりして少しでも地域に貢献すれば、熊谷屋のお菓子のように、作品にちなんだ地元ならではの商品をつくってくれるなど、新たな取り組みも進むのではと期待を膨らませた。

《animeanime》
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