「フェ~レンザイ -神さまの日常-」を10倍楽しめる神様情報まとめ【完全版】 | アニメ!アニメ!

「フェ~レンザイ -神さまの日常-」を10倍楽しめる神様情報まとめ【完全版】

神田外語大学外国語学部アジア言語学科中国語専攻の准教授である大宅利美さんにインタビューを実施し、本作に登場する神々は本来どのような存在であり、『フェ~レンザイ』においてどのようなアレンジが加えられているのか、お話を伺いました。

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『フェ~レンザイ -神さまの日常-』キービジュアル(C)フェ~レンザイ制作委員会
  • 『フェ~レンザイ -神さまの日常-』キービジュアル(C)フェ~レンザイ制作委員会
  • キュウゲツ(C)FENZ, Inc. All rights reserves
  • ジュウイチゲツ(C)FENZ, Inc. All rights reserves
  • ゴウレツ(C)FENZ, Inc. All rights reserves
  • コウテン(C)FENZ, Inc. All rights reserves
  • ナタ(C)FENZ, Inc. All rights reserves
  • カンノン(C)FENZ, Inc. All rights reserves
  • ヨウゼン(C)FENZ, Inc. All rights reserves
中国の国民的な人気アニメ『Fei Ren Zai』の日本語吹替版であるコメディアニメ『フェ~レンザイ -神さまの日常-』が、現在テレビ東京系で放送中です。

『封神演義』『西遊記』『山海経』といった神話の神々が現代社会で生活する、面白くも奇怪な日常を描いている本作。声優陣には内田真礼さん、杉田智和さん、神谷浩史さん、三木眞一郎さん、岡本信彦さん、高橋李依さんなど、実力派が勢揃いし、さらに髙橋優斗さんや中村嶺亜さんなど、人気急上昇中の若手俳優もキャスティングされており、話題となっています。

アニメ!アニメ!では、神田外語大学外国語学部アジア言語学科中国語専攻の准教授である大宅利美さんにインタビューを実施し、本作に登場する神々は本来どのような存在であり、『フェ~レンザイ』においてどのようなアレンジが加えられているのか、お話を伺いました。これを読めば、ますます『フェ~レンザイ』を楽しめること間違いなし!



キュウゲツ&ジュウイチゲツ&ダッキ(九尾の狐)




九尾の狐は日本のアニメ作品でもよく描かれます。キュウゲツが『フェ~レンザイ』の中でお年玉をもらっている描写がありますが、それは他の神様に比べて「(歴史が)若い」からだと大宅さんは指摘します。キュウゲツがまだ幼い頃にヨウゼンが彼女のもとを訪れた場面で、彼の髪型が辮髪(べんぱつ)であったことから、キュウゲツが生まれたのは中国の清時代であると考えられます。清時代に書かれた有名な怪談集『聊斎志異』には狐の話が多いので、キュウゲツを清時代生まれとしたのでしょう。

九尾の狐は日本では男性キャラクターとして描かれることもありますが、中国では女性キャラクターが多いそうです。彼女らは色仕掛けで男性を誘惑する悪女のイメージが強く、『フェ~レンザイ』の中でキュウゲツが祖母、かの有名なダッキ(妲己)から「九尾の狐なのになぜ男を虜にしないの?」と叱られていたのは、そのイメージに起因していたようです。

ゴウレツ(西海竜王三太子)




『西遊記』の三蔵法師の乗っていた白馬(中国では「白竜馬」と呼ばれます)であり、西海竜王の三太子(第三王子)です。父が大切にしていた宝玉を焼いてしまい、親不孝の罪で天帝に訴えられたところを観音菩薩によって救われました。天竺にお経を取りに行く三蔵法師を乗せるため、観音菩薩が彼を白馬に変えたことが元ネタとなって、『フェ~レンザイ』のカンノンがいろいろな人を馬に変えるキャラクターになっているのでは、と大宅さんは指摘します。

また、第1話でゴウレツに乗った三蔵法師玄奘の顔に「唐」と書かれているのは、中国では玄奘を「唐僧」と呼ぶのが一般的だからです。

ゴウレツがナタを恐れているのは、ナタに「竜殺し」のイメージがあるためです。この説明はナタの部分で詳しく説明します。

コウテン(哮天犬)




コウテンのモデルとなった哮天犬は二郎神楊戩の忠実な僕(しもべ)であり、『封神演義』などの小説以外にも、さまざまな伝説や絵画で楊戩とセットで描かれています。大宅さんによれば「魔法少女がよく連れているマスコットキャラ的な感じ(笑)」だとのことですが、『封神演義』の哮天犬は法宝(妖魔を調伏する宝物であり武器)であり、楊戬の命令で出現して戦うところからすると、ウルトラセブンのカプセル怪獣に近いかもしれません。哮天犬のスラっとした姿は中国に実在する「中国細犬」という犬種をモデルにしているそうです。

ナタ(哪吒)




『封神演義』と『西遊記』に登場する哪吒は、中国で最も人気が高い神様の一人と言っても過言ではありません。近年も『ナタ~魔童降臨~』(2019年)や『ナタ転生』(2021年)など、映画が続々と公開され、特に『ナタ~魔童降臨~』は興行収入が50.01億元(約786億円)を記録しました。その人気の秘密は、彼の強さにあるといえるでしょう。哪吒といえば「竜を殺す」という印象的なエピソードがあります。実は哪吒は、『西遊記』において生後3日目にして竜宮に赴き、東海竜王の三太子(『フェ~レンザイ』ではリュウメの兄の設定)の脊髄を引き抜いて殺しています。ゴウレツがナタを恐れるのは、親戚が殺されたことに起因しています。

また、『フェ~レンザイ』で乗っているスケートボードは、「風火二輪」(二つの車輪を持つ車両で、火と風を放ちながら空を飛ぶことができる)を現代風にアレンジしたものです。

カンノン(観音菩薩)




観音はもともと仏教の菩薩(悟りを開くために修行中の仏)ですが、道教においても神として取り入れられ、民間信仰の神々の中では上位に位置する存在です。『フェ~レンザイ』のカンノンが持っているスタバ(?)のカップは、玉浄瓶という宝物を象徴しています。玉浄瓶は起死回生の力を持つと言われ、『西遊記』の中では枯れそうになった「人参果」(人間の赤ちゃんそっくりの不思議な実で、食べると長生きする)の木を再生させたことがあります。

ヨウゼン(二郎神)




ヨウゼンは天帝の甥とされます。治水の神である二郎神と同一視されることが多く、『西遊記』では「二郎神君」と呼ばれ、『封神演義』で「楊戬」と呼ばれるようになりました。法力にも武力にも優れたイケメン、という設定の人気の神様です。今でも中国ではゲームや映画(アニメーション映画『楊戩』)に登場し、ますます人気が高まっているとのことです。

コウガイ(牛魔王の息子)




牛魔王と聞くと、『ドラゴンボール』のファンにはおなじみの名前かもしれません。コウガイのモデルである紅孩児(こうがいじ)は『西遊記』に登場する牛魔王の息子です。

『フェ~レンザイ』の中でナタをライバル視しているのは、『西遊記』や『封神演義』においての設定に少し被りがあることからでしょう。少年の容姿、使用する「三昧真火」の技、そして中国では哪吒の方が有名とされていることが、「ライバル」という関係性につながったのかもしれません。

『西遊記』では、彼が観音菩薩に仕える「善財童子」になったとされています。善財童子の像は龍女の像とともに、よく脇侍として観音菩薩像の隣に置かれています。『フェ~レンザイ』でもこの2人がカンノンとよく行動を共にしているのはこのためなのでしょう。

リュウメ(東海龍王の娘)




リュウメは『フェ~レンザイ』の中では東海龍王の娘で、ゴウレツの従妹という設定です。「妙法蓮華経」というお経の中に、リュウメのモデルである竜女がありがたいお経を聞いて悟りを開き、観音菩薩をお助けするために従者になったという話があります。『封神演義』『西遊記』『山海経』には登場しませんが、竜女は仏教では意外と有名な存在です。

たまちゃん(玉兎)




「月には兎がいる」という伝説はインドが発祥で、中国経由で日本に伝わりました。日本が月周回衛星に「かぐや」と名付けたのと同様に、中国では月ロケットを「嫦娥(月の女神、『フェ~レンザイ』でも名前だけ登場)」、月面探査車を「玉兎」と名付けています。

日本では餅つきをする兎が有名で、『フェ~レンザイ』の中でも月餅を作っている描写がありますが、実際には不老不死の薬「仙薬」を作っているとのことです。

セイエイ(神鳥精衛)




セイエイは炎帝という神様の末娘の化身とされます。海で溺れたその娘は、海を埋めるために小鳥になって山から木や石を持ってきては、海に投げ込んでいるという伝説に基づいています。『フェ~レンザイ』の中で水があるところに小石を投げ込む描写は、この伝説に由来しています。

日本でも「精衛填海」という四字熟語があり、その意味は「人ができそうもないことを企てて、結局それが無駄に終わること」「いつまでも悔やみ続けること」を指します。背景を知ってから聞くと、感慨深いものがあります。

中国では「精衛」というタイトルの歌が多くあり、精衛が海を埋められないように「叶わぬ恋」「埋められない思い」といったつらい恋心を表現しているそうです。

ハクタク(白澤)




白澤は『鬼灯の冷徹』に登場し、日本では人気のキャラクターですが、中国では日本ほどメジャーではないものの、多くのゲームにキャラクターとして登場しています。彼は古代中国神話の瑞獣で、人間の言語を理解し、博識で、妖怪や神に詳しいとされています。そのため、『フェ~レンザイ』では「物知りの文系男」というキャラクターになっています。

ケイテン(刑天)




刑天は黄帝に頭を切り落とされた戦神です。彼はビジュアルが個性的であるため、中国のゲームなどでもよく登場し、戦いの神様として知られています。日本では『ゲゲゲの鬼太郎』に敵の妖怪として登場しています。(参考:第 102 話 凶悪! 中国妖怪刑天 - ゲゲゲの鬼太郎(第4期) - 作品ラインナップ - 東映アニメーション (toei-anim.co.jp))

神話や文化について理解することで、作品をより楽しもう!


『フェ~レンザイ』のキャラクターたちは中国の神や妖怪ですが、そんな彼らが中国の現代社会で暮らすことでコミカルな事件が起こります。それは彼らが本来持っている神や妖怪としての性格や体質によって生まれるものであり、中国の視聴者にとっては説明不要の常識です。だから私たち日本の視聴者も、中国の文化や神話伝説を知ることで、より深く作品の魅力を感じることができるでしょう!

「フェ~レンザイ -神さまの日常-」
■放送情報
テレビ東京系列6局ネット:毎週火曜日24:00~24:30※全13話

■吹替キャスト
キュウゲツ:内田真礼
ゴウレツ:杉田智和
コウテン:高橋優斗
ナタ:中村嶺亜
カンノン:神谷浩史
ヨウゼン:三木眞一郎
ジュウイチゲツ:岡本信彦
リュウメ:上坂すみれ
コウガイ:蒼井翔太
たまちゃん:高橋李依
セイエイ:鬼頭明里
ハクタク:梶裕貴
ケイテン:前田誠二
ダッキ:三森すずこ

(C)フェ~レンザイ製作委員会
《米田果織》
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