TAAF「この世界の片隅に」上映会に片渕須直監督“重みの存在感”表現に大真面目に取り組んだ | アニメ!アニメ!

TAAF「この世界の片隅に」上映会に片渕須直監督“重みの存在感”表現に大真面目に取り組んだ

3月12日、東京アニメアワードフェスティバル2017(以下、TAAF)にて「アニメ100周年記念プログラム『この世界の片隅に』特別上映会」が行われた。その様子をレポートする。

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3月12日、東京アニメアワードフェスティバル2017(以下、TAAF)にて「アニメ100周年記念プログラム『この世界の片隅に』特別上映会」が行われた。公開初日からちょうど4ヶ月のこの日、会場のシネマサンシャイン池袋には多くのファンが集まり、片渕須直監督にあたたかな拍手を贈った。
2016年キネマ旬報日本映画ベスト・テン第1位、日本アカデミー最優秀アニメーション作品賞をはじめ数々の賞に輝き、日本だけにとどまらず世界に向けて拡がり続ける『この世界の片隅に』。今回、片渕監督は旧知の仲だというTAAFフェスティバルディレクターの竹内孝次氏から「是非これまでに話していない新たな話題を」と言われたそうで、まだ多くを語っていないというアニメーションの動きについてトークを展開した。

主人公・すずのあの存在感はどのように生み出されたのか。片渕監督は、「動きによる重さの表現」をできる限り疎かにしないようにしたと語る。「たとえば同じ大きさで重さが違う玉が3つあったとして、持った時の動きでそれを表現できるだろうか。アニメーションの動きそのもので重さを作り出すことに大真面目に取り組んだ」という。
自身が講師を務めるアニメーションブートキャンプ(文化庁による合宿形式でアニメーションの作画を学ぶワークショップ)でも、学生に向けて「重さの表現」について伝えるという片渕監督。現実的な重量や高低に左右されないのはアニメーションの利点でもあるが、重要なのは正しい重さや高さを理解したうえでそれを感じられるよう表現の上で作りだすことだ。「アニメーションブートキャンプで教えていることを最も実践したのが『この世界の片隅に』だったのではないか」と作品を振り返った。

作画マンからも多数、片渕監督のもとに感想が届いているようで、『アルプスの少女ハイジ』でキャラクターデザイン・作画監督を務めた小田部羊一氏からは「歩きが上手くできている」と言われたそうだ。日本のアニメーションの多くは3コマ打ち(8枚の絵で1秒間24コマを表現するもの)であり、制限された枚数の中で歩く人間の重量感まで表現するのは難しい。「3コマ打ちでもここまでできるとは」と小田部氏を驚かせた歩行の描写について、片渕監督は2つの要素を明かした。
ひとつは、キャラクターが足をあまり高く上げなかったこと。着物を着るキャラクターが多かったのもあり、足を高く上げずに歩かせたところ、3コマ打ちでも体重を乗せることが可能になった。もうひとつは、すずというキャラクターだ。すずはジタバタするにしても、彼女の性格的にどことなくゆったりとした印象が残る。『千と千尋の神隠し』や『君の名は。』で作画監督を務めた安藤雅司氏は「ぎりぎりまで吟味されたタイミングづけがあって初めて可能になった表現だったのかもしれない」と言ったそうだ。彼女のキャラクターと丁寧な重さの表現が合致して、すずさんというリアリティが生まれたのだろう。「もっと早く歩く子だったら作品の見え方は違っていたかもしれない。すずさんには本当に感謝です」と片渕監督は話した。

現在も各地での舞台挨拶を盛んに行い、片渕監督は作品への思いを語っている。メディアでも本作の様々な紹介を見ることができるが、片渕監督からはまだまだ新しい作品エピソードが聞けそうだ。
《奥村ひとみ》
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