【京伴祭2023特集vol.4】「音楽と観客がひとつになれる場所」劇伴作家・岩崎琢が語るライブ企画の困難とやりがい | アニメ!アニメ!

【京伴祭2023特集vol.4】「音楽と観客がひとつになれる場所」劇伴作家・岩崎琢が語るライブ企画の困難とやりがい

9月16日に京都の梅小路公園にて開催される『京伴祭 -KYOTO SOUNDTRACK FESTIVAL- 2023』より、劇伴作家・岩崎琢氏のインタビューをお届け。

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京伴祭出演者・岩崎琢
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アニメの劇伴が主役の野外音楽フェス『京伴祭 -KYOTO SOUNDTRACK FESTIVAL- 2023』が9月16日、京都の梅小路公園にて開催される。

世界的人気の日本アニメだが、その映像を劇的に盛り上げる劇伴は重要な要素でありながら、それに注目した音楽イベントが開催されてこなかった。「作品の良さをさらに引き出す力を持つこの音楽たちの素晴らしさを、世界中にいるアニメを愛してくれている人たちに届けたい」という思いで、2022年9月の無観客オンライン配信となった「エピソード0」と、2023年4月、東京・国立代々木競技場第二体育館にて開催された『東京伴祭』を経て、ついに、初期の構想だった京都の野外で有観客開催が実現。さらに、昨年から参加する3名に加え、新たに3名の劇伴作家が加わりパワーアップした。

アニメ!アニメ!では、今回参加する6名の劇伴作家に、劇伴の魅力や京伴祭に対する思いを聞くインタビューを敢行。今回は、京伴祭初参加となる、『ジョジョの奇妙な冒険 戦闘潮流』や『文豪ストレイドッグス』など、数々の作品のサウンドトラックを手掛けてきた岩崎琢氏に劇伴に対する考えやライブへの考えなどについて語ってもらった。

[取材・文:杉本穂高 協力:懐刀株式会社]

<岩崎琢 プロフィール>
幼少の頃より作曲の手ほどきを受け、神奈川県合唱曲作曲コンクール日本現代音楽協会作曲コンクール等で賞を取る。東京芸術大学作曲科卒業後、作曲家、アレンジャーとして仕事を始め、現在ではヴォーカルアルバムプロデュースから劇伴のサウンドプロデュースに至るまで幅広い活動をおこなっている。


京伴祭参加の理由は「林ゆうきのオファーだから」


――岩崎さんは今回が初参加となりますが、劇伴による野外フェスの話を最初に聞いた時、どうお感じになりましたか。

林ゆうきくんとは少し前から仲良くさせていただいていて、良い人だなと常々感じていました。そのため、彼から電話で「京伴祭に出演してくれませんか」というお誘いを受けた際、友人からのオファーを断る理由はなく、快く引き受けました。

――みなさん、林ゆうきさんに対する評価が非常に高いことが伺えます。

その評価は、業界内においてさまざまな人が存在する中で、林くんは誰よりもフレンドリーで平等に接してくれるからです。こちらも誠意をもってお付き合いさせていただかないとならないと感じさせる人物で、僕も業界内で他にも親しい人々はいますが、別の人からのオファーに対して受け入れるかどうかは分かりませんし、何よりも人柄が非常に重要だと思います。

――劇伴作家として、野外フェスというステージはどのように感じられるのでしょうか。

正直に言うと、無茶だと感じました(笑)。これまでの先例がなく、サウンドトラックの作曲家がライブを行うということ自体、非常に珍しいことです。僕も以前に何度か経験はありますが、ライブを企画するのは非常に困難です。

作曲家は通常、孤独に音楽を制作することが多いため、外部で何かを行おうとする際には、周囲の協力者がどれだけいるか、権利関係を含めて多くの問題が発生します。これらを乗り越えて大規模なフェスティバルを計画できるのは、彼の人徳だと思います。

『グレンラガン』は自分には向いていないと思っていた


――岩崎さんが劇伴に携わるようになった経緯はどのようなものでしょうか。

きっかけは20代の頃に歌のアレンジをしていて、その過程で『ゲゲゲの鬼太郎』や『るろうに剣心』などのキャラソンの仕事もするようになったことです。その流れで、『るろうに剣心』の音響監督の方が劇伴も手がけてみないかと声をかけてくださいました。そして、それが『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 追憶編』での仕事でした。

当初は正直、お金のためもあったんです。ただ、自分ならばこのジャンルにおいて一定のスキルを発揮できるだろうという自信もあったため、安易に取り組むことにためらいもありました。

アニメのサウンドトラックの仕事を積極的に選んだわけではなく、時代背景も影響していて。当時、特異なリズム感が求められ、通常の作曲家よりもその点に秀でていたこと、そしてオーケストレーションという異なる要素を組み合わせることができたため、需要が高まったのだと思います。とはいえ、挑戦してみると楽しい経験でした。

――ご自身のキャリアでターニングポイントとなった作品はありますか。

『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 追憶編』は、僕のキャリアにおいて重要な作品であり、それなしでは今の自分は存在しないでしょう。ただ、長年やっているとあまり自分には向いていない作品をお願いされることもあるんです。そのような作品を受けた際、どのように対応するかが非常に重要だと思います。

たとえば、『天元突破グレンラガン』は、僕には全く向いていないと感じました。当時、自分のスタイルに合う曲を制作することに重きを置き、アニメの一部としての曲を作ることに拒否感を抱いていました。そのため、ロボットアニメの音楽にラップなどの要素を取り入れることで、自分のアプローチを変えることにしました。

割と自分は、劇伴作家であるという意識よりも、表現者としての意識の方が強いかもしれません。劇伴はもともと、劇の伴奏を指します。伴奏というと、歌手や映像を支える程度のイメージかもしれませんが、僕はそうした音楽を制作するつもりはなく、カウンターパンチのように刺激的な音楽を制作するつもりで取り組んでいますね。

――単純に絵に合わせるだけの音楽ではなく、独立した表現として制作しているということですね。

その通りです。音楽やはり表現ですから。表現になり得ないものを制作し続けても、音楽を追求する意味はないと考えています。

ライブは音楽と観客がひとつになれる場所


――岩崎さんは個人でサウンドトラックのライブを開催した経験がありますが、ライブを行うきっかけは何だったのでしょうか。

曲がもったいないと思ったからです。サウンドトラックはアニメが放送終了すると忘れ去られてしまうことが多いため、もし誰かが再利用しないならば、自分でライブを行うことを考えました。一部の作品では、企業がコンサートを計画し、資金を提供するケースも増えてきましたが、僕にはそうした話があまり寄せられなかったので。そのため、自分でライブを開催することにしましたが、やってみたら大変でしたね。

――ライブを企画するのはどの点が難しいのでしょうか。

通常、アニメは音楽に合わせて制作されますが、ライブでは映像を音楽に合わせる必要があるため、編集作業が必要ですし、許諾を取得するのも困難です。また、集客も大変です。自分で行わなければならない部分が多く、体制を整えきれなかった部分もありました。ただ、良い経験になりました。

機会があれば、再び自分のライブを行いたいと思いますが、現在はフリーランスで事務所に所属していないため、企画から実行まですべて自分で行う必要があり、当面は作曲に専念するつもりです。京伴祭のような大規模な野外フェスティバルは、会場も広大ですから、相当なパワーと人的資源がないとできないことなんです。

――そんな大変な京伴祭への意気込みと、来場予定の皆様へのメッセージをお願いいたします。

ライブは、音楽と観客がひとつになれる素晴らしい場所だと思います。そのためには、僕たちパフォーマーも音楽と一体にならなければならないのですが、その音楽と一体になっている姿を見ていただきたいし、皆様に素晴らしいパフォーマンスをお届けしたいと思っていますので、どうかお楽しみにしていてください。



京伴祭 -KYOTO SOUNDTRACK FESTIVAL- 2023

【日程】2023年9月16日(土)13:00開場/14:00開演/18:45終演予定
【会場】梅小路公園
【料金】プレミアムチケット 1万1000円(税込)/一般チケット 8800円(税込)/オンライン配信チケット 5500円(税込)

※未就学児不可
※小学生無料
※中学生以上チケット必須
※本イベントの座席につきましては、椅子のご用意はなく、エリアごとに区分けさせていただく予定となります。当日はレジャーシート等をご持参いただきお楽しみください。

【共催】懐刀、京都国際マンガ・アニメフェア(京まふ)
【制作】グラウンディングラボ
【運営協力】ボスコーポレーション / サウンドクリエーター
【総合プロデューサー】島津真太郎
《杉本穂高》
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