川元利浩の全仕事を振り返る本:『Toshihiro Kawamoto Artworks The Illusives I&II』 | アニメ!アニメ!

川元利浩の全仕事を振り返る本:『Toshihiro Kawamoto Artworks The Illusives I&II』

レビュー 書評

 1970年代に荒木信吾氏という人気も実力も備えたアニメーターが、アニメファンから高い支持を受けていた。80年代のアニメブームでは、安彦良和氏や美樹本晴彦氏、金田伊功氏などがそうした存在だっただろう。
 では、90年代後半から2000年にかけて、日本を代表するアニメーターは誰だろうか。多くの人が迷うことなく、その1人に川元利浩氏の名前を挙げるだろう。

 川元氏の絵の素晴らしさをここで説明することは省こう。判っている人には、説明するまでもないし、もし不幸にしてその名前を知らなければ『ウルフズレイン』や『カウボーイビバップ』を観てもらうほうが、つたない説明より何倍も確かに伝わるはずだからだ。あのシャープで凄みのある絵を描く人といえば判るに違いない。

 3月29日に発売された『Toshihiro Kawamoto Artworks The Illusives I&II』は、この川元利浩氏の過去20年間に手掛けた版権イラスト作品を中心に、原画、キャラクター設定、修正集までを紹介するものだ。
 主要作品に加えて大作の陰になりがちな数多くの作品を集めることで、同氏のこれまでの仕事の全貌が見えてくるように出来ている。

 さらに、単なる画集にとどまらないのは、それぞれの作品に川元氏自身によるコメントがあり、彼と仕事をした多くの人々のコメントとインタビューが掲載されていることである。 
 そうした人々の声を聞くことによって、紹介された絵がより多くのものを語りだす。単に絵を紹介するだけでない、川元氏の20年間の仕事が何だったかを記録するまさに仕事集といえる本なのである。

 また、この画集の優れているのは、一般にはよく知られた代表作『Cowboy Bebop』や『機動戦士ガンダム0083』といった作品だけでなく、OVA作品やゲーム作品、ビデオのパッケージから小説のイラストまでほとんど全ての川元氏の作品を網羅しているところにある。
 川元氏の仕事は、どちらかといえば『ガンダム0083』や『Golden Boy』、『Cowboy Bebop』といったキャラクターデザインを手掛けた作品に日が当たることが多い。

 しかし、今回、比較的初期に描いた他のアニメーターのキャラクターを使った数々の版権イラストが面白い。例えば、この本がなければ、川元氏がこんなにも多くのファーストガンダムの版権を描いていたと、多くの人は知らなかったであろう。
 また、『宇宙戦艦ヤマト』から『攻殻機動隊』まで、その活躍の意外な広さに驚かされるに違いない。そして、川元氏はそれらのキャラクターを十分に生かしたうえで、さらにその上に確実に+αを表現しているのである。

 川元利浩氏のアニメーターの仕事は、この20年で終わったわけではない。2000年以降の『劇場版カウボーイビバップ』や『ウルフズレイン』の絵の繊細さと凄みに驚かされるばかりである。
 この先20年、さらにこの絵が進化したら一体どうなるのだろうか。その時には、また新たな仕事集が必要とされているに違いない。それが出来るまでは、この本が川元利浩を知る一番の本であり続けるであろう。

《animeanime》
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