「センコロール」宇木敦哉監督、立命館大学で語る-後編 | アニメ!アニメ!

「センコロール」宇木敦哉監督、立命館大学で語る-後編

インスピレーション重視の漫画的ストーリー構築

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インスピレーション重視の漫画的ストーリー構築

 一方、ストーリー構築について、宇木監督は、トレーラー制作時は、物語の仔細や、設定の全てを思い浮かべる事が困難だったため、竹内氏と相談し、頭の中で瞬間的に表れたイメージを中心に集めたものをトレーラーにしたことを明かした。
 これを受けて、竹内氏はこのプロセスを非常に漫画家的だったと、かつてコミック雑誌編集者だったときの自身の経験を踏まえつつ指摘。本編制作時も、インパクトの強いシーンを「パっ、パっと思い浮かべる」という作業からはじまり、それら一連のシーンを如何に物語としてつなげていくかを考えるのが制作を進めていくうえで重要だったと当時の状況を述懐した。

 このストーリー構築工程について、岩山氏は、「通常のアニメ制作においては世界観や、設定など細かく決定してからストーリー構築に入るとのが一般的。もし同じような形で制作にはいったら今のような形の『センコロール』は作れなかったのではないか」と、『センコロール』独特の制作スタイルを改めて強調した。
 一方、宇木監督は、『センコロール』の「いきなり世界感に投げ込まれる」物語冒頭の雰囲気を「意図的に演出」したことを明かし、 「世界観を説明することに時間を費やすよりは物語を語る選択した」とその理由を語った。これについて竹内氏は、最近の作品はあまりにも丁寧に設定や世界観を説明しすぎると分析。今回のように視聴者の想像力を掻き立てる事も作品づくりでは重要であるとした。

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         (c)宇木敦哉/アニプレックス

 この後、岩上氏が、『センコロール』をプロデュースしていく過程について語った。Youtubeで作品に出会った事や、Supercell のRyoを起用した経緯、声優陣の選定などについて詳細を明かした。
 これを受けて竹内氏は、『センコロール』のトレーラーは、当初、日本よりも海外からのアクセスのほうが圧倒的に多かったと説明。作品が文字を必要としないアニメだからこそこのような現象が起きているとし、自らの才能を世界に示していくうえで、映像がこれまでにもまして重要になるとした。
 岩上氏は、竹内氏の意見に同調しつつ、これからの時代にプロデューサとしてコンテンツ産業に携わる上で、動画共有サイトなどウェブ上に存在する様々なツールを活用することの重要性を説いた。

小田部羊一教授も絶賛!宇木監督の作画能力

CAP003ver.JPG ここで、小田部羊一教授が登壇。宇木監督に作品に関わる様々な質問をした。
 「作画をはじめてからどの位の年月を経て、ここまでの作画技術を取得したのか」との質問に対し、「大学での独学から数えて3年」と宇木監督は回答。小田部氏もある程度の仕事が出来るアニメータにと成長するまでに3年がかかったということから、宇木監督も一般的なアニメータと同様の努力を積んで現在まで至っていることが明らかとなった。

 また、「作品を完成するまでにどの位かかったのか」との質問に2年半と答えた宇木監督に、ここまでのクオリティの作品がそう簡単に完成しないだろうという自身の推測が正しい事を確認し、安堵の表情を浮かべた。
 最後に、ここまでこだわりを持って、しかも一人で一般的な劇場用アニメの域まで達した作品を作り出した事に感銘の意を、しめしこれからの活躍を期待して宇木監督にエールを送った。

 最後に、いい作品をつくりあげる条件として、限りないこだわり、情熱、そして心から伝えたいメッセージが必ず必要だと竹内氏は指摘。『センコロール』も公開ギリギリまでどこかの箇所がわずかながらに変化している点をあげ、そのようなこだわりは宇木監督にも顕在である証左とした。
 この後、質疑応答に突入。予定時間を大幅にオーバーしての対応でもまだ質問は尽きず、シンポジウム終了後もしばらくは、宇木監督、竹内、岩上両プロデューサーが学生からの質問攻めにあう大盛況ぶりだった。

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         (c)宇木敦哉/アニプレックス

 10月28日にはDVDがリリースされる予定だ。完全生産限定版にはその後について描かれた宇木監督描き下ろしの漫画が同梱される。

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『センコロール』 公式ホームページ /http://www.cencoroll.com/

アニプレックス /http://www.aniplex.co.jp/
シンク /http://www.think.ne.jp/
立命館大学映像学部 /http://www.ritsumei.ac.jp/eizo/
動画革命東京 /http://www.anime-innovation.jp/index.html
《animeanime》
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