ここ1、2年、米国市場で日本アニメのDVDが売れないことが現地を中心に問題になっている。実際に、今年になって米国の市場シェア第3位のジェネオン エンタテイメントUSAが北米市場からの撤退を決めたのは、こうしたマーケットを覆う不況のためである。また、同社以外の多くのアニメDVD関連企業の経営は厳しい。
 先頃、アニメ製作会社GDHの石川真一郎社長は、政府の審議会で自らの肌感覚として、米国系のアニメディストリビューター(流通会社)は、1社を除き全滅状態と語っている。

 こうしたアニメDVDビジネスの不振の理由のひとつが、違法なファイル交換ファンサブの蔓延であることは現在では多くの人が考えるところだ。それはおそらく正しいだろう。
 しかし、ここではファンサブの是非には触れない。ここで問題にしたいのは、米国市場の現在のアニメDVD市場の大きさである。

950億円対450億円。
 この数字が何かというと、2006年の日本国内のアニメDVD売上高と米国のアニメDVD売上高である。つまり、米国のアニメDVD市場は、日本の半分程度の大きさがある。さらに米国でのアニメDVDの実質小売価格が日本の半分程度という現状を考えると、出荷枚数ベースでは米国は日本とほぼ同じである。
 近年日本のアニメDVDの市場が緩やかに拡大しているのに対して、米国のアニメDVD市場が急速に縮小している。そこで少し過去に戻って、2003年で見るとこの数字は、日本の824億円に対して米国は5億5000万ドル、およそ600億円と日本の市場規模にひけを取らない規模になる。

 日本でも米国でも、米国は日本アニメの市場が小さいからビジネスが違うと論調がまかり通っている。それを前提に議論が始まる。市場が小さいからマニアは少ない、だから高価なDVDは売れないという具合だ。
 しかし、アニメは日本でも米国でもニッチな市場なのだ。日本市場との比較で米国のアニメDVD市場は決して小さくない。そして減少したとはいえ米国内には、依然日本の市場の半分近く、売上高でおよそ400億円のDVD市場がある。
 これだけアニメのDVDを買わない理由が並べられるなか、依然400億円ものアニメDVDが米国で売れている。

 さらに注目したい数字がある。ICv2によれば、2006年にアメリカで発売されたアニメDVDのタイトル数は759タイトルである。一方、同じ年の日本のアニメDVDの発売タイトル数は日本レコード協会の発表で2421タイトルである。(このなかには海外アニメーションも含まれるがその割合は非常に小さい)
 つまり、日本では950億円の市場を2千数百タイトルで分け合っているが、米国では450億円の市場を759タイトルで分け合っている。1タイトル平均の売上高は米国のほうがかなり大きいはずだ。

 また仕入れ価格も考えてみたい。制作費のほとんどをDVDの売上に依存している日本のマニア向けのアニメDVDの制作費は1話少なくとも1000万円、おそらく1500万円程度と考えられる。
 一方、アメリカ国内での日本アニメのライセンス料は、先に話題を呼んだアニメニューズネットワークのジェスティン・セバキス氏の論説によれば、現在は最盛期7万ドルの半分以下であるという。そうすると日本円で350万円程度、ここに吹替えコストなどがプラスされるとしても、作品の調達コストは日本の半分程度だろうか。

 もう一度まとめると、米国市場は、日本の半分弱の売上高規模、日本の1/3の発売タイトル数、日本の半分のコストとなる。日本のアニメDVD市場も苦しいとされるが、この数字をみると米国のアニメDVDの流通業者は日本のアニメの製作委員会やDVDパッケージ会社よりは、比較的恵まれた条件に思える。
 そこで問題なのは、ではなぜ利益が出ないかだ。日本よりも調達コストが低く、日本よりも1タイトル当りの売上高が大きいとすれば、利益率に問題があることになる。おそらく流通コストや小売店のマージン、販売単価(日本よりかなり低い)が問題だと考えられる。
 アニメDVD企業の不振は、ファンサブばかりが問題にされる。勿論ファンサブは、極めて大きな問題である。しかし、ファンサブの問題が注目される陰で、米国マーケットの構造にも少なからぬ問題がある可能性を見落としていないだろうか。

 アニメDVD市場の売上不振を考えるなかで、なぜ本来、日本市場よりもコスト的に有利にあるはずの米国市場で利益があがらないのか、アニメDVDを買っている400億円市場の消費者はなぜ今でもアニメDVDを買うのかの議論はもっとあってもよいはずである。
 そこから現在問題が多いとされる米国のアニメDVD市場の問題の解決の糸口がみつかるはずだ。 《animeanime》