二重の意味持つ日仏合作「オーバン スターレーサーズ」 | アニメ!アニメ!

二重の意味持つ日仏合作「オーバン スターレーサーズ」

レビュー アニメ

 『オーバン スターレーサーズ』はフランス人監督の2人が、かつて子どもの頃に熱心に観ていた『未来少年コナン』や『キャプテンハーロック』といった日本のアニメの強い影響下にある。彼らは「今の時代に敢えて、それらの作品が持つ良さを子どもたちに見せたい」と言う。
 作品を見た多くの人は「古臭い。けど、懐かしい良さを感じる」と述べた。収集した中に子どもの感想がなかったのは残念だが、彼らの意思は伝わっている。

 『オーバン~』は二重の意味で日仏合作の作品だ。一つは、彼らフランス人のメインスタッフの中に築きあげた“古き良き日本のアニメ”があることだ。
 主人公の少女モリーは10年前に寄宿学校に入れてられて以来、父親と会っていない。彼女は父が率いる有名なスター・レーサー・チームに偽名を使ってもぐり込む。だが、父親は地球の大統領からの特命に精一杯で彼女が実の娘だと気づかない。

 第8話では、勝利を目標とした監督の攻撃命令に対し、彼女は猛然と反発をする。そこには事前に異星人のアイカ王子との間に正々堂々と戦う不戦の約束があったからだ。板ばさみになって迷う大人びた仕草など、微塵も見せない。大人に対して、“子どもの論理”で堂々とぶつかる。残酷にも親子の断絶感を描いたり、組織に反抗するといった動作は、子どもを大人の支配下に置きコントロールするヨーロッパ文化圏にはなかったものだ。
 これらは明らかに、子どもに対して自立とは別の独自性を認める日本(アニメ)の文化からもたらされたものだ。日本人で観ている我々にはそれが当たり前のように映り、ともすれば彼女たちにもどかしい思いを抱くかもしれない。
 だが、我々は絵柄とは別のところにある、こういった“古き良さ”を各所に見ることができるのである。確かに、歯がゆい思いをするのだが、それはキャラクター同士の芝居が成り立ち、視聴者がそこに没入している証拠でもあるのだ。昨今のすれっからしの作り手による作品に見られる、狭い世界での充足を目標としたり、都合よく回る世界観へのアンチテーゼとは考えすぎだろうか。

 もう一つは、本作が実際の制作において、既報の通り2Dは日本のハルフィルムメーカーが、3DパートはフランスのPumpkin-3dが行っていることである。フランスでは1980年代に外国放送の量を規制する法案が通されていた。
 これは主に、当時爆発的な勢いで増加していた日本アニメに対する文化的脅威からなされたものだ。現在でもこれは続いており、そのためフランスはEUの中でもドイツやイタリアほどアニメの勢いが強くはないのが現状だ。ただ、この規制は共同制作となると話が変わってくる。
 出資はEUの配信会社、3DCGはフランスのプロダクション、そして監督にはフランス人が立つとなると、もはやフランスにとって“自国産”扱いとなるのである。こうすることで、日本アニメから大きな影響を受けた監督による作品で、しかもドラマ部分に大きな役割を果たす2Dパートが日本製のアニメを、規制に喘ぐフランスの子どもたちに“古き良き日本アニメ”として伝えることができるのである。

 本作は、作品制作のためにフランスから日本に住まいを移したクリエイターの努力によってもたらされた。ファン同士の国際交流はすで多く報告されているが、アイデアの拝借にとどまらず一つの作品に向けて心底ぶつかって作り上げるコラボレートは、まさに今始まったところだ。過去に異文化だったアニメ作品は、それぞれの文化を通過することで新たな作品を生み出した。
 今後、彼らのような新しい解釈のもたらすアニメは、マーケティング至上に対して大きな打開策になるだろう。そのために、こういった才覚を見つけ認め合えるクリエイターや制作ができる場所というものは日本のアニメ界にとって重要な要件となるだろう。
【日詰明嘉】

OBAN Star-Racers公式 /http://www.obanstarracers.com/
TORNADE BASE  オーバン特集  /http://www.dot-anime.com/tb/tb_oban/

Sav! The World Productions /http://www.savtheworld.com/jp/
ハルフィルムメーカー /http://www.hal-film.co.jp/
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