岡田麿里インタビュー:「M3~ソノ黒キ鋼~」(シリーズ構成)前編 “サトジュンの「黒さ」が発揮されている”

インタビュー

近未来の東京を舞台に、突如発生した異空間「無明領域」。そこでは、人間の絶望と混沌をそっくり引き写したような異形のもの「イマシメ」がうごめいていた。調査のため集められた8人の少年少女は「マヴェス」と呼ばれるロボットに乗って、正体不明の敵に立ち向かう――。
佐藤順一(監督)×岡田麿里(シリーズ構成)×河森正治(メカニックデザイン)という異色のタッグも話題になった、現在放送中のテレビシリーズ『M3~ソノ黒キ鋼~』。この作品は、どのようにして産声を上げたのか? シリーズ構成の岡田麿里に、謎のベールに包まれたこの作品のできるまでを聞かせてもらった。
[取材・構成:上田繭子]

『M3~ソノ黒キ鋼~』
/http://m3-project.com/

―アニメ!アニメ!(以下、AA)
企画のはじまりは、どんなところだったのでしょうか?

―岡田麿里(以下、岡田)
もともとは、何年も前に「サトジュン(*)でロボットものをやりたい」という話が金子プロデューサーからあって、企画を作っていたんです。そのころは佐藤さんも「明るい感じにしたい」と言っていて、ちょっとスポ魂のような雰囲気もある、ヒロインの女の子とメカとの友情物語だったんです。個人的に、すごくやりたかったんですけどね。暑い日に練習したあと、太陽で熱くなったメカの上で目玉焼きを焼く、みたいな話で(笑)。
*佐藤順一監督

―AA
それは見てみたかったですね(笑)。それから、現在の『M3~ソノ黒キ鋼~』が動き出すまでにはどういう流れがあったのでしょうか。

―岡田
その後『月刊コミックブレイド』で『Mortal METAL 屍鋼』という漫画の原案を佐藤さんがやることになって、最初はいつもの佐藤さんらしい「がんばる女の子」が主役だったのに、話がどんどん暗くなっていって。今回『M3~ソノ黒キ鋼~』を作るにあたっても、やはり「暗いのがやりたい」とおっしゃったんです。ほら、佐藤さんといえば「黒い」というのがお約束ですよね?(笑)

―AA
え!? そうなんですか?(笑)

―岡田
厳密に言うと、佐藤さんの腹黒さと、作品のまったりした感じとのギャップを楽しむ、という面があったと思うんですけど(笑)。そんな佐藤さんが「いよいよ本性を出す気か!?」と、期待が高まりました。
ただ、佐藤さんがロボットものの監督をされることはなかなかないし、少年少女が出てくるなら、もうちょっとせつない系にできないかなあ、と思ったんですよね。そこで考えたのが、少年少女の人間関係を見せつつ、その関わり合いのなかでメカが動いていくという仕組みです。

―AA
なるほど、群像劇を得意とする岡田さんらしいですね。そこに「ホラー」という要素はどう関わってくるのでしょうか。

―岡田
佐藤さんは私が出したアイデアを汲んでくれつつ、やはりもっとドロッとした作品がやりたかったらしくて「妖怪ものにしない?」と言われたんです(笑)。人の思い残しというか、つらい目に遭った人たちが異形のものたちを生んで、それに少年少女が対峙していくお話にしたらどうかと。
とはいえ、佐藤さんがすべての流れを決めてしまうのではなくて、常にひらめきを求めているようなところがあって、私もスタッフの皆も常にアイデアを出し続けつつ、結果としてライヴ感を重視しながら作っているという感じです。

fd

―AA
実際のところは、想像以上に暗いムードになっていて驚きました。

―岡田
ひどい台詞、つらい展開といえば、1話に「赤ウンコ」という言葉がでてくるんですけど、私が考えたっぽいですよね? 
でも私は「ウンコ」なんて……言いたいけど(笑)、でもそんな直球では言わないようにしていて。佐藤さんが考えたんですよ。「どうせ岡田が書いたとみんな思うから」って(笑)。

―AA
ヒドイ!(笑)

―岡田
そうなんですよ。他にも、人がすごくひどい目に遭っているところとか、かわいそうなアイデアを出すたびに、人のせいにしようとする(笑)。そういうサトジュンの黒さが存分に発揮されている作品なんですよ。

―AA
岡田さんと佐藤監督は『ARIA~The NATURAL~』(2006年)で初めてご一緒されていますが、『M3~ソノ黒キ鋼~』は近年の佐藤監督作品にはない閉塞感があるのはなぜでしょうか。

―岡田
分からないですね(笑)。ただ『ARIA』は優しい物語で、本読みも穏やかに進んでいたのですが、たまに佐藤さんが闇の片鱗を見せることがあったんですよ(笑)。もちろん、本当に綺麗な気持ちも知っていらっしゃるとは思うのですが、ある種の二面性があるというか、一つの言葉に別の意味があるような印象を受けたんです。
それが、今回は表に出てきたのかな(笑)。たとえば「こういうとき、人はどういう気持ちになるか」と悩んだときの答えが『ARIA』のころとは全然違っていて、「そんな考え方もするんだ」という発見があったり。黒いというよりは、いろいろ観察している方だなあとあらためて思います。感情の引き出しがとても多くて、作品によっての使いわけや扱い方をよくわかっている。

fd

《animeanime》

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