マンガ家谷口ジローさんの代表作『遥かな町へ』が、ベルギーで実写映画化される。作品の映画化は、昨年からヨーロッパの一部のメディアで報じられている。 5月15日には、映画業界情報のバラエティが特集したベルギー映画の新たなトレンドを紹介する記事「Belgian directors go genre route」で、映画の概略や予算などが報じられている。 この報道によれば、作品のタイトルは『Quartier lointain』、ベルギーの製作会社アントレ・シアン・エルフ(Entre Chien et Loup)が1390万ドル(およそ14億5000万円)で製作する。 原作では日本の地方都市である舞台は、60年代のパリに置き換えられる。『やわらかい手』などの作品があるサム・ガルバルスキ監督が映画を撮る。 『遙かな街へ』は谷口ジローさんの代表作で、都会に住む主人公がタイムスリップをして故郷に戻り、再び青春時代を経験するものである。国内では1998年に第2回手塚治虫文化賞マンガ賞を受賞したほか、フランスでは国際的に知られたアングレーム国際バンド・デ・シネフェスティバルで、2002年にベストシナリオ賞を受賞している。 谷口さんは同じアングレームで、2005年に『神々の山嶺』で最優秀美術賞も受賞、米国では、コミックス界で広く知られたアイズナー賞の海外作品賞・日本部門で、昨年は『歩く人』、今年は『凍土の旅人』と2年連続でノミネートされている。海外でも高く評価されている日本のマンガ家の一人である。映画が完成すればヨーロッパだけでなく、ワールドワイドな上映も期待されそうだ。 また、谷口ジローさんは、もともとフランス語圏のコミックスであるバンド・デシネに強い影響を受けて来たとされている。 今回は、その地元であるベルギーでの映画化になり、逆に日本から文化を送り出すかたちである。文化の相互作用という点でも意義の大きな映画と言えるだろう。 『遥かな町へ』への製作予算は、日本のコンテンツを元にハリウッドで映画化される『スピードレーサー』や『ドラゴンボール』に比べて小さい。しかし、大衆向けの映画ではないヨーロッパで製作される映画ではかなり大きな予算である。 逆に言えば、大型エンタテインメント映画だけでなくより硬派な映画でも、海外で日本のマンガが原作として採用されるようになっている。日本のマンガの海外への広がりを知るうえでは興味深い出来事と言えそうだ。 バラエティ /http://www.variety.com//Belgian directors go genre route