フランスの日本マンガ市場、最新事情 第1回“2015年の動向:2009年以来はじめて売上増加に転じる” | アニメ!アニメ!

フランスの日本マンガ市場、最新事情 第1回“2015年の動向:2009年以来はじめて売上増加に転じる”

連載・コラム

■ 豊永真美
[昭和女子大現代ビジネス研究所研究員]

フランスのマンガ市場は2015年は増加に転じたようだ。調査会社GfKによると2015年で売上部数は前年比7.8%の1240万部となっている。フランスのマンガ市場は2009年をピークに減少を続けていたので(マンガはなぜ赦されたのか -フランスにおける日本のマンガ- 第2回「フランスにおける日本のマンガ市場」参照)で、この反転は良い知らせといえる。他方、一部のビッグタイトルに牽引されていた市場に変化もでてきているようだ。
本稿では2015年のマンガ市場と2016年の展望を3回にわけて紹介する。

■ 売上増加となった2015年のフランスの書籍市場

2015年の日本出版物市場は出版科学研究所の調査によると前年比5・3%減の1兆5,220億円と11年連続で前年割れとなり、ピークの6割弱まで縮小している(http://www.chunichi.co.jp/s/article/2016012501001288.html)。オリコンがまとめている「年間マーケットレポート」(http://www.oricon.co.jp/news/2065691/full/)でもコミック部門は売上で前年比1.9%減、部数で2.9%減とあまり芳しくない。

これに対し、フランスの書籍市場は意外なことに前年比1.7%増となったようだ。フランス出版社協会(SNE)が年初に記者に語ったもので、これは、フランスのバンド・デシネのお化けタイトルである「Asterix」の最新刊が200万部発行されたことが大きい(http://www.lapresse.ca/arts/livres/201601/05/01-4936716-france-le-marche-de-ledition-en-croissance.php)。 マンガ市場の拡大の背景も一つには書籍市場の好調があるだろう。

■ マンガ市場ではビッグタイトルの初版部数が落ち込む

フランスのマンガのタイトル別の動向は、フランスの「バンド・デシネ批評家・ジャーナリスト協会(Association des Critiques et journalistes de Bande Dessinee、以下ACBD)」が事務局長のジル・ラティエ(Gilles Ratier)の名前で毎年末にその年のフランス語圏欧州のバンド・デシネ市場について発表するレポートでみることができる(http://www.acbd.fr/)。
このレポートは市場全体の売上部数や売上金額についての数字はないものの、主要タイトル別の初版部数を紹介しており、市場の詳細を見る目安となる。特に初版部数2万部以上のタイトルがリストアップされているので、どのようなタイトルがフランスで売れているかがわかる。

これによると、2015年のマンガ市場が拡大した大きな理由は「ONE PIECE」の発行巻数の増加だ。2014年は69巻から72巻までの4巻だったのに対し、2015年は73巻から77巻までの5巻が刊行されたことが大きい。「ONE PIECE」の初版発行部数は減少傾向にあるとはいえ、1巻あたり10万部以上となっているので、新刊の発行巻数により、フランスのマンガ市場全体が大きく変化する。
ACBDの初版部数によると2014年の「ONE PIECE」の新刊4巻を足し合わせた発行部数は66万部、これに対し2015年の新刊5巻を足し合わせた発行部数は78万5千部となっている。2015年を包括するGfKの統計は実売部数なので、乖離はあるものの、前年からの反転理由の最大要因は「ONE PIECE」の刊行巻数と推測される。

実際、フランスのマンガ市場は楽観視できる状態ではない。楽観視できない理由の一つが初版部数の落ち込みである。フランスのマンガ市場は00年代を通じて拡大してきたが、2010年頃から初版部数を絞り込むようになった。00年代半ばはNARUTOの新刊が1巻あたり25万部刷られている状態だったが、2015年では「NARUTO」の新刊も15万部となり、最盛期から10万部減少している。「ONE PIECE」の新刊の発行巻数も2014年の16万5千部から2015年は15万7千部と減少している。
さらに、「NARUTO」、「ONE PIECE」に続く人気となっている「Fairy Tail」、「進撃の巨人」の1巻あたり発行部数はまだまだ少ない。
フランスでは「NARUTO」は2015年11月に69巻が刊行された。全72巻の仏訳出版は2016年中には完了するとみられ、NARUTO終了後のマンガ市場の動向が懸念される。

しかし、2015年には、今までヒットしなかったようなマンガが1巻あたり2万部以上売り上げる事例が多く見られ、これらの作品が市場拡大に貢献したのも事実だ。次回はこうした「プチ・ヒット」に焦点をあてる。  

[アニメ!アニメ!ビズ/www.animeanime.bizより転載]
《豊永真美@アニメ!アニメ!ビズ/www.animeanime.biz》
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