2012年7月13日、米国サンディエゴ市で開催されているコミコンで、講談社USAによるパネルイベントが開催された。登壇者したのは講談社USAパブリッシングの清水久美さん、そして同社のマンガ出版のパートナーシップを組む現地出版社ランダムハウスのダラス・ミダウさんである。パネルイベントは、同社の最新ラインナップと今後の展開をファン向けに紹介するものだ。同社のパネルは今年で2回目となるが、会場への来場者は昨年より多く、また熱気を感じさせた。ファンの関心が高かった最大の理由は、『美少女戦士セーラームーン』の人気であることは間違いない。セーラームーンは2011年の米国のグラフィックノベル部門で、アメリカンコミックス、日本マンガ双方を通じて年間第2位というベストセラーになっている。また、一週間前には日本での新作アニメ製作発表が、ニュースとして世界中を駆け巡ったばかりだ。パネルではセーラームーンのビジュアルが映しだされると大きな歓声があがった。また、Q&Aでも新作アニメや日本で発売が決定した愛蔵版についてなどセーラームーンに対して数多くの質問があり、作品の人気の高さを感じさせた。ただし、講談社USAには他にもいくつもの人気タイトルの紹介があった。もっとも力が入っていたのは、英語版の刊行が始まったばかりの『進撃の巨人』である。米国のマンガファンの中心層よりもやや上の世代をターゲットにした作品だけに、今後の展開が注目される。『げんしけん』も、メインタイトルだ。セーラームーン、『進撃の巨人』と共にポスターが制作され、コミコンの会場で配られていた。同社の有力タイトル『魔法先生ネギま!』の最終巻が2013年4月に発売されると発表されただけに、今後の主力タイトルに育てたいところだ。変わったところではコミカライズ版の『逆転裁判』もリリースされる。2012年のコミコンでは、講談社にとってもうひとつ大きな動きがあった。コミコンのエキビジョン会場への進出である。講談社も出資し、やはり日本マンガを手掛けるヴァーティカルと共同ブースを独立系出版社のエリアに設け、存在感をアピールした。ブース自体は必ずしも大きなものではないが、日本マンガの売上が減少しているなかでの、日本マンガ出版社の新たな会場進出は明るいニュースだ。また、作品の売れ行きも良いようだ。過去1年間で、講談社USAが新たなマンガ出版社として着実に定着していることが感じられた。講談社USAのこうした成果は、多くの人に驚きを与えているに違いない。2008年に講談社が米国に拠点を設け、自らマンガ発売を手掛けると発表した際は、業界全体のマンガの売上不振もあり、業界関係者のかなりがその先行きに懐疑的だった。実際にスタート当初は、ビジネスも不安定だった。2011年のコミコンでの『美少女戦士セーラームーン』の再リリース発表の時でもそれは変わっていなかった。これがここ1年で大きく変わり、少なくとも米国のマンガ出版の一角として認知されるようになっている。米国進出にかけた初期投資も考えれば、会社全体へ貢献はまだまだ不十分と思われる。それでも海外での次のビジネスに参加する場を築いた点で、今後も講談社USAの動きは目が離せない。[数土直志]
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