究極の作画で描かれた『REDLINE』 小池健監督インタビュー その2 映像から生れるのスピード感の秘密 | アニメ!アニメ!

究極の作画で描かれた『REDLINE』 小池健監督インタビュー その2 映像から生れるのスピード感の秘密

■ 映像から生れるのスピード感の秘密 ■  『REDLINE』はかっこいい『チキチキマシン』?制作は『パプリカ』『時をかける少女』『サマーウォーズ』のマッドハウス。今まで経験したことのない<体感型>のアニメーション!

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(インタビュー:2010年9月)


究極の作画で描かれた『REDLINE』 小池健監督インタビュー その2
映像から生れるのスピード感の秘密


■ 映像から生れるのスピード感の秘密

アニメアニメ(以下AA)
ひとつ難しそうだなと思ったのは、カーレースということです。絵でスピード感を出すのは、確かに非現実的なことはできるけれども、現実感としてのスピードは難しいとも思うのです。そうした悩みはなかったのですか。

小池健監督(以下敬称略)
表現にはいろいろな方法があります。スピード感ですと、特に前半のレースは未舗装道路のところを走っている感じなので、ブレ感を出すための煙のエフェクトを付け足すことでスピード感が出ています。今回は乗っている人が普通に座っているだけでも全部ブレを描いてるんです。
同じような絵を微妙に揺れて描いている、角度もちょっと変えて引き写しじゃないような感じです。立体感がちゃんと表現できるようにアニメーターさんがブレをすごく丁寧に描いてくださっているので、その辺でスピード感が出ています。

煙に関しても、1回作ってラッシュでフィルムを見て、足りないなと思ったらすぐにもう一段レイヤーを足して、付け足すとかをしています。臨場感を出すためにエフェクトのレイヤーを足していく作業をかなり徹底してやりました。それでスピード感が表現出来たと思いますね。

AA  それは実写ではないアニメだからこそという感じですか?

小池
それもありますし、アニメーションでも「これまでそんなことやってないだろう」ということに挑戦できたと思います。

AA
そうしたアイディアは、今回の作業をやりながら考えられたのですか?これまで自身がアニメーター、原画をやっていた時からも、こう出来るかなと考えていられたのでしょうか?

小池
両方ありますね。もちろん自分でこういう感じになるともっと良くなるんじゃないかっていうのもありました。いろんなスタッフが関わってくるので、その人のアイディアを取り入れるのもあります。
僕のアイディアとスキルの高いアニメーターさんの情報とアイディアをいただいて、作っていけたと思います。


■  『REDLINE』はかっこいい『チキチキマシン』?

AA
あとレースということで『キャノンボール』を少し思い出しました。異星人登場の仕方ではスター・ウォーズ的なものも感じました。そうした70年代、80年代的なガジェットがすごく盛り込まれているのかなと思いました。

小池
それはありますね。僕はその辺の世代の人間なので、映画を観ていましたし、一番影響を受けている世代です。ああいう世界観、CGを全く使ってないアナログな感じはすごい好きですね。それを今のアニメーションでできないかな?というのはありました。

『キャノンボール』の冒頭のカウンタックのシーンは印象的でかっこいいなと思います。『マッドマックス』のワイルドな感じとかもですね。主人公が乗っている、アメリカのマッスルカーはどこか自分の中でかっこいい車の代表みたいな印象がありました。今回の主人公の車がそういうアメ車っぽい感じです。
そこで主人公の車が普通のアメ車で、あとはもう何でもありな車という対比を作ってみたいなと。それと『チキチキマシン』とかのマンガ的な要素のアニメーションを今の技術で大人っぽい感じにしたらどうなるんだろうって。

AA  『REDLINE』は、かっこいい『チキチキマシン』なんですね。(笑)

小池
そんな感じだと思いますね。いままでも『チキチキマシン』みたいなレースをアニメーションで作ってみたというのはありました。ただ、僕がレースをテーマにやるのであれば、あれを大人っぽい感じに作りたいというのがありました。いい表現ができたんじゃないかなと思います。

AA
全然、話が外れてしまうのですが、タバコ屋のおばちゃんのキャラクターが非常にユニークなのですが、あれは誰が思いつかれたのですか?

小池
あれは脚本にちゃんとありました。僕が話していたのは、外国へ旅行に行ったときに言葉が通じないじゃないですか。だからすごく邪険にされる、面倒くさがられる、そういう印象があったんです。サービス感が全くないっていう感じを出したかったんです。
あとはおばあちゃんだし、キャラクターづけをする時に、なんかプルプル震えている感じがいいんですと原画さんに伝えて描いていただいたんです。けれどプルプル震えてるんで、原画枚数がものすごい、尋常じゃない。

小池
ブレた同じ様な絵を何枚も描かないといけない。すごく「やり遂げてくれた!」っていうか、すごいパワーを感じた原画を見せていただいた。そういう発見もこの作品ではいっぱいありましたね。

AA
これも是非お聞きしたかったのですが、木村拓哉さんの声がとても良かったですよね。最初に木村さんの声が出たときにはどう思われましたか?

小池
僕らが考えていた「かっこいいJP」をすでに消化しきって取り組んでくれたっていう印象があります。すごいプロフェッショナルな仕事の取り組み方です。事前に何回か映像を見ていただいたのですが、現場に来た時に、もう第一声からすでにJPが出来上がっていました。
まさに僕らが求めていた「かっこいいJP」をすでに木村さんが消化していた感じがあり、すごく嬉しくて、身震いするような感じでしたね。

AA  何か指示はされたのですか?

小池
はじめに、JPはこういう感じのキャラクターですよと説明させていただきました。もう、木村さんがサングラスかけてかっこいいんですよね。はじめは、テンション抑えめで話を聞いて「うん、わかったよ」みたいなリアクションがありました。
レースシーンがすごく多いので、JPは声を張る芝居もすごくあって大変なんですよ。はじめのレースシーンは後で録りますというかたちで、まず芝居のところから入りました。本人もどんどんノッてきて、そんな感じで最後までやりきった感じです。本人ももう一回こんな感じでやりたい、直したいですと自分でリテイクを出しながら取り組んでくれました。

AA
最後に本作の作画的な見所、「ここは皆がんばったよ!」といったシーンがありましたら紹介いただけますか。

小池
クライマックスのレースがすごい好きでぜひ観ていただきたいですね。それと一番初めのイエローラインというレースのシーンはこの作品の雰囲気を一番わかってもらえるものだと思います。すごくスタッフも力を入れて作った部分です。初めてのラッシュが出来た部分でもあります。それをスタッフ全員で観てこの作品はこういう感じなんだって意識を共有できたパートです。はじめのレースは一番観ていただきたいところです。特にニトロを使って空間が歪むっていう描写がこの映画のキモです。そういうところを観てもらえるといいなって思いますね。

AA  本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。


『REDLINE』
公式サイト http://red-line.jp/

 監督: 小池健
 原作・脚本・音響監督: 石井克人
 製作: 二宮清隆
 企画: 丸山正雄
 エグゼクティブプロデューサー: 福島正浩
 プロデューサー: 吉田健太郎、小池由紀子
 アソシエイトプロデューサー: 木村大助
 脚本: 榎戸洋司、櫻井圭記 
 音響監督: 清水洋史
 音響効果: 坂本典之
 整音: 丸井庸男 
 音楽: ジェイムス下地
 アニメーション制作: マッドハウス
 支援: 文化庁
 配給: 東北新社
 宣伝: KICCORIT/アルシネテラン
<2010 年/カラー/102 分>

(声の出演)
 木村拓哉/蒼井優/浅野忠信
 我修院達也/岡田義徳/津田寛治/森下能幸/AKEMI
 青野武/廣田行生/石塚運昇/三宅健太/石井康嗣/チョー/堀内賢雄
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