フランスの日本マンガ市場、最新事情 第4回 2016年のマンガ市場の展望 | アニメ!アニメ!

フランスの日本マンガ市場、最新事情 第4回 2016年のマンガ市場の展望

連載・コラム

■ 豊永真美
[昭和女子大現代ビジネス研究所研究員]

■ NARUTOの穴は埋められるのか

2016年はフランスでNARUTOの翻訳出版が完結する見込みである。2016年は単行本3冊が翻訳される予定なので、NARUTOの終了の影響が本格化するのは2017年からだが、フランス市場を牽引してきたビッグタイトルの終焉は今後のマンガ市場にネガティブな影響を与える。
フランスのマンガ市場の特徴として、日本で人気のコミックのタイトルの大半は仏語翻訳されていることだ。例えば、2015年のオリコンの年間コミック上位10タイトルのうち翻訳されていないのは「キングダム」だけである(図)。フランスからみたとき、日本にはまだ翻訳されていない未知のタイトルがたくさんあるという状態ではない。(図)

翻訳されているタイトルが多いことはフランスの出版社の経営を圧迫する側面もある。フランスでは、日本で売れているタイトルの大半は新刊1巻あたり2万部未満しか発行されていない。フランスの出版社から見ると、あまりに売れ行きが悪いタイトルは打ち切りにしたいが、日本の出版社との関係から打ち切れないことも多い。
人気タイトルは何巻も続くことが多いので、翻訳出版をし続けることは赤字の在庫を積み上げることとなる。フランスの出版社にとって、人気がなければ自社で打ち切りを通告できるバンド・デシネと異なり、マンガ出版はリスクの高いものなのだ。

■ 救世主となるワンパンマン

このように2016年のマンガ市場の展望は決して明るいものではなかったが、1月に出版された「ワンパンマン」のヒットはこの悲観的な展望を良い意味で覆すものであった。日本では集英社から出版されている「ワンパンマン」は複数の出版社が翻訳権を争奪した結果、マーケティング計画を策定したKUROKAWAが獲得した。
KUROKAWAは「ワンパンマン」について、地下鉄広告やテレビCM、書店には平積みのためのスタンドを配布するなど大々的な宣伝を行い、結果として初版65000部を売り切り、現在10万部まで売上を伸ばしている。出版直後は売上で書籍部門3位にランクインした(https://twitter.com/tonarinoyj/status/689769604411863041)。「ワンパンマン」が地下鉄のポスターで宣伝されている様子は、となりのヤングジャンプのツイッターでも確認できる(https://twitter.com/tonarinoyj/status/690235910336557056)。
余談だが「ワンパンマン」主役のサイタマや前回紹介した「暗殺教室」の殺せんせーはグラフィックがとても「ゆるい」ものだ。シャープな図柄が好まれるとされてきたフランス市場でこのような「ゆるい」図柄が受け入れられるようになってきたというのは、多様な表現が受け入れられるようになってきたことの証拠だろう。

ともあれ、2015年で1巻あたりの売上が10万部を超えているのは「ONE PIECE」と「NARUTO」だけであることを考えると、「ワンパンマン」の人気がいかにすごいものかがわかる。一方で、10万部を売り切るということが大きなニュースになることがフランスの市場規模の限界でもある。
「ワンパンマン」は集英社の宣伝文によると9巻までで累計750万部を突破しているという。フランスの人口は日本の半分であり母数が小さいことから致し方ない面もあるにせよ、フランスの市場は日本の巨大な市場と比較するととても小さな市場であることを改めて認識させられる数字である。

■ 電子コミックは市場を救えるか

紙の出版が不調のため存在感が小さくなっていたKAZEだが2016年は電子コミックの分野で新たな動きがあった。KAZEは「DEATH NOTE」と同じ作者の「プラチナエンド」の翻訳権を獲得し、電子コミックとして1月から1話ずつ99ユーロセントで発売したのだ。翻訳出版を迅速に続け、2月からは日本での雑誌発売と同時に翻訳出版する。
フランスでは、電子コミック市場はまだ十分に拡大しておらず、ネット上は海賊版翻訳が優勢となっているが、日本と同時あるいは間髪を置かない形で正規の翻訳版が発表されることにより市場が拡大するか注目される。

いずれにせよ、ブルーオーシャンとはいえないフランス市場でどのようにマンガ市場を拡大させていくかはフランスの出版社の課題である。日本の出版社もどこに売上目標を置くか定めなくてはいけないだろう。  

[アニメ!アニメ!ビズ/www.animeanime.bizより転載]
《豊永真美@アニメ!アニメ!ビズ/www.animeanime.biz》
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