東京国際アニメフェアの2日目に開催されたシンポジウム「中国著作権ビジネス展開とCJマークの可能性」は、日本の制作会社から見た中国ビジネスの可能性が中心となった。シンポジウムのテーマは、中国の著作権問題や海賊版の問題とされていた。 しかし、話題は中国でのアニメビジネスに起きる障害をいかに乗りこえるかといった幅広い問題に及んだ。シンポジウムは、東映アニメーションと手塚プロダクションの制作会社の立場からの講演と海賊版を取締まるコンテンツ海外流通促進機構(CODA)の報告とから構成されていた。 最初に講演を行なった東映アニメーションの大山秀徳氏は、中国でのアニメビジネスの難しさを1)許諾の必要な市場で時間がかかること、2)海賊版が多いこと、3)外資規制があり100%の外資出資会社の設立が難しいことを挙げた。 そのうえで許認可が必要なことや外資規制は、文化保護というよりも中国の産業育成・保護が大きな理由にあるとの見解を示した。 海賊版については、これまでも個別に対応を取っており、大きな実績を残していることを強調した。 また、大山氏は中国が世界のなかで特別なマーケットではない、グローバル市場のひとつとして他のマーケットと同様にあたって行くと主張した。そのうえで、制作会社が版権の利用と制作会社として権利保護を目指すのは、優れたコンテンツの再生産に必要なプロセスというメッセージで話を締めくくった。 手塚プロダクションでライセンス管理を手掛ける内藤氏は、中国の法令の変遷から現在の中国のライセンスビジネスの在り方について解き明かした。内藤氏によれば、かつて中国には人脈重視の法律というものが全く重視されない時代があったという。 しかし、現在は法令が整備されたものの逆に形式主義が蔓延っているという。つまり、常識的に考えれば可笑しなことが、法形式の前でどうにもならなくなることがあるという。 今回、例として中国での模倣品が間違えで出版や商品化権を取ってしまうケースが挙げられた。例え、それが違法だと証明出来ても、今度は自社のその商品での許可を取れなくなることがあるという。つまり、中国の法律では同じ商品で二度申請は出来ないことが壁になるためである。 それでも内藤氏は、今後は中国もより高度な法治社会に向かって行くだろうとの見解を示した。 CODAの後藤健郎氏の主張は、制作プロダクションの両氏に較べるとより戦闘的であるといえるかもしれない。同機関が、実力行使(エンフォースメント)も含めた海賊版撲滅を目指しているためである。 後藤氏は海賊版業者の摘発を始めとしたエンフォースメントが、近年大きな成果をあげていることを強調していた。そうした成果として、香港の有名な海賊版市場で日本アニメの海賊版をほぼ一掃し、現在そこでは正規版が売られ始めていることなどを挙げた。 また、海賊版摘発のためにも同機関が発行している正規版証明のCJマークの利用を訴えた。 さらに、海賊版を防ぐために正規版の発売が重要であると述べた。 シンポジウム全体からは、2、3年前の中国市場では何が起きているか判らない、海賊版はどうにもならないといった事情は、かなり変わり始めていることが感じられた。中国市場での現状認識が進むに連れ、その中でいかにビジネスを進めて行くかについて動き出しているからだ。 こうしたなかで、これまでの魅力的だけれど、危険な市場といったイメージも変わりつつあるかもしれない。■中国著作権ビジネス展開とCJマークの可能性パネリスト大山秀徳氏 東映アニメーション㈱常務取締役 日本動画協会理事内藤出氏 ㈱手塚プロダクション ライセンスビジネス担当部長 後藤健郎氏 コンテンツ海外流通促進機構・CJマーク委員会委員長司会:重岡純氏 日本貿易振興機構 経済分析部知的財産課上席課長代理主催:中間法人日本動画協会/社団法人私的録画補償金管理協会/東京国際アニメフェア /東映アニメーション /手塚プロダクション /日本貿易振興機構(JETRO) /中間法人日本動画協会 /社団法人私的録画補償金管理協会
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