『ベルヴィル・ランデブー』フランスアニメのポジション | アニメ!アニメ!

『ベルヴィル・ランデブー』フランスアニメのポジション

レビュー 実写

 『ベルヴィル・ランデブー』を観てきた。『ベルヴィル・ランデブー』は、フランスのアニメーションである。正確に言えばカナダ、ベルギーとの合作なのでフランス語圏のアニメーションといえる。現在、日本で劇場公開中だが話題になることが少ない。しかし、このアニメーションはかなり凄い。
 監督のシルヴァン・ショメ氏は、過去に広島やアヌシーのアニメーション映画祭でグランプリを受賞して来た知る人ぞ知る才能である。また、この作品は2003年のニューヨークとロサンゼルスの映画批評家協会賞のベスト長編アニメーション賞を受賞している。そして、2003年のアカデミー賞長編アニメーション部門と作曲賞にもノミネートされているのだ。2004年の日本アニメの状況を考えれば判るように、これは大変なことである。米国の賞であるアカデミー賞に海外のアニメーションがノミネートされることは、それ自体がニュースだからだ。
 
 作品のストーリーは、とても単純である。謎の都市ベルヴィルのマフィアに誘拐された孫を助け出すおばあさんの物語といえば説明しやすい。しかし、実際には物語自体の見せ所は少なく、凝った映像表現や不条理な話の展開、独特のキャラクター表現こそがこの作品の持ち味である。確かに、哀愁のこもったジャズ(スィングジャズ?)の音楽や絵本のような趣のある色の落とした美術と色調は素晴らしかった。
 ところが、僕と波長の合ったのはそこまでである。正直、僕にはかなり辛い内容であった。欧米の新聞の挿絵よくみられるような極端にカリカチュアされたキャラクターが生理的に受付けられない。そうしたキャラクターのセリフがほとんどないまま進むストーリーを不気味に感じてしまう。卓越したナンセンス、シュールと誉める向きもあるのだが、僕には『うる星やつら』のナンセンス加減のほうが、レベルが高く思えるのだ。エンターテイメントであれ、芸術あれ、風刺であれ、正直あまり面白いと感じなかった。
 しかし、これはあくまでも僕の感想である。僕がアニメーションの映像表現に求めるのはあくまでもエンターテイメントやストーリー性である。あまり、シリアスなものや高尚なものは肌に合わないからだ。
 自分には合わないなと思う一方で、こうした作品がつぼに嵌る人もかなり多いだろうというのも容易に想像が出来た。実際、この映画を一緒にみた友人は、物語に出て来た犬のキャラクターに魅かれていたし、それなりに面白いと言っていた。
 つまり、この作品は観る人を選ぶかなり個性の強い作品である。作品は一般大衆に向けて作られているわけではない。大衆の支持は得られないが、おそらく、100人のうち何人かは絶賛するに違いない。そういう作品だ。それは、日本アニメとも米国アニメーションとも異なるヨーロッパのアニメーションの個性であり、差別化であるともいえる。
 おそらく、『ベルヴィル・ランデブー』を観た人は、肯定的であれ否定的であれ、非常にヨーロッパ的であると感じるに違いない。つまり、日本や米国の一般的なアニメーションにない芸術的な、あるいは政治的なニュアンスにヨーロッパ風を感じるだろう。それは、日本アニメが米国アニメーションと差別化しているのとは別の意味で、オリジナルなものなのである。 
 そして、現在、少なくとも商業面でみた時に、日本と米国アニメーションの間に沈みがちなヨーロッパのアニメーションが成功する道はそこにあるに違いない。そうした中で、『ベルヴィル・ランデブー』は強烈な個性を発揮することで間違いなく成功しているのだ。
 
/ベルヴィル・ランデブー公式サイト 
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《animeanime》
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