東京国際映画祭に先駆け、10月20日から22日まで東京・台場のホテル グランパシフィック LE DAIBAでは国際見本市「Japan Content Showcase 2015」が開催された。コンテンツの合同マーケットとして催されている中、数々のセミナーやセッション、イベントも開催され世界各国のバイヤーやクリエイターが参加した。21日には東京国際ミュージックマーケット(TIMM)のセミナー「世界のアニメ・コンベンションが抱える現在の問題と今後の進むべき道とは」が行われた。各国のコンベンションの主催者たちが登壇した。ランティス代表の井上俊次氏がモデレーターを務め、スピーカーにはアニメ・コンソーシアム・ジャパンの彌富健一氏、北米のアニメイベントAnime Expoを運営する日本アニメーション振興会(SPJA)のマーク・ペレス氏、OTAKONを主催するOtakorpのジェニファー・ピロ氏、ブラジルのAnime Friends主催者・Yamato Corporationの近沢隆氏を迎えた。ランティスはよく知られているとおり、レーベルであると同時に、音楽イベントも主催する。また井上氏は日本から海外各地へアーティストを派遣し、コンベンションごとに生じている問題点を肌で感じている一人である。ゲストは開催あたってどのような努力をしているのか、また、アーティストをどのように迎え今後どのような対応を目指していくのか、様々な意見が飛び交せた。Anime Expoは28万人の来場者、日本企業を含む出展数375の大型イベントである。毎年、夏にロサンゼルスで開催、近年は、世界各地のアニメイベントをつなぐ連絡会議も運営する。OTAKONは2016年で23回目の開催を迎える。ジェニファー氏は日本のファンがアメリカには数百万人はいると考えており、今後の発展にも大いなる展望を見出している。Anime Friendsはブラジルで2003年に大学の校内を会場にして産声を上げた。4日間開催で来場者は1万6千人。13年を経て今はアルゼンチン、チリ、ペルーでも開催しており、6日間で14万6千人の来場者を記録した。日本のアーティストをブッキングする差異の苦労もさまざまだ。Anime Expoではゲストのブッキングを日本のコンテンツをよく知る団体の協力をもとに行っているとマーク氏は語る。それでも言語の壁やスケジュールの問題、アーティスト側からのリクエストに応じることの困難さなどはなかなか解消されない。アメリカでは仕様書が用意されているとジェニファー氏は述べた。必要なもの、例えばおしぼりや姿見といったものから、機材、テクニカルな部分まであらかじめ記入して渡せば、100%とは言わないまでも可能な限り実現させようと努力するという。しかし、スケジュールなどの関係で提出が遅れたり、記入を忘れていたりすることもおおく、お互いのすれ違いにも繋がるのだそうだ。各コンベンションはアニメだけではなく、さまざまな日本文化の紹介を試みている。OTAKONではラスベガスでOTAKON VEGASを開催した際、相撲観戦イベントを行ったところ、初めは400人程度だった観戦者が、応援の声などを聞きつけ最終的に1000人ほどになったという。OTAKON VEGASの来場者が約2000人ということを考えると、半数が相撲を観戦したというのは驚異的な数字だ。ブラジルのAnime Friendsでは日本企業にもっと参入してほしいと近沢氏は語った。コンテンツの人気は高く、その土壌は育っているが、まだ企業側はビジネスにつながるのかで判断しきれていないという見方だ。海賊版対策はコンテンツの海外展開にあたっての重要課題だ。日本のアニメコンテンツなどを海外へ配信、紹介しているアニメ・コンソーシアム・ジャパンの彌富氏は「現状、まだ正規業者は世界で商売できていない」と語る。世界のファンが例え本物を熱望していても、なにより「何が本物かわかっていない」状態なのだという。そのため、コンテンツホルダーや正規業者が海外へ積極的に出向き、本物を広めていくことが大事だと彌富氏は語った。しかし、ブラジルなどは日本から飛行機の移動で24時間。この距離の差がアーティストや漫画家、アニメ監督などの招聘への障害となっていると近沢氏は明かした。マーク氏は「ライセンスの扱いは国ごと州ごとに違うため、入ってきてからの対策は難しい」と海賊版に対する排斥の困難さを述べ、「水際でせき止めることが大切」と港で対策することの重要性を説いた。最後に井上氏が、「アニソンの日本市場は定まっている中で、今後は世界で待っているファンと直接会って、握手をすることが大切なのではと考えています。今後はアニソンに限らずJ-POP、J-ROCKとも手を組んで、海外の人とも一緒にやっていきたいです」と締めくくった。世界でアニメや日本文化に触れるビックコンベンションが開催されていることは喜ばしいことでもある。それならば正規品や本物を手にしてほしい。日本のライセンスやコンテンツを保持している業者や企業は、声を上げる意味も含めてより積極的な参加、海外展開が望まれる。同時に、配信などを通じて日本から呼びかける(海賊版の見分け方など)ことも可能だ。アーティスト、クリエイターが送り出す、血の通った商品を、より多くの人に届け、さらに日本文化の理解も深まる。コンテンツを通じて結ばれた日本と海外の関係がこの先もよくなる方法を見出していきたい。[細川洋平][/アニメ!アニメ!ビズ/www.animeanime.bizより転載]
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