アニメエキスポ2015で主役に踊りだした動画プラットフォーム 競争激化でライセンス料も急伸 | アニメ!アニメ!

アニメエキスポ2015で主役に踊りだした動画プラットフォーム 競争激化でライセンス料も急伸

米国・ロサンゼルスで開催されたアニメエキスポ2015の参加者が前年比18%増加で過去最高を記録した。その人気を支えるのが成長する動画配信プラットフォームである。

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2015年7月2日から5日まで、米国・ロサンゼルスのコンベンションセンターでアニメエキスポ2015(Anime Expo2015)が開催された。日本のアニメ・マンガにフォーカスしたイベントでは北米最大で、2015年の延べ来場者は26万人超、前年比18%増加で過去最高を記録した。
来場者数は過去3年で急増しており、2000年代半ばの不振から一変した。日本アニメ人気のリバイバルを感じさせるのに十分だ。こうした日本アニメの人気復活の理由に、会場では日米で同時展開する正規動画配信サービスの普及と影響力を上げる声が多く聞かれた。無料、もしくは廉価な定額見放題サービスが、いままでにないファンをアニメに運んできているという。

動画配信サービスの存在感は、アニメエキスポ2015の会場のあちらこちらで感じられる。各社、作品のトークパネルではBlu-ray、DVD発売情報よりも配信情報をより大きく取り扱っている。
またエキビジョンホールには、いまでは老舗となったクランチロール(Crunchyroll)のほかDAISUKI、Huluがブース出展をし、その場で会員登録を受けていた。いまや動画配信こそが北米アニメ市場のメインストリームであることを誇示する。

動画の勢いが増すなかで、2015年の注目は動画配信サービスの競争激化である。早くからサービスを開始したクランチロールが現状では一歩抜け出すが、成長市場ということもありライバル企業の動きが活発だ。
エキビジョンホールではHuluの出展が目を惹いた。Huluがアニメエキスポに参加するのは今年で2回目だが、ブランドの名前だけを売り込んでいた2014年に比べて今年はアニメ作品を全面に押し出して、よりダイレクトに会員獲得を目指していた。
アニメ特化型の配信プラットフォームであるクランチロール、DAISUKIに対して、Huluは一般層により多くの視聴者を抱える。Hulu全体から見れば、日本のアニメはニッチ(隙間)ジャンルにみえる。にもかかわらずのHuluの出展は、同社にとってアニメが無視出来ない存在であることが分かる。同時にブースでは、VIZ Mediaやファニメーション(FUNimation)、センタイフィルムワークス(Sentai Filmworks)といった大手アニメ配給会社からクイズのための景品が提供されていた。こうした現地の有力アニメ企業がHuluと連携していることも分かる。

もうひとつの注目プレイヤーは、DAISUKIである。DAISUKIは日本企業資本で、世界にアニメを配信すると2012年末に設立された。しかし、視聴者獲得で伸び悩み、2014年に新たに設立されたアニメコンソシアームジャパンがその運営を引き継いだ。
DAISUKIはエキビジョンホールのブースのほか複数のパネルトークを実施、さらに入り口正面の巨大バナー広告などで存在感を発揮した。何よりもこれまで課題とされてきた配信タイトルの拡充が目立った。人気ゲーム原作、米国でも人気の高いufotableのアニメーション制作で2015年夏の目玉作品となる『GOD EATER』の独占配信が注目された。視聴は無料ということもあり、本作だけでも新たなファン獲得に大きな力を発揮しそうだ。製作委員会への出資を通じた日本企業ならではの優位性を活かしており、今後大きな存在になるのではとも思わせた。

またファンに見えるかたちでの参加はなかったが、Viewsterが新たな動画配信プラットフォームとして活動を開始した。Viewsterはスイスに拠点を持つ会社だが、2015年より本格的に日本アニメに進出する。
新作発表の場では、クランチロール、DAISUKI、Huluと並んでViewsterの名前を配信プラットフォームとして見ることも少なくなかった。同社は会場周辺で日本企業と配信ライセンスの獲得のために積極的に交渉をしたとも伝えられる。
しかし、すでにクランチロール、DAISUKI、Huluと有力プレイヤーが並ぶなかで、サービスでどう差別化するかが鍵となりそうだ。動画配信サービスの競争激化を象徴する存在だ。

競争激化は、各動画配信プラットフォームにとっては頭が痛い問題である。一方で、アニメのライセンスを持つ日本企業各社にとっては悪い状況ではない。プレイヤーの増加は、より多くのウインドウでより多くの視聴者に作品を届けることになる。それは日本アニメの人気拡大につながるだろう。
さらに各社がより多くの作品を有利な条件で獲得しようとすることで、北米向けの日本アニメのライセンスの価格が急上昇している。こちらもアニメビジネスの関係者から多く指摘された。国内でBlu-ray、DVD売上高が伸び悩む中で、海外向けのライセンス販売はアニメビジネス全体でも無視できない大きさになっている。
[数土直志]

[/アニメ!アニメ!ビズ/www.animeanime.bizより転載記事
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