神山健治監督がみるSF大作「ジュピター」とウォシャウスキー姉弟:氷川竜介が訊く -後編- | アニメ!アニメ!

神山健治監督がみるSF大作「ジュピター」とウォシャウスキー姉弟:氷川竜介が訊く -後編-

映画『ジュピター』とウォシャウスキー姉弟について、アニメ・特撮研究家の氷川竜介氏が、『攻殻機動隊S.A.C.』シリーズなどで世界中にファンを持つ神山健治監督に訊く後編をお届けする。

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ウォシャウスキー姉弟にとって『マトリックス』以来、実に16年ぶりの完全オリジナルの作品『ジュピター』が3月28日に全国公開される。本作とウォシャウスキー姉弟について、アニメ・特撮研究家の氷川竜介氏が、『攻殻機動隊S.A.C.』シリーズ、『東のエデン』など数々のSFアニメで、日本だけでなく世界中にファンを持つ神山健治監督に訊く後編をお届けする。
[聞き手=氷川竜介、取材・構成=細川洋平] 

『ジュピター』
3月28日(土)新宿ピカデリー、丸の内ピカデリー他 全国公開
http://www.jupitermovie.jp  

アニメ!アニメ!×ジュピター特集ページ公開中!
/http://animeanime.jp/special/388/recent/

■ 宇宙船をミニチュアに見せない技術

―氷川竜介氏(以下、氷川)
監督は『009 RE:CYBORG』で3D立体視表現にチャレンジされていました。本作は3D立体視もみどころですが、いかがでしたか。

―神山健治監督(以下、神山)
非常に見やすかったですね。基本に忠実で、かつ極端に飛び出ない。実はこれが宇宙船をミニチュアに見せない技になっています。巨大な宇宙船は3Dになるとミニチュアに見えてしまうという弱点があるんですが、そこをクリアしています。
僕は『009 RE:CYBORG』の時にやってみて分かったんです。立体に見る時は焦点を当てているもの以外は、人間の目にはぼけて映るんです。視界の全てにピントが合うと人間の脳はミニチュアとして見てしまうんです。どうやったらミニチュアにならないか試行錯誤しました。
同様にむずかしいのは奥行きです。実際には奥に行くほど距離が生まれてくるはずなんですけど、人間の目では奥のほうはパースが潰れるんです。だから3Dではむしろ奥行きはあんまり出してはダメなんですが、その辺もそつなく処理しています。

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神山健治監督

―氷川
本作は巨額の製作費を投じた大作です。そんな作り方は日本のクリエイターとしてはどう見られますか。

―神山
全てにおいて羨ましいですね。製作予算もそうだし、こういったオリジナルストーリーの企画を決められることもです。ハリウッドでも、そうした企画が通る人は何人もいないですよね。映画人が憧れる条件で映画が撮れている人たちですよね。同時に最早プレッシャーも感じていないのかな、と思います。どういう感覚になっているのかちょっと想像もできない。100億円を超える映画のプロジェクトはもはやひとつの産業ですよね。

―氷川
CGも人手で作るものですから、相当なマンパワーがいるはずですよね。

―神山
監督業も僕らが思っているものとは、だいぶ違うはずですよね。かなり分業化もされているはずです。作り手の意識も全然違うんだろうなと。

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―氷川
いろんな作り手に委ねてはいても、映像のイメージはしっかり一本通っています。

―神山
もしかしたら僕らがTVシリーズをやっている感覚に近いのかも知れない。全体をどう準備して、意志を伝え、どこでチェックするのか。そうやって統一感を出していく。そんなことを想像しながら『シュピター』を見ました。
《細川洋平》

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