フランスのコンテンツ産業に対する地域支援 ヨーロッパのアニメーション動向 by 伊藤裕美 | アニメ!アニメ!

フランスのコンテンツ産業に対する地域支援 ヨーロッパのアニメーション動向 by 伊藤裕美

[取材・文: 伊藤裕美(オフィスH)]ヨーロッパでは地方単位でもコンテンツ制作にさまざまな支援が行われている。フランスの地域支援で最も貢献しているのが、広域的な地域経済単位のものだ。

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国際アニメーション・フェスティバル「アヌシー2012」で見た ヨーロッパのアニメーション動向 第3部 フランスのコンテンツ産業に対する地域支援 

取材・文: 伊藤裕美(オフィスH)

■ フランスのコンテンツ産業に対する地域支援

ヨーロッパでは地方単位でもコンテンツ制作にさまざまな支援が行われている。フランスの地域支援で最も貢献しているのが、広域的な地域経済単位のものだ。その先導的なものが、フランス西部Charente(シャラント県)のアングレームを中心とする「Poitou-Charentes(ポワントゥ・シャラント)、南東部のリヨンやアヌシーを含むRhône-Alpes(ローヌ・アルプ)地域圏、さらにパリ首都圏のÎle-de-France(イルドフランス)だ。
EU圏では欧州委員会が指定する「AFR区域指定の公的助成制度」がある。地域の要望と計画を受けて各国政府が認定するもので、フランスでは「PAT国土整備助成金」が欧州委員会の承認を経て、コミューン(地方自治体/市町村)単位で適用される。加えて、深刻な若年失業者対策として不安定都市区域(ZUS)に雇用を創出するために、「ZFU都市免税区域」を指定し、期間限定の特例措置を行っている。

コンテンツ業界では北部フランス、リールの「Plaine Images(プレヌ・イマージュ)」が適用を受ける。リールを中心とする地域は歴史的に繊維業、石炭業、金属業で繁栄を誇ったが、20世紀後半の産業構造変化が地域経済を直撃した。
今は自動車と鉄道輸送の生産基地となったとは言え、経済のグローバル化が先行きに影を落とす。全国平均より高い失業率、とりわけ若年・未経験者の失業は深刻だ。リールとその周辺地域、Nord-Pas-de-Calais(ノール・パ・ド・カレー)地域圏は新たな産業創出として、ビデオゲーム/オンラインゲームやアニメーション、CGIの制作を助成する。

プレヌ・イマージュは、繊維工場だった5万平方メートルの敷地をリノベーションし、ゲームやアニメーションの制作会社を誘致、現在50社が入居している。
ZFU都市免税区域として、13年12月までに進出する企業には5年間の法人税と社会保障費雇用主負担が免税される。5年経過後の4年間は税率が漸次上がるものの、計9年間の税額控除が受けられる。

リールには、オンラインゲーム「DOFUS(ドフス)」やアニメーション「Wakufu(ワクフ)」の開発と制作で躍進するAnkama(アンカマ)(http://www.ankama.com/en/2012)があることで知られる。リール首都圏の産業クラスター「Pôle Images(ポール・イマージュ)」には、少人数、低予算でできるオンラインゲームのスタジオも集まる。
ヨーロッパではゲームへの期待が高く、05年頃からヨーロッパに広がった“シリアスゲーム”が脚光を浴びる。シリアスゲームとは、情報を分かりやすい伝えられるゲームの伝達機能を、教育、職業訓練、医療、公共事業など、多様な分野で活用としようとするもので、BtoBの新ビジネスとして期待される。

[伊藤裕美]
オフィスH(あっしゅ)代表。
外資系ソフトウェア会社等の広報宣伝コーディネータや、旧エイリアス・ウェーブフロントのアジアパシフィック・フィールド・オペレーションズ地区マーケティングコミュニケーションズ・マネージャを経て1999年独立。海外スタジオ等のビジネスコーディネーション、メディア事情の紹介をおこなう。EU圏のフィルムスクールや独立系スタジオ等と独自の人脈を持ち、ヨーロッパやカナダのショートフィルム/アニメーションの配給・権利管理をおこなう。
/http://blogs.yahoo.co.jp/hiromi_ito2002jp
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