【インタビュー】アニメ業界の”システム”を再構築するーーー「dアニメストア」×GANMA!キーマンインタビュー | アニメ!アニメ!

【インタビュー】アニメ業界の”システム”を再構築するーーー「dアニメストア」×GANMA!キーマンインタビュー

アニメ制作会社は慢性的な人材不足にも陥りかけており、新たなシステムを構築するタイミングにも差し掛かっている。『おとなの防具屋さん』を配信するコミックスマートの福留 俊氏、「dアニメストア」の松田 大洋氏にアニメ業界のこれからの在り方について話を伺った。

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アニメをさまざまなユーザーが楽しむコンテンツとなった一方で、毎クールに約70本以上の作品が世の中に提供されている。同時にアニメ制作会社は慢性的な人材不足にも陥りかけており、新たなシステムを構築するタイミングにも差し掛かっている。

今回マンガアプリ「GANMA!」で連載中の人気作品『おとなの防具屋さん』を配信するコミックスマートの福留 俊氏 、2019年3月よりオリジナルストーリーを独占配信している「dアニメストア」の松田 大洋氏にアニメ業界のこれからの在り方について話を伺った。[取材・構成:森元行]

――まずはお二人の自己紹介をお願いします

福留
コミックスマート 経営企画部でアニメプロデューサーを担当している福留と申します。前職はアニメ制作会社で新卒から約9年間務めていました。制作進行から脚本、プロデューサーなどを経験させていただき、昨年コミックスマートのアニメ事業にジョイン致しました。

松田
ドコモ・アニメストアで営業企画を担当しています。平たく言うと「dアニメストア」で配信しているアニメの編成を組んだり、権利元様に掛け合って作品をお預かりして配信していくという仕事をしています。ドコモ・アニメストア以前は本社のNTTドコモに勤務していました。

――NTTドコモ時代はどのようなお仕事をなされていたのですか


松田
1999年にNTTドコモに入社しまして約20年くらい働いています。その間、法人営業や、海外事業に携わったり、ドコモ・アニメストアに来る前は「mmbi」という関連会社で「NOTTV」というスマホ向けのテレビ放送局に関わっていました。

――改めて「dアニメストア」はどういうサービスか、簡単に伺ってもいいですか

松田 
「dアニメストア」は2012年7月にオープンして今年で6年目となります。サービスの基本的な中身はずっと同じですが、今では月額400円(税抜き)で2,700作品、話数換算で50,000話くらいをいつでも見放題というサービスにまで成長してきました。主にはスマートフォンでの視聴が多いですが、最近はPCやテレビ等での大画面視聴も増えています。日本最大級のアニメ専門配信サービスですので、かなり濃いアニメファンが集うサービスになってきました。

――映像配信サービスはいろいろありますが、「dアニメストア」の強みは

松田
これだけの数の作品数を業界最安値で見放題配信しているサービスは、国内・国外でもなかなかないんじゃないかなと。シンプルですが一番重要な部分を抑えられているところが、多くの方に利用していただけている理由だと思います。

――「dアニメストア」を利用できるのはドコモユーザーのみでしょうか

松田
いえ、キャリアは関係なくどなたでも利用いただけます。

――「ドコモユーザーじゃないから使えない」と思ってる人もいそうです

松田
頭に「d」とついてるので、どうしても誤解を受けがちなのですが、誰でも使えます。

――ありがとうございます。「GANMA!」について教えてください

福留 
2013年に提供開始したマンガアプリサービスです。現在1,100万ダウンロードで連載中の作品は基本的に無料で全話読めます。「マンガ家の職業価値を上げる」という企業ミッションの元、もともとの思想として「マンガ家家の育成」というところから始まっていますので、基本的に若い作家さんを集めて育成・支援をし、その作家さんたちのオリジナルの作品を多く掲載していっているという形です。あと最近はアプリのリニューアルも行い、サブスクリプションサービス(定額サービス)もはじめました。

――サブスクリプションサービスだと何ができるのでしょうか

福留
「GANMA!」では、「連載」作品と「GANMA!」作品や他の版元さんの完結した作品を載せている「完結」作品とに分けています。通常でも「連載」作品はすべて無料で見られるようになっていますが、サブスクリプションだと「完結」作品も含めた全作品を月額680円で読み放題ですよ、という形をとっています。

――「dアニメストア」でいう「テレビ連動」と「過去アニメ」のような感じですかね

福留 
まさにそういう形です。

――プロダクションI.Gでアニメ制作をやっていたと思うのですが、映像サービスやマンガアプリを運営している会社がたくさんある中でなぜコミックスマートを選んだのですか

福留
今アニメ業界はとても大きな変革期がきていると感じています。その中で自分自身、昔からITが好きだったということもあり、ITにはまだまだ世の中を変えるポテンシャルがあると考えていましたので、ITを絡めることで業界にとってプラスとなるブレイクスルーを起こせないかと考えていました。転職の軸としてIT会社で新規にアニメ事業を立ち上げているところと決めておりました。複数社お話を頂いたのですが、コミックスマートのことはあまり知らなかったです。(笑)


こうした中で、なぜコミックスマートを選んだかというと、コミックスマートが「一番この先の展開が決まっていなかった」(笑)のと代表の佐藤 光紀が「漫画業界と作家さんの環境をエコシステムから変えよう」と本気で取り組んでいて、その取り組みの一つとしてアニメ業界も同様に「新たなエコシステムを作ってクリエイターの環境を変えたいんだ!」と熱く語っていました。私自身不眠不休で働いていた事もあり「業界の環境を変えたい」という想いを強く持っていましたので。そのビジョンに共感したのと会った社員の人たちの本気度に惹かれました。

一番先の展開が決まっていなかったんですけど、その分一番これからの自由度が高く「一番熱い人達がいるからここにしよう」、「自分がジョインすることでこのビジョンも叶えられる」という気持ちが強かったですね。

――「dアニメストア」と「GANMA!」はどういうきっかけでジョイントすることになったのでしょう

福留
『おとなの防具屋さん』をいろいろなプラットフォームで配信した中で「dアニメストア」での数字がとても良かったのです。デイリーランキングで1位を取ったりと相性がいい形でした。

さらにこの取り組みを発展させるため、アニメを見る習慣がある人を多く抱えているプラットフォーマーと組んで、共に配信アニメを盛り上げながらデータを掛け合わせ、より面白いことができたらと思い「dアニメストア」さんにお話したところ興味を持っていただきました。

――いろいろなプラットフォームで配信していて、数字が良かったのが「dアニメストア」だったのですね。「dアニメストア」は話をもらったときはどういう心境だったのでしょう

松田
「お!」と思いました(笑)。ショートアニメというものがこの1年くらいの間で配信を軸に急速に数を増やしてきています。

アニメのスタンダードなフォーマットはテレビで30分放送(実尺23分くらい)が標準ですが、最近では5分とか15分くらいの、従来より短尺の作品に対するニーズが少しずつ高まってきているように感じています。とある統計を見ると、ネット視聴者は3分を越えると視聴を離脱しやすいとか、長尺作品を最後まで見る時間がないなどのライフスタイルの変化も背景にあるようです。そんな中で、ある日突然『おとなの防具屋さん』という作品が5分アニメとしては異例の視聴数を叩き出したんですね。全く予期してなかったんですね。

配信した翌日のデイリーでトップになって、その月も視聴数でトップ5くらいになる勢いでした。社内でも話題になって注目していた、まさにそのタイミングでお声がけをいただいたので、これは乗らない手はないなと思いました。

――相思相愛でしたね

松田 
そうですね。

福留 
ありがとうございます!(笑)。

――ショートアニメを観ている方はどのタイミングで観られているのでしょう? 仕事中とか通勤電車ですか


松田 
一般的に配信のゴールデンタイムは夜9時から12時くらいで、テレビのゴールデンタイムよりは少し遅いです。視聴場所で多いのは、自分の部屋や家の中など落ち着いて観る環境が5割くらいで、ショート作品であっても、その中で観ていただいているのが一番多いのかなと思います。ただ尺が短い分、手軽に観られるので、いろんな時間に分散されて観られているんじゃないかと思っています。

福留 
「dアニメストア」のほうが持っているデータの母数は多いかと思うのですが『おとなの防具屋さん』に関しては、弊社で調査してみても、視聴数は夜の9~12時とお昼の12時~1時、そして朝が多いです。昼と朝の比率が強いのはショートだからかな、と考えています。

――もともとショートアニメで放映しようと考えていたのでしょうか

福留
そうですね。ネット配信には「大きな画面」で観るものと「モバイルプラットフォーム」で観るものという2種類あると思っています。比較的長尺な作品は「大きな画面」でみるものとして向いていると思っており、その制作には数年掛かります。一方で、「モバイルプラットフォーム」では、いろいろな人が隙間時間などで手軽に視聴することができるため、ショートアニメの相性がいいのではないかと考えました。マンガでもユーザーの視聴態度が浅くインスタントな作品が見られる傾向があるというデータもありましたので、この点でショートアニメを作ろうと決めていました。

――ショートアニメのほうが制作期間も含めて、動かしやすい?

福留
小さく作れますし、制作期間が圧倒的に短いです。一般的なアニメの制作期間が約2~3年くらいなのですが『おとなの防具屋さん』のアニメ化1期のプロジェクトは、2018年4月くらいに始めて2018年10月に放送しているのでフラッシュアニメなどを別にしたらアニメとしては非常に速く作れたのではないでしょうか。これは、一社出資で制作したため、スピード感を落とさずにサクサク作れたこと、制作いただいたIMAGICA lab.さんの類稀なるご協力があったこと、が大きいと思います。

――一般的なアニメはだいたい30分の枠に収まるように構成をしなければいけないと思うのですが、ネット配信やショートアニメだとそのあたりの自由度も高そうです。今回『おとなの防具屋さん(裏面)』というタイトル名ですが「(裏面)」にはどういう想いを込めているのでしょうか


福留
ゲームの世界観を取り入れた作品ということもあり、アニメ1期をシーズン1としたら、今回はゲームクリア後(1期視聴後)の裏面(裏ステージ)に行く、という意味合いを込めました。

――尺に関しても自由度高く作っているのですか

松田 
そうですね。今まで本編を作られていた実績とアイデアをお持ちなので、全幅の信頼を置いています。

福留 
好きな尺でいいですよ、と言われたので(笑)。

――そういった制作の仕方は増えていますか?

松田 
増えていますね。ニーズや視聴環境の変化はもちろんあるのですが、制作側も予算やスケジュールの観点で作りやすいこともあるのではないでしょうか。毎クール5本から8本はジャンル問わずショートアニメがありますね。

――視聴者側も無理に30分のものを作って、べたーとした絵のものを観るよりは、尺が短くてもちゃんとしたクオリティや内容があるものを観たいですよね。総集編みたいなもので「今週総集編か…。がっかり」みたいこともありましたけど、調整ができそうですね

松田
隙間の時間を埋めやすいですね。

――「大きな画面」に移行していくという話がありましたが、視聴者のアニメを観るウィンドウが変わっていくと思うんですね。テレビ、スマホ、PCと。どのように今後のマーケットを観ていますか?

松田 
傾向としては今はスマホ視聴が一番多いです。タブレット視聴も多いんですけど、TV用のより大画面で観る割合が徐々に増えてきてるんです。デバイスやインフラが整ってきているからだと思いますが、この傾向は今後も続くと考えています。

――クオリティの高い作品を大画面で観たいというニーズはありそうですね

松田
サービスを開始してから環境も変わってきているので、プラスアルファの付加価値をつけて会員の皆さまにさらにもう一歩踏み込んだスタイルでアニメを観てもらえるような機能等を、今後考えていきたいです。

――どういう構想をされているんですか?

松田 
例えば、スマートフォンでアニメを短時間で観るための倍速機能。限られた時間で全部観なきゃいけない人や、時間が無いけど観たい人も多いと思います。あとは観た作品を自分なりに評価して、それを他の人に伝えるような、自分の趣味とか趣向をアピールできる機能だったり。今は一方的に観るだけですが、双方向にコミュニケーションできる機能は、アニメファンの間で一定のニーズがあるんじゃないかと考えています。

――「GANMA!」もウィンドウの変化に対して構想はあるのでしょうか


福留
ネット配信に視聴が移行する中で、コンテンツは二分化すると見ています。隙間時間などでサクサク観るのに適したものと大きい画面で観るのに適したハイクオリティなもの、この2方向に行くと思うのですが、もちろん両方に対応したいとは考えています。ハイクオリティな作品は所謂製作委員会を組んで各社さんと協力しながらお金をかけて制作していきたいと思っていますし、サクサク観る作品は、短尺がいいのか、笑いがいいのか、お色気がいいのか、キャラクター性や、やっぱりストーリーはどれだけ影響があるのかなど今のデータを分析し、トライアンドエラーと情報をフィードバックしながら作っていきたいと思っています。

――『おとなの防具屋さん(裏面)』の見どころや、こういう風に視聴をおすすめします、みたいなものはありますか

福留
アニメ1期ファンはもちろん、「GANMA!」読者さんは、「GANMA!」の他の作品の人気キャラクターも登場したりするので、より一層楽しめると思います。もちろん、初めて見る方でも頭を空っぽにして気軽に楽しめる作品になっています。放映後の反響はずっと追っていて「これあまり反応良くなかったです」とか「めっちゃ受けてました」とかは監督には全部伝えていますし、スタッフたちも1期の制作でいろんな実験をして。

――放映後の分析も細かくしている?

福留
放映後の反響はずっと追って、監督や制作チームには全部伝えてます。「これめっちゃ叩かれました」とか「受けてました」とか。監督始めIMAGICA lab.の方々は色々面白がって柔軟にレスポンスして下さるので、基本的に全部お伝えしていました。

松田 
「GANMA!」で原作を読まれているファンの方々は、主に10代から20代前半の比較的若い方が多いと思いますが、dアニメストアで最も防具屋さんを視聴いただいた年代は40代(男性)なんです。原作とは異なる世代にもアプローチして、ファンのすそ野を広げられたことは、配信サービスとして大きな役割を果たすことができと思っています。

―――最後に「GANMA!」「dアニメストア」の今後の展望を教えてください

福留
「GANMA!」は、自由度が高いので、面白いと思ったところにどんどんチャレンジしていきます。データもかなり大事ですが、インスピレーション先行で立てた企画でも面白いと思えばチャレンジさせてもらえる挑戦的風土がありますので、その両方のいいところをとって、新しいと感じてもらえるところには積極的に挑戦していきたいです。その一方で私たちはまだまだ認知度を上げていくフェーズですので、繰り返しになりますが委員会を組んで30分尺のTVシリーズや劇場作品に数年かけて全力でヒットを狙う方向性にもチャレンジしたいです。実行力を高めるためにも、人を増やさないといけないフェーズなので、もし興味がある方はぜひコミックスマートの採用ページから応募していただきたいです。新しいものが好きな方が合うと思います。

また業界のエコシステムを変えることで、漫画家やアニメのクリエイターの労働環境を改善し、業界へ貢献できたらと考えています。そのためには1人が1時間あたりに生み出す利益を大きくする必要があります。それが可能となるエコシステムを作るのが大事だと思いますので、一貫して挑んでいきたいです。

松田 
お陰様で「dアニメストア」の認知も少しずつ広がってきていて、ライトなアニメ好きの方から、月に50作品以上視聴されるようなアニメファンにまで多くの方々にご利用して頂いています。今後も、単にアニメを配信するだけでなく、作品にフォーカスした特集企画やイベント実施、アニメグッズの展開などのアニメにまつわる「総合サービス」として、会員の皆様のご期待に応えていきたいです。

また「dアニメストア」は、権利元様から作品をお預かりして配信する立場のサービスなので、アニメ業界自体にどれだけ貢献できるかということも重視しています。視聴された分のロイヤリティを権利元様や製作委員会へお戻しするだけでなく、作品をアニメファンへプロモーションして、作品の価値を広げていくことにも貢献していきたいですね。

―――ありがとうございました

《森 元行》
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