世界最大の国際アニメーション映画祭として知られるアヌシー。コンペティションと並んで高い注目を集めるのが「WORK IN PROGRESS」である。これから公開される世界的な注目作品を制作過程からいち早く紹介することがその理由だ。 2015年には、細田守監督の『バケモノの子』、スタジオジブリが製作参加するマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット『レッドタートル ある島の物語』などが紹介されている。完成した『レッドタートル』は、先日のカンヌ国際映画祭で「ある視点部門」特別賞に輝いたばかりだ。
そして2016年も、日本からとびっきりの作品が「WORK IN PROGRESS」にピックアップされた。日本では2016年10月公開予定の『この世界の片隅に』である。『アリーテ姫』『BLACK LAGOON』などで知られる片渕須直監督の『マイマイ新子と千年の魔法』以来、7年ぶりの長編映画である。 映画制作が佳境に入っている片渕須直監督に代わって今回登壇したのは、アニメーション制作をするメスタジオ MAPPAの丸山正雄氏、プロデュースをするジェンコの真木太郎代表取締役、そして英国配給を手がけるマンガ・エンタテインメントのJerome Mazandarani氏の3人である。作品の魅力や、これまでのアニメとはやや異なった企画成立を紹介した。
作品は、広島の原爆投下という難しいテーマを持つが、作品は政治的なものでなく、その中で生きた人々の日常を描く。一方で、作品で悲劇が描かれるのも確かだ。その両方が参加者に深い感銘を与えようだ。 「WORK IN PROGRESS」の最後には、ここが世界初公開という主題歌のメロディーに乗せたPVが公開された。上映終了後には、会場を包む大きな拍手が長く続いた。『この世界の片隅に』は、早くも国境を越えようとしている。
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