byミルミル[編注]このレビューに中には『河童のクゥと夏休み』のラストシーンへの言及があります。映画未見のかたは、その点をご了解のうえお読みください。7月28日、「河童のクゥと夏休み」が公開になった。「クレヨンしんちゃん オトナ帝国の逆襲」などで知られる原恵一監督期待の新作とあって、観客は親子連れの他、カップルや1人で訪れるアニメファンも多かった。驚いたのは、この2時間18分という長丁場で子供たちが飽きないことである。シリアスな展開になる東京タワー前まで、しばしば場内には子供たちの笑い声が響いた。さすがしんちゃんで子供たちの呼吸をつかむのが上手い原監督ならではである。平和な家庭に突然客が訪れ、てんやわんやになる、という設定は昔からよくある。宇宙人あり、恐竜あり、デジモンあり、平安町の貴族の子供あり。それら珍客の中で際立った印象を残すのが、主人公のクゥの礼儀正しさだ。ちょっと耳に懐かしいなまり言葉で、きちんと膝をつき手をつき、何度も「おまえ様たちには世話になった」と頭を下げる。ほんとはTVに出たくなんかないのに、「困ってるんだな。おれのことでこれ以上迷惑はかけられねえ」と承諾する。礼儀正しく、そしてけなげだ。不思議なことに、膝をついて挨拶をされると、される側も膝をついて同じく頭を下げる。礼儀正しさは相手からも礼儀正しさを引き出す。河童の子供はそれができるのに、人間の側は携帯カメラを向けるばかり。犬の「おっさん」が車にはねられても、誰も助けようとせず、取り囲んで携帯で撮影を続ける無神経さが逆に生々しい。クゥの物語には、世界の存亡にかかわる秘密はなく、戦うべき敵も存在せず、都市が破壊されるようなダイナミックなシーンもない。ただひと夏、河童の子供が家に来て、そして別れが訪れる。それだけのこと。それだけなのに、何度も何度も涙がこぼれるのは、クゥの心がまっすぐ観るものの心を打つからだ。悲しみも喜びも飾り気なく、大きな黒い目が涙を浮かべるごとにこちらも涙があふれてくる。映画を観た子供たちにお願いしたい。うっかり道で何かを拾ったら…子猫でも宇宙人でも河童でも、家に招きいれた以上は守る責任があることを知って欲しい。あなたの家を訪れた客は、あなたの客、広い世界の中で、あなたの家を選んで訪れた客なのだ。おろそかにせず、せいいっぱいもてなして欲しい。そしてもし自分が客の立場になったら、クゥの礼儀正しさを思い出して、「お世話になります」「ありがとうございます」と挨拶しよう。今の日本が失ったものが、河童の住める自然だけでなく、古式ゆかしい立ち振る舞いだなんて言われるのは恥ずかしい。最後、新天地やんばるに移ったクゥは、川の中で再び頭を下げる。「この土地の神様。おらが生きていけるだけの魚を捕ることを許してください」そしていつか、仲間の河童を探す旅に出ようと決意する。今は別れた、康一一家に会うことを夢みる。「…父ちゃん、おら、人間の友達ができた…」オトナ帝国に涙した大人の皆さん、ぜひぜひ、小さなお子さんと見にいって欲しい。クゥといっしょに、笑って涙すること請け合いである。ラスト 沖縄のキジムナーとクゥの会話。「お世話になります。キジムナーさん」「おれのことは…そうだな、「おっさん」と呼んでくれ」ここでまた泣いてしまったあなた、きっと私と心が通じています。「おっさん」、かっこよかった…。河童のクゥと夏休み公式サイト /http://www.kappa-coo.com/著者の紹介 ミルミルカードからドール、セル画、アンティークまで幅広い知識も持ち、日々コレションを続けている。また、おたく分野の株式投資を得意としており、著書「萌える株式投資」(ベストセラーズ)ほか、雑誌記事の掲載も多数ある。趣味で作る同人誌も人気が高い。ミルミルのオタクな株式投資blog /http://blog.livedoor.jp/mujinakko_2009/
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