映画祭が急増している。さらにそれらの映画祭が年々拡大を続けている。多くの人が実感として感じているのではないだろうか。アニメーション関連だけを挙げても、アヌシーからオタワ、広島、ザグレブの4大映画祭に加えて、ソウルからロッテルダム、イタリアやスペインまでまさに無数にある。 これだけ多くの映画祭は一体どのような目的で運営され、その成果は出ているのだろうか? 三菱UFJリサーチ&コンサルティングがまとめた論文集「ユーザー中心のコンテンツ政策」のなかで杉浦幹男氏が書く「コンテンツ産業が未来像を拓く~ショートフィルムフェスティバルの今日的意義」は、そうした疑問の多くに答えてくれる。 論文は現在の映画祭ブームを中心に取り上げ、なぜ映画祭が巨大化するのかを映画祭の目的の変化から解き明かしたものだ。そしてショートフィルムフェスティバルがコンテンツ産業にもたらす重要性を明らかにしている。 そこからさらに、コンテンツのデジタル化とインターネットの影響、さらに映像作品の質の低下に警鐘をならす。 しかし、論文で一番興味深いのは、まさに様々な映画祭は何を目的にしているのかである。杉浦氏によれば、世界的な映画祭ブームは映画祭の目的の変容である。これまでは文化や政治が中心だった映画祭の目的が、経済的なものに移行しているためだという。映画祭が流通マーケットと結ぶつくことで巨大化しているわけである。 さらにショートフィルムフェスティバルやデジタルアートのフェスティバルは、才能の青田買いの場として機能していると指摘する。こうした状況を踏まえて杉浦氏はコンテンツ産業の未来を読み解く。 論文はアニメーションだけでなく、映画全体について述べたものである。しかし、ショートフィルムにはアニメーション作品が多く含まれていることやデジタルコンンテンツに関わる部分ではアニメーションの関与する度合いは大きい。 さらにSIGGRAPHやアルス・エレクトニカなどから3Dアニメーションの現状にも大きくふれている。アニメーションフェスティバルの動向にも言及しているので、アニメーションについてだけでも興味を惹く点が多い論文である。/三菱UFJリサーチ&コンサルティング /コンテンツ産業の未来像を拓く~ショートフィルムフェスティバルの今日的意義
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