「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」金ロー放送直前コラム「親愛なる隣人スパイダーマン」は伊達じゃない!数あるアメコミキャラの中で、なぜここまで日本人に受け入れられたのか | アニメ!アニメ!

「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」金ロー放送直前コラム「親愛なる隣人スパイダーマン」は伊達じゃない!数あるアメコミキャラの中で、なぜここまで日本人に受け入れられたのか

2002年公開のトビー・マグワイア版、2012年公開のアンドリュー・ガーフィールド版、トム・ホランドによるMCU版を中心に、日本人に支持される理由と、その後の実写化映画に与えた功績を振り返ります。

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(C) 2021 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved(C) 2021 CTMG. (C) & TM 2021 MARVEL. All Rights Reserved.
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11月10日に『金曜ロードショー』で放送される実写映画版『スパイダーマン』の最新作『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』。

スパイダーマンの正体がピーター・パーカー(演:トム・ホランド)であることがバレ、しかもそのことがテレビで大々的に扱われてしまったことでピーターの人生はドン底に!

さらにトビー・マグワイア版の宿敵ドクター・オクトパスや、アンドリュー・ガーフィールド版の宿敵エレクトロなど、本来は別の映画シリーズのヴィランが次元を超えて襲いかかる!

映画作品の枠を超え、一大クロスオーバーを繰り広げて話題となった本作。実写映画のみならず、発売されたばかりのアクションゲーム『Marvel's Spider-Man 2』や、3部作の完結編が制作中のアニメ映画『スパイダーバース』シリーズなど、スパイダーマンはメディアを問わず大人気です。

しかしいったい、スパイダーマンはなぜここまで熱烈に支持されるようになったのか?

そこで本稿では、東映特撮版『スパイダーマン』のファンなのに、大人になるまで本編を見たことがなかった筆者が、肌感覚で考察した趣味丸出しの記事でお届けします!

▲『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』予告編

◆すべてが衝撃的だったトビー版

シュッと発射したウェブに捕まってビルの谷間を高速スイング。人間業とは思えない身軽な動きで犯罪者を翻弄してはアクロバティックにキックをかます。2001年に公開された海外版のティザームービーを見て、筆者は驚きや感動よりも先にこう思ったものです。「あ、(本物の)スパイダーマンだ……」と。

スパイダーマンの実写作品といえば、1977年から1981年にかけてアメリカで放送されたニコラス・ハモンド主演のドラマ版『ジ・アメイジング・スパイダーマン』と、1978年に東映が制作した特撮版『スパイダーマン』が有名です。しかし当時は当然のことながらウェブスイングなど映像化できませんし、ピチピチ原色カラーの全身タイツで、あまり見栄えがいいとは言えませんでした。

もしも当時と変わらない技術水準で2002年に公開されていたとしたら、コミックで描かれていたようなダイナミックな画面作りができず、まったく話題になっていなかったでしょう。

しかしサム・ライミ監督がメガホンを取り、トビー・マグワイアが主演を務めた『スパイダーマン』は、CGの導入によりウェブスイングが可能となり、スーツも新たな解釈が加わったことで納得の仕上がりになっていました。それはまさに「固定概念の破壊」と言える、一種の革命でした。

従来のスーパーヒーロー映画の手法だとスーツは安っぽい全身タイツになるか、ブライアン・シンガー監督による『X-MEN』シリーズのようにデザインを大胆に変更することで見栄えを整えたはず。

しかし『スパイダーマン』ではウェブパターンをラテックス製の別パーツにして高低差をつけたり、表面に細かな模様を配置したりすることで見た目の情報量を増加。ピチピチタイツというコミック版の解釈に沿いつつも実写に耐えうるビジュアルを確立しました。さらにスーツの筋肉質なシルエットがうまく表現できるよう、スーツに下に肉襦袢的なパーツを装着したり、唇が浮かないよう口元部分に硬質パーツのマスクをつけたりして、全体のシルエットを整えたのです。

これは1989年公開のティム・バートン監督版『バットマン』で採用されたテクニックの応用だと言えるでしょう。全身タイツ系のスーツだと1966年のテレビドラマ版『怪鳥人間バットマン』のように俳優のプロポーションに依存することになります。しかしティム・バートン監督はラテックス製のスーツにすることで筋肉質なシルエットを造形で表現しました。俳優のトレーニングに頼るのではなくスーツの構造で解決するとは、なんとも目から鱗です。

デザインを変更することなく、コミックそのままのデザインで実写化されたスパイダーマン。従来のピチピチタイツから脱却したその姿に、アメコミファンのみならず一般層も虜になったはず。そのため以降のアメコミヒーロー映画は、『バットマン』で生まれ、『スパイダーマン』で進化した「新しいコスチュームの解釈」が定番化することになりました。

また当時はネットの普及が急拡大した時期でもありますし、コミックから抜け出したような見た目とアクションは驚きをもって迎えられ、たちまち話題になったのです。

その一方でCGはまだまだ発展途上の技術。スパイダーマンのようにマスクで顔を隠すキャラクターは別として、素顔の再現は2004年の『スパイダーマン2』や2007年の『スパイダーマン3』まで技術の進歩を待つことになります。

なお1作目のヴィランであるグリーンゴブリンは、本来素顔をさらしたキャラクターとして描かれています。しかし当時は人間の顔を不自然なくCGにすることができなかったため、やむなくマスク&スーツというコミック版とは大きく異なるデザインになりました。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』に登場するグリーンゴブリンは、そのリベンジと言わんばかりにコミック版に寄った姿で登場するので注目です。

◆女性人気がさらなる後押しに!

2003年から2004年頃になるとCGは一段進化し、素顔でもある程度のCG表現が可能になりました。立体スキャンを取り入れて主演のエリック・バナそのままのハルクを作り上げたアン・リー監督版『ハルク』、そして目以外はCG化に成功したドクター・オクトパスが登場する『スパイダーマン2』などです。

そうやって技術を進化させながら不動の人気を得たスパイダーマンは、ウェブスイングとトリッキーなスパイダーアクションを武器に、誰もが知るヒーローになりました。

その勢いはかつてアメコミブームを作ったクリストファー・リーヴ主演の『スーパーマン』やマイケル・キートン主演の『バットマン』、玩具コレクターを熱狂させた『スポーン』を想起させます。

しかしスパイダーマンの人気はそれだけにとどまりませんでした。『アベンジャーズ』でおなじみのMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)に参加したことで、さらなる弾みがつくことになります。

トビー版『スパイダーマン』以来、世界的にも抜群の人気を誇っていた実写スパイダーマンはかねてからMCU入りをファンから熱望されていました。しかし『スパイダーマン』の映画化権はソニー・ピクチャーズにあり、『アベンジャーズ』シリーズを制作するマーベル・スタジオ/ディズニーにはその権利がありません。ファンにとっては夢物語でした。

しかし2016年の『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で、ソニー・ピクチャーズとマーベル・スタジオが映画会社の枠を越えてタッグを組むことが決定。ソニー・ピクチャーズが制作する『スパイダーマン』単独作にマーベル・スタジオが協力することをおもな条件として、MCUにもスパイダーマンが登場できるようになりました。またもや「常識の破壊」による進化です。

それだけではありません。MCUは2012年公開の『アベンジャーズ』でロキを中心に女性人気が高まっており、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』あたりからは、さらなるファン層の広がりを見せていました。

街中で「MARVEL」ロゴ入りのTシャツやバックパックを多く見かけるようになったのもこの時期ですし、スーパーヒーロー映画らしくないことで注目が集まった『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』や、ベネディクト・カンバーバッチ主演で話題になった『ドクター・ストレンジ』など、従来のアメコミファン以外の層も取り込んでいたのもこの時期でした。

その中でもっとも大きな要素は、やはり女性ファンの増加でしょう。アイアンマンを「スタークさん」と慕い、未熟で守ってあげたくなるようなトム・ホランドのピーター・パーカー像は、そんな女性ファンの心にも響いたはず。

技術の進化で新規のファン層を取り込み、映画業界の常識を打ち破るような共闘関係で男女ともに多くのファンを獲得したスパイダーマン。2002年の初実写映画化のインパクトもさることながら、「親愛なる隣人」としてシリーズを重ね、待望のMCU入りで女性人気も不動のものとしたからこそ、数あるアメコミヒーローの中で抜群の人気を獲得したのではないでしょうか。

もちろんその礎を築いてきた『スーパーマン』『バットマン』『X-MEN』ら先輩ヒーローたちの活躍も忘れてはいけません。

◆トム・ホランド版ピーターの魅力とは?

ソニー・ピクチャーズによる歴代『スパイダーマン』はそれぞれが違った魅力を持っています。

トビー・マグワイア版はコミック版にもっとも近い世界観で、唯一の違いはウェブ・シューターが登場せず生体ウェブであること。これはサム・ライミ監督が「高校生がこんな高度な装置を作れるわけがない!」と判断したせいで変更されたとか……。

名場面は『スパイダーマン2』の列車のシーン。我が身を犠牲にしてまで暴走列車を止めた彼に対し、乗客たちはドクター・オクトパスの攻撃からピーターを守ろうと、無謀にもオクトパスの前に立ちはだかります。ピーターの素顔を見てしまったことに対しても、「こんな子供が……」と絶句しつつ誰にも正体を明かさないと誓いました。まさに「親愛なる隣人」を象徴する名場面です。

また『スパイダーマン3』では、歴代ピーターでは唯一、シンビオートに寄生されヴェノムと死闘を演じることになりました。

アンドリュー・ガーフィールド版の特徴は青春ものとしてドラマ部分に重点を置いていること。コミック版ではMJ以前の恋人だったグウェン・ステイシーをメインヒロインに迎え、多少のアレンジを加えつつも「親愛なる隣人」として活躍する姿を描きました。

第1作目で傷を負いながらビルからビルへと飛び移るシーンでは、スパイダーマンに我が子を救われた現場作業員がクレーンで道を作るなど「恩返し」をしてくれる熱いシーンがありました。

また第2作目では必死に戦うピーターの知らないところで奮闘する一般市民の姿も描かれ、「救いを待つだけでなくニューヨーク市民も頑張っているんだな」と思わせてくれました。

何より胸を締め付けたのが、あの「落下シーン」です。「ゴキッ」という鈍い音とともに襲い来る衝撃。絶望したピーターはスパイダーマンであることをやめ、長い間ずっと墓の前に立ち続けます。そんな「彼」の帰りを待ち続け、ライノの前に立ちふさがった小さなスパイダーマンの勇気は今でも忘れられません。

そしてトム・ホランド版の魅力といえば、やはり半人前なところでしょう。特に単独作1作目の『スパイダーマン:ホーム・カミング』では落下した瓦礫の下敷きになり、ヒーローであるにも関わらず弱音を吐きました。

「誰か助けて!」

その涙声は前2シリーズにはない要素であり、マーベル・スタジオが制作に関ったことで表現できた高いキャラクター性です。

またアイアンマンことトニー・スタークという師がいたこと、好きな子の父親や先輩ヒーローとして憧れた人間と敵対するという、大人との関係性もトム・ホランド版ならではです。

スパイダーマンの魅力といえば、やはりその親しみやすさが挙げられます。それが映像表現の進化でより自然に、よりコミックに忠実に、そして没入感を高めてくれました。日本人にとっては東映版の存在も大きく、もしかしたら「親愛なる隣人」よりも関わりが強い「親愛なる幼なじみ」なのかもしれません。

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《気賀沢昌志》
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