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『キングゲイナー』10周年記念で富野総監督らがトークイベント「こんな作品になったのは**がいけなかった」

3月23日、東京国際アニメフェアにてキングゲイナー10周年記念イベント 『キングゲイナー祭 エクソダス、するかい?」が開催された。最終回の放送日から10年目となる3月22日にBDメモリアルBOXが発売となったことを受け、メインスタッフが久々に集った。

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■ オープニングについて

富野
「オープニングのコンテを切るまではシリアスに構えていましたし、吉田さんともそのような話をしたと思います。それがこのような(明るい)作品になってしまったのは、基本的には(オープニングを作曲した)田中公平がいけなかったという言い方になります(笑)。半分以上本当なんです、この歌詞でああいう曲想が出てくる予定がなかった。田中公平というちょっと素っ頓狂なおじさんがああいうことをやってくれたときにムカッとするわけです。どうやって田中公平を黙らせるかということでなかなかコンテが描けず、ダンスナンバーを入れるのに2日か3日はかかっています。その上で(シベリアで戦う)オーバーマンだからアイススケートのシーンも入れたい、ということまで考えて、田中公平に返すものを見せないといけない」

■ 制作中のエピソード

安田
「(オーバーマンは)筋肉を使うロボットということで永井豪先生の『アイアンマッスル』に被ると負けた気がするから、筋肉なのに筋肉じゃないものにしなければいけないという思いで、服になりました。シベリアだからスノーボードをやっている少年が吹雪のなかで雪の巨人に出会うというイメージが思いついて、そこから1年かかってできました。富野アニメだからガンダムを越えなければと思ったので、俺的なガンダムなんです。いまどき関節も見えないだろうと。富野さんは僕のキャラクターデザインの上がりが遅いと、ご自身で出してくるんですよ。『この服が嫌だったら早く描け』とプレッシャーがすごいんです。僕が描かないと、どんどん富野キャラになっちゃう(笑)」

吉田
「富野さんがラフを描いたものは山根公利さんが、安田さんが描いたものは僕が(最終的なデザインを)やるという役割分担がありました。富野さんは演出家だけど絵も描かれるじゃないですか。自分でアクションレコーダーで動きを描いて絵を入れようとするんです。それで吹雪を『6枚の繰り返しでやりたい』とずっと言っていて『6枚じゃできませんよ。8枚はかかります』と言ったら、と6枚で描いてきてアクションレコーダーでかけたら動いてないんですよ(笑)。『やっぱり8枚かかるのね』と言ってくれて『僕なら8枚かかるけど、もっとうまい人なら6枚で描けますよ』と言ったら、才能がないと聞こえたみたいで、そのときに椅子を蹴られたんです(笑)。それは認められた感じでしたね」

大河内
「富野さんとやるならそんなに何回も機会はもらえないだろうから、ぶん殴られてでも何かを出そうと思っていました。すごくがらんとしたスタジオの中に富野さんの机があって、どこでも座っていいよと言われたので「なんでわざわざ隣に来るの?」みたいな嫌な顔をされつつも、一番プレッシャーのかかる場所で1年間やりました。怒られたことで覚えているのは、脚本を出したあと、富野さんがため息をついて『本当に下手だね』だけ言って帰っちゃったことがあって、そのときはショックで泣きそうになりましたね」

富野
「その話は絶対に嘘だと思います。60になっている年寄りが若いスタッフにそういうことを言うわけがない(笑)」

■ キングゲイナー』に参加して変わった点

大河内
「脚本の密度が明らかに上がりました。脚本を富野さんに見せたとき『お前はスピードが遅いんだ。もっと早く事件を起こせ』と言われたのを覚えています。それはすごく勉強になりましたね。僕に小説家としての癖が残っていたんだと思うんですけど、踏まえなきゃいけないことの説明が長かったんです。そこは矯正されましたね」

吉田
「それまでは職業アニメーターとしてずっとやっていこうと思っていましたが『キングゲイナー』でキャラクターデザインやべつの仕事に触れるようになって、以降そっちもやってみようかなと思うようになりました。それまでは(キャラクターデザインには)全然興味がなくて、画面を作りたいというのはあったんですが、全然変わっちゃいましたね。(『キングゲイナー』以前は)アニメの女の子とかには興味がなかったですから」

安田
「企画の初期で『バンダイさんいらないかな?』というオーラを出していたので、そういう閉鎖的な態度が結果的にプラモデルを出ないことにつながってしまったのではないかと反省しています。『まず俺のを見ろ』という雰囲気にしちゃったのがよくなかったのかなと引っかかっていて、のちのデザインにかなり影響が出てますね」

富野
「ただバンダイの立場だと『キングゲイナー』みたいなものを見せられて『フィギュアにはこういう方向性もあるのか』と教えられた部分はあったと思う。メーカーとしてなかなか本気になってくれない部分もあるし、いまでもその気配はあるけれど、萌え系から始まっているフィギュアの潮流の中で、バンダイさんが幅を広げるというのは大事なこと。そういう意味で、こういう10周年みたいなことをやってもらってタイトルを思い出してもらえると嬉しいし、次のステップになれば嬉しいし、そうなると思います。そういう意味では安田君の手が入ってくれてありがたいと思っています」

――監督が『キングゲイナー』で変わった点は?

富野
「変わらない変わらない(笑)。この10年、変わらなかった。だからこれを変わるためにどうしたらいいかということで『お先に死ぬぞ』という競争が始まっているので『変えられたらおめでとう』というところに来ています。そういう富野の生き方を見て舌打ちしてくれても構わないし、俺はこうするぞというべつの道を選んでいただいてもいい。そのための参考資料になるように、わかりやすく死んでいきます(笑)」

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《animeanime》
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