日本SFファングループ連合会議は7月10日に、第42回星雲賞の受賞作を発表した。星雲賞は毎年前年の1月1日から12月31日までの1年間に発表されたSF作品、SF活動の中から、日本SF大会参加者の投票により選ばれる。その歴史の長さやSFファンによる独自の選考から、国内を代表するSF賞として注目されている。
 本年も、国内・海外のSF小説から、映像などの視覚メディア、マンガ、ノンフィクションをはじめとする幅広いSF概念を網羅した9部門が設けられている。受賞作には、2010年を代表する作品が並んだ。

 日本長編部門は山本弘さんの『去年はいい年になるだろう』(PHP研究所)が受賞した。2001年の9.11テロ事件を題材にした作品だ。未来からの介入により大規模テロの起きなかった地球を作者山本弘さんの視点から描く異色作である。
 日本短編部門には小川一水さんの『アリスマ王の愛した魔物』(早川書房「SFマガジン2月号」掲載)が選ばれた。SFマガジン50周年記念号に掲載されたファンタジー作品である。小川一水さんは、2004年、2006年に続き、3回目の星雲賞受賞となる。

 映画ファンやアニメファン、マンガファンからも注目が高いのが、視覚メディアを対象とメディア部門とコミック部門である。メディア部門はそのテーマ性、社会性の高さから話題を呼んだ米国の映画『第9地区』(監督ニール・ブロムカンプ)となった。『四畳半神話大系』、『宇宙ショーへようこそ』などのアニメ、『仮面ライダーW』、『侍戦隊シンケンジャー』などの特撮などを退けた。2004年以来の海外作品である。
 コミック部門は荒川弘さんの『鋼の錬金術師』(スクウェア・エニックス)。2001年の連載開始以来、多くのファンを獲得してきた本作は、2010年に10年にわたった物語を完結させている。

 また、ノンフィクション部門は、7年間にわたり小惑星の探査を行った「はやぶさ」の地球に帰還を選んだ。幾度もの危機を乗り越えた2010年6月の地球帰還は、多くの人に感動を与えた。2011年からは複数の映画化など、メディア展開も進んでいる。
 海外長編部門は『異星人の郷』(著者:マイクル・フリン、訳者:嶋田洋一)、海外短編部門は『月をぼくのポケットに』(著者:ジェイムズ・ラヴグローヴ、訳者:中村融)が、ノンフィクション部門は鹿野司さんの『サはサイエンスのサ』(早川書房)である。アート部門受賞の加藤直之さんは、4回目となる星雲賞受賞である。

 星雲賞は、例年は夏に開催される日本SF大会会期中の星雲賞授与式にて、発表されている。今年はやや変則的な大会開催前の事前発表となった。
 9月3日、4日に静岡県コンベンションアーツセンター「グランシップ」で開催される第50回日本SF大会「ドンブラコンL」にて、本年の授与式が行われる。

第42回星雲賞受賞作

[日本長編部門(小説)]
『去年はいい年になるだろう』
著者: 山本弘
発行: PHP研究所

[日本短編部門(小説)]
「アリスマ王の愛した魔物」
著者: 小川一水 早川書房「SFマガジン2月号」掲載

[海外長編部門(小説)]
『異星人の郷』
著者: マイクル・フリン 訳者: 嶋田洋一
発行: 東京創元社

[海外短編部門(小説)]
「月をぼくのポケットに」
(『宇宙開発SF傑作選 ワイオミング生まれの宇宙飛行士』(ハヤカワ文庫SF)収録)
著者: ジェイムズ・ラヴグローヴ  訳者: 中村融
発行: 早川書房

[メディア部門]
『第9地区』
監督: ニール・ブロムカンプ
製作総指揮: ケン・カミンズ、ビル・ブロック
製作 :ピーター・ジャクソン、キャロリン・カニンガム

[コミック部門]
『鋼の錬金術師』
著者:荒川弘 発行:スクウェア・エニックス

[アート部門]
加藤直之

[ノンフィクション部門]
『サはサイエンスのサ』
著者: 鹿野司 発行: 早川書房

[自由部門]
探査機「はやぶさ」(第20号科学衛星MUSES-C)の地球帰還
関係者:独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 JAXA

第50回 日本SF大会 ドンブラコンL
http://www.sf50.jp/ 《animeanime》