……そして、そんな『ペルソナ3』をアニメ化した作品が2013年11月23日に公開された『PERSONA3 THE MOVIE #1 Spring of Birth』だ。過去に『ペルソナ ~トリニティ・ソウル~』という『ペルソナ3』の世界から10年後のパラレルワールドを描いたTVアニメが放送されているが、ゲーム本編に忠実なアニメ化はこれが初めてとなる。 なお、その点においては『ペルソナ3』の続編である『ペルソナ4』をTVアニメ化したTVアニメ『ペルソナ4』という成功例があり、同作は徹底した原作再現へのこだわりによってファンの心をガッシリと掴んだ。そのためか、『PERSONA3 THE MOVIE #1 Spring of Birth』も同様に原作の雰囲気を活かした演出が多分に盛り込まれているのが特徴となっている。 ほとんどの場面においてゲームの選択肢そのままのセリフを口にする主人公(※アニメ版での名前は結城 理)や、ペルソナ対シャドウの戦闘における弱点・耐性の概念、個性的な“目黒サウンド”の挿入タイミングなど、全体的に「原作ファンを喜ばせよう」という意図が強く感じられる仕上がりだ。 特にビジュアル面においては、影時間の描き方が見事というほかない。空に浮かぶ青緑色の満月、静止した闇の中で物言わぬ棺と化した人々、不気味に聳え立つ迷宮の塔“タルタロス”といった、『ペルソナ3』特有の恐ろしくも美しい退廃的な世界観を完璧にアニメへと落とし込んでいる。