「残響のテロル」は舞台も良作、ずしりと重いがエンターテインメント性も感じられる

連載・コラム

 
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高浩美のアニメ・マンガ×ステージ評
連載第165回

■ PREMIUM 3D STAGE『残響のテロル』、ずしりと重いがエンターテインメント性も感じられる良作

2014年に放送されたテレビアニメ『残響のテロル』は完全オリジナルストーリーで監督は渡辺信一郎、音楽は菅野よう子のコンビが手掛けた話題作だ。これが舞台化、しかも3D映像を使用するという。
舞台の出だし、よく見る資料映像、広島、長崎の原爆投下シーンが映し出される。3D映像の文字(英文)がかぶさるのだが、淡々と、しかし一種のリアリティを持って迫ってくる。その後、アニメと同じ、核燃料再処理施設での強奪シーンに変わる。2人組の犯人はスプレーで「VON」のメッセージを残すのだが、それが3D、眼前に文字が迫る。

基本的に原作アニメに沿った内容であるが、舞台は上演時間の制約があるので、短い時間で語らなければならない。エピソードをはしょりつつの構成だが、アニメよりしっかりと時間をかけて描いているところもあり、全体としてわかりやすい。
アニメではアテネ計画は断片的に語られていたが、舞台版ではより具体的に施設でどういうことが行われていたかを、3D映像を駆使しつつ、観客に提示。幼いナインとツエルブ、ハイヴがいかに過酷で希望のない状況に閉じ込めれていたかがよくわかる。しかも脱走シーンは映像の迫力も相まって衝撃的、泣き叫ぶハイヴを置いて逃げなければならなかった2人の気持ちを考えると胸が痛くなる。

警察の人間関係もよりクリアーに、柴崎と倉橋、職場ではややぎくしゃくした関係ではあるが、本当はお互いにリスペクトしあっているのが、やり取りや空気感でわかる。また、ハイヴはナインには並々ならぬ対抗心を燃やすが、幼馴染みに会えた懐かしさもそこはかとなく感じられる。
主演の松村龍之介、複雑な感情を持つナイン役、キャラクターの輪郭をはっきりとさせつつ、ちょっと謎めいた感じを匂わせつつ好演。ナインが”陰”なら対するツエルブは”陽”、明るく笑い、陽気に振る舞うが、心の奥底にある翳りも表現、石渡真修が健闘している。ハイヴはアニメと同役で潘めぐみ、もはやハイヴにしか見えないというハマりっぷりで流石の芸達者ぶりを見せる。

『残響のテロル』は様々なテーマをはらんでいる。戦争、原発、政治、国際関係、そして描かれている人間関係、考えさせられる部分が多い作品であるが、こういったことをきっちりと観客に発信する。悲劇的なあっけない顛末ではあるが、一筋の光がある物語、ずしりと重いがエンターテインメント性も感じられる良作となっていた。

■ ミュージカル『Dance with Devils』

2015年10月~12月まで放送されたテレビアニメ『Dance with Devils』が早くも舞台化、ミュージカル仕立てのダークファンタジーである。
舞台版はオリジナルストーリーだが、テレビアニメ版を知っていれば、さらにキャラクターの理解が深まるようになっている。もちろん視聴していなくても世界観やキャラクターはわかるようになっている。
原作アニメ同様楽曲が多く、舞台だけの新曲も用意されている。アニメ版もそうだが、ラップ風あり、ジャージーな印象のものあり、ラテンなものあり、J-POP風もあり、と多彩。新曲はアニメ版と同じElements Gardenが手掛けているので、世界観はそのままで全体としてはショーアップ。アニメ版にあるシーンと舞台だけのオリジナルなシーンがあるが、特にアニメにもあるシーンは原作ファンにはたまらないシーンばかり。

メインキャラクターはもちろん、全てのキャラクターに見せ場がある。リツカをイメージするダンサーが登場、普通にキャラクターを登場させるより幻想的でエレガント。アンサンブルのレベルも高く、アクションにダンスに大活躍、映像も背景だけでなく、彼らの”技”も表現し、ファンタジーらしい”味付け”。ラスト近く、”そうだったのか”的な展開もあり、ここは必見。
鉤貫レム(神永圭佑)は冷酷で笑顔を見せず、、楚神ウリエ(崎山つばさ)はバラを手放さない、南那城メィジ(吉岡 佑)はドSなオレ様、棗坂シキ(安川純平)は飄々とつかみどころがない堕天使、期待を裏切らないキャラクターでここはファン納得、もちろん”決まり文句”、”口説き文句”もふんだんに、ここは”萌えポイント”。舞台だけのオリジナルキャラクターはノエル、ホランド、ストーリーのキーを握るが、どんな役割を果たしてくれるのかは”お楽しみ”。

実は”本編”終了後、なんとミニコンサート(アクマの歌宴)が用意されている。毎回変わるのだが、ゲネプロでは鉤貫レムと立華リンド、ここはペンライト使用可、大いに盛り上がりたい。
ゲネプロ前に囲み会見があった。キャスト一同、気合い十分。見どころに関して神永圭佑は「アニメにあったシーンと、アニメにはないオリジナルなシーンがあります」とPR。平牧 仁 (立華リンド)も「アニメでは見られなかった表情が見られます」とコメント。舞台ならではの”ダンデビ”、楽しいエンターテイメント作品であった。

■ 舞台『弱虫ペダル』~総北新世代、始動~

自転車競技を題材にしたコミック『弱虫ペダル』、2008年から「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)にて連載中、2015年は劇場版も公開され、テレビアニメも第3期の制作が発表になっている。
物語の出だしは小野田坂道が自転車で登校するシーンから始まる。校舎でよく見る垂れ幕、坂道は自分の名前が大きく書かれている幕を見てあせる。そこへ新一年生(鏑木一差と段竹竜包)が自転車で通りかかるが、本人とは知らずに「凄いですよね~」等と気軽に話しかけ、坂道はあせりまくる。原作にもあるが、内気な坂道らしいエピソードである。ちょっとオドオド、お人好しで素直な小野田坂道を今回2回目の小越勇輝が演じるが、雰囲気が坂道そのもので、芸達者ぶりを発揮する。

舞台『弱虫ペダル』、ハンドルだけで自転車を表現するのは何度観ても”ミラクル”だ。手嶋にとって後輩たちは頼もしいが、同時に己の才能の無さを感じる。「俺は弱い」と言う。弱いから精進する、演じるは鯨井康介、力強い台詞にキャラクターの決意をにじませる。鳴子の帰省、峯ヶ山ヒルクライムレース、幼馴染みだった手嶋と葦木場の戦い、たっぷり時間をかけて描くことによって、キャラクター達をより真近に、迫力を持って感じられる。
時間は戻り、坂道たちの最初の合宿のシーン、手嶋、青八木は1年生3人に負ける。2人は改めて自身の才能のなさを思い知る。才能のある人間はほんのひと握りで大半の人間は平凡、だがパッションと努力で輝くことが出来るのだということを教えてくれる。また新1年生レースに参加する新2年生杉元照文も才能のないキャラクターとして描かれ、結局負ける。山本一慶が熱演し、杉元を応援したくなる程の爽やかさだ。敗者にスポットを当て、あくまでも”競技”、勝者は1人、それ以外は敗者という辛い現実をみせる。しかし、観ている観客は辛くはならない。勝っても負けても前を見て進んでいくしかない、その気持ちだけで元気になれるからだ。

全ての登場人物に見せ場があり、泉田の言葉を借りれば「全員がエース」だ。そして坂道は遠くの巻島に問いかける「僕はどうしたら強くなれるんですか?」と。勝っても負けてもその命題は解決されない。
原作ファンには嬉しい”コネタ”も詰め込まれ、笑える部分もたっぷり。箱根学園も”始動”、キャプテンの泉田塔一郎は自信をみなぎらせ、京都伏見の御堂筋はさらに”進化”する。楽曲は今回、ところどころに和太鼓を使用、力強さが倍増する。大千秋楽はライブビューイングが決まっている。
会見で初参加の鯨井は、「”大変だぞ!”と聞いていたが、これほど汗をかくものかと(笑)。これだけ必死になれる作品は特別だなという思いで稽古をしていました」とコメント。汗を感じる1幕ものであった。

PREMIUM 3D STAGE『残響のテロル』
2016年3月2日~3月6日
Zeppブルーシアター六本木
http://www.negadesignworks.com/terror/

ミュージカル『Dance with Devils』
2016年3月3日~3月13日
AiiA 2.5Theater Tokyo
http://dwd-stage.com

舞台『弱虫ペダル』~総北新世代、始動~
東京: 3月4日~6日 TOKYO DOME CITY HALL
福岡: 3月10日~13日 アルモニーサンク 北九州ソレイユホール
大阪: 3月17日~21日 オリックス劇場
神奈川: 3月25日~27日 KAAT神奈川芸術劇場
http://www.marv.jp/special/pedal/
《高浩美》

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