『グラフィックノベルは新しい文学?』と題されたこのパネルは、古くからアメリカのグラフィックノベル市場の開拓に力を尽くしてきた業界人がパネルに並んだ。Pantheonブックスのダニエル・フランク氏の発言に代表されるように、グラフィクノベルが書籍の一分野として認められるまでに成長したことは、こうした人々に深い感慨を与えているようだ。 もっとも、こうした思い入れが強いせいか、パネルでの話題は様々に問題に拡散した。このため本来の議題の「グラフィックノベルは文学になりえるか?」については、明確な答えは出されなかった。 グラフィックノベルを本として読むことについては80年代後半のアート・スピーゲルマン著作『マウス』の影響を語るものが多かった。この作品が、これまでのコミックとは違うグラフィックノベルという分野の形成に大きな役割を与えたということである。 また、グラフックノベルの話題や書評が、ニューヨークタイムズ紙の書評に取り上げられることへの言及も多かった。アメリカ文化の権威ともいえる同紙に取り上げられたことは、グラフィックノベルが文学であるかと同時に、グラフィックノベルがひとつのカルチャーとしてある種の達成感があるようだ。 こうした幅広い話題のなかでグラフィックノベルが、これまでの雑誌形態のコミックと根本的に違うものであることが明らかになった。 一般書籍と変わらないその外観がグラフィックノベルの有り様を定めている。それが、これまでのコミックとは違う様々な有利な点が生みだしているのだ。 その最たるものはコミック専門店でしか扱われなかったコミックがグラフィックノベルになることで、一般書店に進出できる様になったことがあるだろう。 さらに、グラフィックノベルが新しい文学になるかは別としても、これまでコミックが獲得出来なかった分野でより広く受入れらているのは確かである。それは、図書館司書でコラムニストでもあるキャサリン・カン氏の言葉が語っている。 彼女によれば、図書館の世界では、コミックは単なるパンフレットの類にしか思われない。しかし、グラフィックノベルであれば、本であるから多くの図書館が何の抵抗もなく受入れるというのだ。 単純なフォーマット(装丁)の違いに過ぎないように思えるこの違いが、両者の意外に大きな差を生み出しているわけである。 結局、「グラフィックノベルが文学になりうるか?」について多くが語られなかったのは、この分野が今ようやっと確立したばかり、そうした状況を受入れるのことのほうが忙しいからに違いない。 別のパネルでの質問であるが、少年ジャンプのアメリカ版編集長が、アメリカのグラフィックノベルの市場占有率は全書籍の2%以下だが、日本のマンガのそれは30%あるとの発言が関心を呼んでいた。 これが、日本とアメリカにおけるマンガやグラフィックノベルの現況の大きな違いを示しているだろう。日本であれば、マンガが文学になることに納得する人が多い。しかし、アメリカにおいては、まだそうした論議は準備の段階でしかない。/ICV2グラフックノベル・コンファレンス
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