押井守おそるべし! 立喰師列伝を語る | アニメ!アニメ!

押井守おそるべし! 立喰師列伝を語る

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 押井守はかくも饒舌だったのか?と思わせるほどノリまくっていたのが、7月16日にパシフィコ横浜で開催された日本SF大会HAMACON2のパネル「押井守『立喰師列伝』を語る!!」であった。押井作品を世に送り出すアニメ制作会社プロダクションIGの石川光久社長の暴走発言ぶりも有名だが、この社長にしてこのクリエーターあり、この日の押井氏の新作映画『立喰師列伝』に関する話は数々の迷発言が続出であった。
 「イノセンスはガブリエル(押井氏の愛犬)のための映画だった」、「『立喰師列伝』は作れるだけ有り難いと思えと石川(社長)に言われた」、「これからデジタル処理の大変な作業になって皆の目が三角になるので、スタジオにはなるべく行かないつもりだ」などと、多くの冗談を交えながら今回の作品に対する熱い思いが語られた。
 
 押井氏によれば、『立喰師列伝』を作る目的は3つ、ひとつは今では語られることが少なくなった日本の戦後史を描くこと、2つめはこれまでの自分の仕事に関わってきた人達を映画に出しオマージュとする自分の個人史とすること、最後に愛犬のためだという。そして、多くの自分の知り合いを映画に出すからには、きちんとした映画を撮るつもりだという。
 これまで、『立喰師列伝』の企画は短い制作期間、身近な人達を出演させる内輪受け感覚、低予算といったイメージで、押井監督作品の中での小作品になるのかなと思っていたが、そうした考えは完全に覆された。
 押井氏によれば『立喰師列伝』の構想は、かの『うる星やつら』の「立喰ウォーズ」よりさらに古くタイムボカンシリーズに遡る。今しかない機会をものにし、まさに構想20年の念願の映像化となる。予算は『イノセンス』の1/20というが、「後世に残る作品を作る」、「今までにない映像表現を数多く盛り込んだ」など、気合の入り方はただものではない。内容についても、「手法はミニパトと似ているがもっとシリアスな作品になる」とも語った。

 制作方法は、百数十人の知人のスチール写真を取りためて、それをデジタル加工にしてアニメーションにするというもの。140人の数万カットに及ぶ写真をわずか5日間で撮るなど現場は壮絶だったという。当日に世界初公開された『立喰師列伝』のプロモーションビデオなどを見ても、かなり実験的かつ考え抜かれた映像が展開しそうだ。物語自体は、ほとんどがナレーターの語りによって進む形になるようだ。

 公開は来年の年明け頃になる見込みだが、数館による公開になるしかないだろうと押井氏は話していた。出来るだけ多くの人にDVDを買って貰いたいとの押井氏の熱いメッセージが語られ、出演者には宣伝の貢献度によって今後の映画の編集で出番の量が変わるとの脅しまであった。
 しまいには会場に来ていた同作品に出演予定のアニメージュ編集長の大野氏を壇上に引き吊りだし、『立喰師列伝』のために「グラビアベージをくれ」、「表紙にしてくれ」と要求するという事件も。大野氏はその場で、9月10日発売号のアニメージュ付録DVDに今回上映されたプロモーション映像を収録すること約束、かつ押井氏に原稿の催促も忘れないという臨場感あふれるシーンもあった。

 いずれにしても、今回の『立喰師列伝』は虚実取り混ぜた戦後史、画面に頻繁に登場する犬、実写とアニメを超えた映像表現などいかにも押井守的な部分と自分の友人を大量に映画に取り込んでしまうなどの新しい試みなどが混在し、これまでの押井作品以上に面白そうだ。
 『イノセンス』といった大作のあとに、それに対するのと変わらぬ情熱を低予算映画『立喰師列伝』に注ぎ込む押井監督はある意味すごいといえる。また、『立喰師列伝』のはじけた企画を聞くと『イノセンス』は非常に真っ当な映画だったなとあらためて思い返してみたりもした。

/第44回日本SF大会HAMACON2 
/押井守公式ページ ガブリエルの憂鬱 
/プロダクションIG 

《追記》
8月10日発売のアニメージュ9月号によると、レポートの中にある『立喰列伝』の予告編は諸般の事情によりアニメージュ10月号のDVDに入らないことになりました。残念...。
《animeanime》
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