「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」富野由悠季と出渕裕がトーク 若者に宮崎駿を超えろとエール!【新潟国際アニメーション映画祭】 | アニメ!アニメ!

「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」富野由悠季と出渕裕がトーク 若者に宮崎駿を超えろとエール!【新潟国際アニメーション映画祭】

第二回新潟国際アニメーション映画祭にて『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア(以下逆シャア)』が上映され、富野由悠季監督とメカニックデザイナー出渕裕氏が上映前に登壇し、作品にまつわるトークを繰り広げた。

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第二回新潟国際アニメーション映画祭にて『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア(以下逆シャア)』が上映され、富野由悠季監督とメカニックデザイナー出渕裕氏が上映前に登壇し、作品にまつわるトークを繰り広げた。

左から富野由悠季監督、出渕裕氏

『逆シャア』は、1988年に公開された作品で、1979年に放送された『機動戦士ガンダム』に登場した宿命のライバル、アムロとシャアの最終対決を描いた作品だ。出渕氏と富野監督が公の場でトークショーを行うのは『勇者ライディーン』のイベント時以来だという。

本映画祭は、長編アニメーションに特化した世界でも珍しい映画祭だが、富野監督は長編アニメーションに対してどう思うかとの質問に対し、「自分は仕事柄スポンサーの言うことを聞くタイプ。短編のことはわからないがあまっちょろいものじゃない。手塚治虫の15分の短編『ジャンピング』は唯一覚えている短編。映画もアニメも作り手の好きにやったらいいものにならない」と持論を展開。

話はまず『逆シャア』についてではなく、マンガ、アニメの歴史についてから始まった。富野監督は、手塚治虫がマンガのベースを作り、最近亡くなった鳥山明が時代を変えた、そこで進化が終わるかと思いきや『ONE PIECE』が登場、近年はマンガが文芸作品を超えようとしていると力説。一方、アニメの世界では宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』がアカデミー賞を受賞するなど時代が変わっている、これから映像を志す人は宮崎駿を超えないといけないんだと語る。

また、富野監督は出渕氏をアニメでは活躍しやすいタイプと評する。メカニックデザイナーではほかにも大河原邦男氏や永野護氏などが一芸に秀でているが、これほど色々なことができるデザイナーは他にはいないと話す。出渕氏本人は「敗戦処理係」と謙遜するが、アニメスタッフとしての信頼の厚さが伺えた。

富野監督は、手塚治虫の率いた虫プロダクションに所属していたことがある。富野監督自身は「自分は手塚カラーに染まっていない」と言うが、出渕氏は「富野さんのラフ画を見ると手塚さんのことが好きなんだな」と思うことがあるようで、面影のある絵を描くそうだ。

話はいよいよ『逆シャア』に移る。出渕氏は『逆シャア』はシャアを再発見する作品だという。『機動戦士Ζガンダム』にクワトロ・バジーナとして登場し良い人のように描かれたが、実際にはシャアはサイコパスなのだと語り、富野監督も同意。クワトロは主人公を導くポジションになっているが、本当のシャアはいつもウソばかり言っているのだという。また、『逆シャア』で富野監督が描きたかったのは、ニュータイプやサイコフレームといった超常的なものではなく、生々しい人間だったと出渕氏は言う。

出渕氏は、あまり指摘されないが富野監督は編集が上手いと語る。それに対して富野監督は「庵野(秀明)には編集が下手だと言われた」と会場の笑いを誘った。だが、富野監督も冒頭を見直したら、編集が上手くて自分でもビックリしたという。富野監督は、長編映画の面白さは映像のリズム感で物語を語れるところだという。出渕氏も、テレビシリーズのときはもう少し物語の段取りをわかりやすく作っているが、『逆シャア』は段取っておらず、キャラクターの出し方が本当に上手いという。ただ、戦闘シーンが多いからもう少し切ったほうがいいとも言った。富野監督も、本当はあと2分切りたかったと語った。

また、『逆シャア』の登場人物でとくに生っぽい存在は女性キャラクターだと出渕氏は言う。富野監督も映画を演出する上で考えたのは、女性をしっかり見せることだったと語る。出渕氏は、シャアとナナイがガウンを着ているシーンについて触れ、ここが描きたかった部分なのだろうと言うと、富野監督は、そのシーンは演出家の作為が出すぎていると反省の弁を語った。
出渕氏は、『逆シャア』について背景のキャラクターもきちんと芝居して生活感が出ているので、そういうディテールにも注目してほしいと話した。

最後に、出渕氏はまたこういう機会に富野監督と話したい、富野監督のことが大好きだからと告白。

富野監督は、これからアニメ業界を目指す若者に向けて、アメリカ映画界もアニメーションはディズニーだけじゃないと気付いた、宮崎駿監督を超えるくらいの気持ちでがんばってほしいとエールを送った。そのためには、同映画祭で高畑勲監督の特集上映もあるので、そういう映画を見て勉強してほしい、そして、自分まだ引退していないと次回作への意欲を見せてトークショーを締めくくった。

(C)創通・サンライズ

《杉本穂高》
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