「ポッピンQ」漢たちが語る少女の一瞬の煌めき サンキュータツオ×藤津亮太 特別対談 | アニメ!アニメ!

「ポッピンQ」漢たちが語る少女の一瞬の煌めき サンキュータツオ×藤津亮太 特別対談

中学3年生の春。それぞれの悩みを抱えた5人の少女たちが"時の谷"へと迷い込む。彼女たちは同位体であるポッピン族の仲間たちと共に世界を守るため、心をひとつにしてダンスを踊る──。

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中学3年生の春。それぞれの悩みを抱えた5人の少女たちが"時の谷"へと迷い込む。彼女たちは同位体であるポッピン族の仲間たちと共に世界を守るため、心をひとつにしてダンスを踊る──。

12月23日に公開される映画『ポッピンQ』。東映アニメーション60周年記念作品の同作は、3DCGの魅力と青春ドラマが融合した、2016年の締めくくりにも2017年の映画始めにもぴったりな正統派エンタテイメントだ。
宮原直樹監督が手がけるオリジナルアニメーション『ポッピンQ』はどこに向けた映画なのか、またどんな魅力があるのだろうか。
アニメ評論家の藤津亮太さんと、漫才コンビ「米粒写経」ツッコミ担当で一橋大学非常勤講師・日本語学者でもあり、アニメを愛してやまないサンキュータツオさんに、作品の見どころやどのように考察をしたのかをたっぷりと訊いてみた。
[取材・文:川俣綾加]

『ポッピンQ』
12月23日(金・祝)全国ロードショー
http://www.popin-q.com


■女児向け作品を卒業した子が次に見るアニメ

──まずは映画を観た率直な感想を教えてください。サンキュータツオさんはいかがでしたか?

サンキュータツオ
観ているうちに、ヒロインの伊純たちと同じく"少女の気持ち"になってしまいました。それくらいとても爽やかで、色々なテーマが盛り込まれていて、観たあとは気持ちいい。明日も頑張ろうと思える映画です。

藤津亮太(以下、藤津)
すごく爽やかな作品でしたよね。

サンキュータツオ
まっすぐで爽やかでしたね、そこに東映アニメらしさもあって。異世界に迷い込んでしまうけどまた現実の世界に戻ってくるのもよかった。「戻るに値する世界かどうか」を議論するシーンまであって誠実さも感じました。

──"東映アニメらしさ"ってどんなものでしょうか。

サンキュータツオ
僕の中では高畑勲らしさに近いかも。作中できちんと現実世界にフィードバックするものがあるかどうかです。映画を観て劇場をあとにした子どもたちがどんな気持ちになって欲しいかを考えてある。『プリキュア』を見ていた子たちが成長して、今ちょうど色々な壁にぶつかっているかもしれません。そこで『ポッピンQ』を観て「よし、前に進もう!」と思ってくれたら素敵ですよね。


──藤津さんはどう感じましたか?

藤津
「これは実験作なのかも」と。これはネガティブな意味ではなく、東映アニメはいつもマーチャンダイジングでしっかりと利益を上げつつも、たまに映画『アシュラ』のような予想外の作品を作ることがあるので。でも実際に映像を見たらすごくまっすぐな作品でした。

サンキュータツオ
僕が予想外だったのは、もっと萌えに振ると思っていて。いわゆるオタク受けするような方向。

──この映画は観る前は少し謎なところがありますよね。子どもも楽しめるような作品だろうけど、黒星紅白さんのキャラクターデザインによって大人向けにも思える。でも、いざ蓋をあけるとすごく清潔感があると思いました。

藤津
黒星さんが描くキャラクターもすごくかわいい。それを萌え方向に振るのではなく、もっと違う方向に振ってる。僕は娘がいるのですが、この作品を観に劇場にいったら気に入ると思います。少し前までは女児向けアイドルものが好きだったけど今は卒業していて、ちょうどその時期の子たちにハマる作品じゃないかな。

──「子どもで女の子」ではなく「大人になる一歩手前の少女」の時期ですね。

藤津
あのモコモコした服から衣装が変わるのも、サナギが蝶に羽化するイメージだと僕は思っていて。その時期の子たちと重なる部分があります。

サンキュータツオ
あ、なるほど! 言われてみれば。そういう意味ではどこまでもストレートな作品ですね。

藤津
小学校高学年から中学生くらいの子が一番ハマるだろうし、もちろん大人が観ても面白いはず。

サンキュータツオ
小学生を対象にバスケットボールを教えていたこともあるんですけど、その年齢の女の子が難しいのは小学校高学年になると全然大人のいうことを聞かなくなるんですよ。そこにアニメが説教くさくないかたちで大切なことを伝えてくれる役割を果たしてくれたらいいですよね。『ポッピンQ』を見て「これまで自分ときちんと向き合ってきたか」「後悔しない生き方をしているか」とか。

藤津
メインの女の子が5人いるので、どこかしら自分に重なる子がいる構成になっているのもいいですね。


■自分と向き合うきっかけをくれる存在が同位体

──おふたりはこの作品からどんなテーマを受け取りましたか。世界観や設定など気になったポイントもお聞きしたいです。

藤津
この作品って「誰もが時間を戻したいと思うことがある」というお話なんだなと、僕は受け取りました。誰もが願うそんな欲望や落とし穴みたいなものを世界観に落とし込んでいる気がします。

サンキュータツオ
僕は同位体のポッピン族がすごくよかったですね。ポコンが超かわいかった! ポッピン族のダンスシーンは無限ループで見ていたい。いわゆる肩乗り系の小動物って、ともすれば女児向けっぽくなってしまう場合もあるけれど、この作品ではそうはなっていなくて。僕も同位体が欲しい。

藤津
自分が言われたくないことをサラッと言ってくれる存在ですよね、同位体は。

──言わなくても思っていることがわかっちゃうから。

サンキュータツオ
自問自答を二分したような、自分と向き合うきっかけをくれるのが同位体なんですよね。それでいて黙って寄り添ってくれるし、誰もが欲しいと思う存在。設定的にも秀逸だけど、絵としても素晴らしい。ファンタジーって現実にはないものをどう表現するかがアニメ的なケレン味に結実するのだと思うんです。そこを踏まえると、ポッピン族はピクサー的な3DCGではなく、きちんと記号化されたキャラクターだったのもよかった。

藤津
作画も洗練されていて、冒頭からラストまで手が行き届いていました。

──宮原直樹監督に取材した際、「通常より大きめの原画用紙を使って、スキャンの解像度も高めにし作画の線が生きるように作っている」とおっしゃっていました。

藤津
つまりは、大きく描いてもらって高解像度でスキャンして、実際の画面では少し小さくして使っているわけですよね。それによって今のアニメに求められる精密さと鉛筆で描いたことで生まれるニュアンスを両立させた画面を作ろうとされたのかな。通常はタッチを生かした画面ではと線が太目になって、強弱があるラフな味わいになるものですけど、ここでは線のニュアンスと線の細さを両立しようということだと思います。

サンキュータツオ
今は細い線のほうが好まれる傾向がありますよね。


《川俣綾加》
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