『オンライン漫画の配信事業事情』セミナー | アニメ!アニメ!

『オンライン漫画の配信事業事情』セミナー

 近年、国際交流基金が力を入れている事業に漫画文化の世界交流がある。国際交流基金は、これまでもアジア女流漫画家の交流や中国漫画の紹介などを手掛けて来た。今回のテーマとして取り上げているのは、『オンライン漫画配信』の現状と将来である。セミナー全体は、1

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 近年、国際交流基金が力を入れている事業に漫画文化の世界交流がある。国際交流基金は、これまでもアジア女流漫画家の交流や中国漫画の紹介などを手掛けて来た。今回のテーマとして取り上げているのは、『オンライン漫画配信』の現状と将来である。セミナー全体は、1日目の配信ビジネスを中心としたものと、2日目の漫画家の創作活動に関するセミナーの2部構成になっている。
 今回は、日本、韓国、中国のオンライン漫画配信ビジネスを紹介した第1部のみ参加した。セミナーの中心は、実際にオンライン漫画配信ビジネスを手掛けている各国の経営者によるそれぞれの報告と質問を中心としたパネルである。

 セミナーで一番印象深かったのは、オンライン漫画の配信ビジネスの進展であった。正直、昔のオンライン漫画しか知らなかったので、画像の美しさとその広がりにはかなり驚かされた。例えば、日本のイーブックスは、半年間にオンラインで『北斗の拳』を10万部以上売ったとしている。韓国では10社の専業業者があり、4000種類4万冊の漫画を提供している。今や、それが韓国伝統の貸本屋の事業の脅威になっている。そして、何よりもその成長率が高い。現在は市場規模の小さな世界だが、オンライン漫画という存在が広く知られ、今の成長が続けば今後期待できる市場規模は計りしれない。
 
 オンラインでコンテンツを配信する際に、必ず問題になってくる課題が幾つかある。それは、消費者が新しい媒体に違和感なく馴染めるのか、品質が維持出来るのか、設定価格はどうか、セキュリティーの維持はどうかいったものである。それぞれについて乗り越えなければいけない問題は多いのだが、全体を聞いた限りではいずれも克服可能に思えた。
 漫画をPC画面で読むことについては、日本と韓国がPC画面上に既存の漫画の見開きを展開している一方で、中国は動画、音声を組み合わせていたのが目立った。漫画の歴史が短い中国のほうが新たな技術に馴染みやすいのかもしれない。また、韓国のチュン氏が紹介した漫画の1コ1コマを分解してスクロールで見せるという方法も興味深かった。チュン氏によれば、このスクロール式は利用者に評判がいいということである。
 セキュリティーについては、日本の鈴木氏、中国の梁氏がその対策に自信を見せたのに対して、チュン氏は各国の物価の相違がある以上著作権を破る試みは必ずある、既にオンラインには不法な漫画コンテンツが溢れていると指摘し、今まで以上の対策が必要と述べた。
 
 また、同じオンライン漫画配信ビジネスであるが、各国の状況によりその発生から成立までに大きな違いも見られた。中国では、近年のインターネットの急激な普及と行政によるコンテンツ産業の支援が大きいとしている。
 韓国では、世界的にみても高いインターネット普及率と現在の漫画ビジネスの中心が貸本ビジネスであることが特徴である。このため韓国では本を借りることに抵抗感がない。一方で、出版社はこれまでの少ない利益から新たな収益確保する手段にしたいといった事情がインターネット漫画を促進させている。
 日本では、伸び悩む漫画市場の新たな展開であると同時に、現在ある資産の再利用とした意味合いが強いのように見えた。日本の現在の強みは、戦後60年に亘り蓄積された豊富な日本の漫画の量である。中国や韓国の事業者は、こうした日本のコンテツをいかに取り込むかが課題であるという。そうした中に、東アジアにおける漫画ビジネスの協力の可能性があるのかもしれない。

2月19日 会場:国際交流基金フォーラム
主催:国際交流基金
パネリスト:梁鋼氏(通力計算机技術(上海)有限公司社長)
      チュン・ヒウン氏(イーコミックスメディア副社長)
      鈴木雄介氏((株)イーブックスイニシアティブ社長)
       中野晴行氏
司会:木村忠夫氏(日本漫画学院長)

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