デジタル作画はアニメ演出を変える 「ひるね姫」制作現場レポート | アニメ!アニメ!

デジタル作画はアニメ演出を変える 「ひるね姫」制作現場レポート

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2017年3月18日に劇場公開される神山健治監督のオリジナル長編アニメ『ひるね姫~知らないワタシの物語~』。
『東のエデン』や『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』シリーズなど、数々の話題作を手がけてきた神山健治監督は、『009 RE:CYBORG』をセルルック3DCGで制作するなど、アニメ制作手法の面においても最先端を切り開いてきたクリエイターだ。

そんな神山監督が本作で挑戦したのはデジタル作画。アニメ制作現場は、2000年前後を境に仕上げ・撮影はデジタル化されたが、絵コンテ・作画は手書きが圧倒的に主流なままだ。そんな状況のなか『ひるね姫』は、フルデジタル制作を目標の一つに2014年に設立された「シグナル・エムディ」を元請けスタジオに、絵コンテ・作画における本格的なデジタル化が試みられている。
制作真っ只中のシグナル・エムディの現場を訪れ、神山監督をはじめ、アニメーター、美術スタッフからその独自の制作プロセスを聞いた。

スタジオに入りまず驚くのは、一般的なアニメスタジオとの環境の違いだ。アナログ作画で制作している限り、手元が見やすいようにフロア全体が照らされ、机には作画用紙が山積みになり、鉛筆を削る音が通奏低音のように響くことになる。しかし液晶ペンタブレットにより制作が進むシグナル・エムディでは、ディスプレイを見るのに最適化された光量に落とされ、資料を除けば紙も鉛筆もほぼ見当たらない。


『ひるね姫』におけるデジタル化は、絵コンテの段階から徹底している。「Toon Boom Storyboard Pro」を用い、はじめからコンテ撮ムービーとして制作されているのだ。通常、絵コンテは紙のうえに描かれることで、あたかもそれ自体が作家性のこめられた一つの作品として描きあげられる。しかしその工程をデジタル化しムービーにすることで、途中経過を共有し合議的にコンテ作業を進めることが可能になったという。実際、本作の絵コンテは合宿形式で制作が進められた。

絵コンテをデジタル化したことは、アニメーターにも大きな影響を与えている。レイアウト作画監督の末澤慧氏とプロップデザインの辻智子氏は、絵コンテがムービーになることで、監督の意図する映像のリズム感が理解しやすくなり、これまで以上に作画そのものに集中できるようになったという。

では原画作業そのものは、デジタル化することでどのように変化したのだろうか。本作では、フランスのアニメーション制作ソフト「TVPaint」が用いられたが、末澤氏・辻氏はそのメリットにプレビュー機能の力を挙げる。TVPaintによるデジタル作画では、描いた原画の動きをその場ですぐムービーにしてチェックすることができ、またムービーには音声を乗せることができるため、アナログではラッシュまでわからなかった声の演技とのマッチングもより一層考慮できるようになったという。他方で、これまでであれば止め画で十分だと判断していたようなカットも、ムービーとして観れてしまうことでよりクオリティアップをはかりたくなってしまうなど、画にこだわり続けてしまう苦労も語られた。


また背景美術もデジタル作画が中心だ。一般に背景制作におけるデジタル化は、すでに一定以上広まっているとはいえ、美術監督の鮫島氏と日野氏はともに、本作以前はアナログで作業していたという。しかしカットごとに光源を変えるなどライティングにこだわった本作においては、デジタル作画が特徴とする修正作業の容易さが、最適な光の表現を探る試行錯誤に活きたという。


いまだフルデジタルではないとはいえ、『ひるね姫』におけるこれだけの規模でのデジタル作画の導入は、極めて異例な事態と言える。既存のシステムのなかでフルデジタル環境へと即座に切り替えるのはむずかしい。そのため、古巣のProduction I.Gではなく、新しいグループ会社であるシグナル・エムディで制作することに決めたのだと神山監督は語る。そしてなぜ急速なデジタル化を推し進めたかったのかと言えば「作画がデジタル化しないと、演出がデジタルの恩恵を受けられない」からだという。「今回はじめて、演出部も本当の意味でデジタル化できたんじゃないかと思います」という『ひるね姫』は、アニメ表現の新展開を予感させる、2017年の注目作と言えるだろう。
《深井孔》
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