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北米でデジタルマンガ事業を共同展開 講談社とデジタルガレージが資本提携

講談社がデジタルガレージと手を組んで、北米のデジタルマンガ事業に乗り出す。2月19日、講談社とDGは資本提携を通じた北米での協業を明らかにした。

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講談社がインターネット事業のデジタルガレージ(DG)と手を組んで、北米のデジタルマンガ事業に乗り出す。2月19日、講談社とDGは資本提携を通じた北米でのデジタルマンガ事業の協業を明らかにした。両社はウェブメディアなどを通じて、日本マンガの海外ビジネス開拓を進める。
まず講談社はDGの株式の一部(0.5%以上)を取得する。そしてDGは講談社が米国サンフランシスコ市に設立したKodansha Advanced Media LLCの株式の19%を取得する。さらに両社は2015年5月に、共同出資会社の株式会社DK Gate(仮称)を国内に設立する。DK GateはDGが66%、講談社が34%を出資、代表取締役社長にはDG取締役副社長の六彌太恭行氏が就任する。

やや複雑な取り組みだが、事業は主にふたつの部分からなる。ひとつは海外ビジネスで、こちらはKodansha Advanced Mediaが中心、講談社が主導する。DGがインターネットの技術、マーケティングのノウハウを提供するイメージだ。
もうひとつのDK Gateは国内ビジネスが中心で、デジタル配信関連企業へのベンチャー投資事業を行う。国内外のビジネスの場で活用出来る技術の育成を目指す。国内大手出版社である講談社が参加することで出版関連の新事業、ベンチャー企業の発掘に力を発揮する。リターンは中長期的なものになりそうだ。

講談社にとってより重みがあるのは、北米事業のKodansha Advanced Mediaだろう。講談社はこれまでもニューヨークに拠点を持つ講談社USAを通じて、北米でのマンガ出版ビジネスを手掛けてきた。『美少女戦士セーラームーン』や『進撃の巨人』などのヒット作もあり、紙による単行本出版は好調である。
しかし、成長分野とされるデジタル出版事業は出遅れている。翻訳日本マンガの有力プラットフォームがなく、人気作品の配信機会が失われ、海賊版配信に多くの需要が奪われている。ライバルとなる集英社、小学館が現地法人のViz Mediaを通じたデジタル配信に早くから力をいれてきたのと比べても、この分野での出遅れ感は否めない。そこで講談社がデジタル分野の北米戦略の切り札として打ち出したのがKodansha Advanced Mediaというわけだ。

Kodansha Advanced Mediaは、2014年12月4日に、講談社USAの全額出資で設立された。英語圏のデジタル配信のマーケティングや映画事業、イベント事業、デジタルメディアの開発や運営を目指すとしている。社長には長年、同社の看板マンガ雑誌「週刊少年マガジン」の編集長を務めた森田浩章氏が就く。ここからも講談社がKodansha Advanced Mediaにかける意気込みの大きさが感じられる。
しかし、講談社は数多くの人気マンガを抱えてはいるものの、インターネット事業のノウハウは弱い。そこでDGのノウハウと協力を得るとみられる。Kodansha Advanced Mediaは、今後北米のデジタルマンガ市場の開拓を目指し、専用のウェブサイトを構築するという。さらにスマホアプリやソーシャルメディア、コミュニティーサイトなどを通じて、北米のユーザーに情報を発信する。これまで北米で不足していた、マンガ配信のプラットフォームを自前で構築する。
野心的な戦略だけにリスクも少なくない。すでに北米ではアメリカンコミックの分野でAmazonや2014年に同社に子会社となったComiXologyが市場の大きなシェアを占めており、支配的な力を持っている。日本マンガの配信にも関心を持っている。さらにインターネット上にマンガの違法ファイルが溢れており、ファンがデジタルマンガを有料で読む習慣は希薄である。これらにどう対応するのか、これらに打ち勝てるサービスを構築できるのかが、講談社の北米でのデジタルマンガビジネスの鍵になるだろう。
[数土直志]

[/アニメ!アニメ!ビズ/animeanime.biz より転載記事]
《数土直志@アニメ!アニメ!ビズ/animeanime.biz》
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