「Sonny Boy」で18年ぶりにアニメに復帰した江口寿史―漫画とイラストの世界で絶大な影響力を持つその理由とは | アニメ!アニメ!

「Sonny Boy」で18年ぶりにアニメに復帰した江口寿史―漫画とイラストの世界で絶大な影響力を持つその理由とは

7月放送開始のTVアニメの中で、注目1本であるオリジナル作品『Sonny Boy』。そのキャラクター原案を担当しているのは、漫画家・イラストレーターの江口寿史氏です。

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『Sonny Boy』コンセプトビジュアル(C)Sonny Boy committee
  • 『Sonny Boy』コンセプトビジュアル(C)Sonny Boy committee
  • 『Sonny Boy』キービジュアル(C)Sonny Boy committee
  • 『ストップ!!ひばりくん!』(c)江口寿史/集英社
  • (C)江口寿史/集英社
  • 『江口寿史の「5分スケッチ」 自分の線をつかむコツ!』
  • 『江口寿史の「5分スケッチ」 自分の線をつかむコツ!』
  • 『老人Z』(C)TOKYO THEATERS CO.,INC./KADOKAWA SHOTEN PUBLISHING CO,.LTD./MOVIC CO.,LTD./TV Asahi/Aniplex Inc

7月放送開始のTVアニメの中で、注目1本であるオリジナル作品『Sonny Boy』。そのキャラクター原案を担当しているのは、漫画家・イラストレーターの江口寿史氏です。

本作は、江口氏が18年ぶりにアニメのキャラクター原案を務めることで放送前から話題に。80年代や90年代の漫画・サブカルチャー好きの世代にとっては、超ビッグネームと言える江口氏。美少女を描かせたら日本一と言われるその実力がアニメで見られることに喜んだファンも多いのではないでしょうか。

そんな江口氏のすごさとキャリア、漫画・アニメ業界、ひいては世間一般に与えた多大な影響を振り返ってみましょう。

ギャグ漫画家として注目を浴びる


江口寿史氏は1977年に漫画家デビュー。同年に始まった連載漫画『すすめ!!パイレーツ』で早くもギャグ漫画家として絶大な支持を集めるようになりました。

『すすめ!!パイレーツ』は、架空のプロ野球チームの面々を描いた作品でしたが、従来の野球漫画といえば、シリアスでスポ根的な作風が多かった中、野球ギャグ漫画というジャンルを切り開いた、画期的な作品でした。きわどいパロディネタから、時事ネタまで幅広く取り入れた作風で、かつて流行語となった「ぶりっこ」という言葉を生み出すなど、社会的にも大きな影響を与えた作品です。


『ストップ!!ひばりくん!』(c)江口寿史/集英社


その後、1981年から、漫画家としての最大の代表作『ストップ!! ひばりくん!』の連載を開始。外見が美少女だが実は男という、現在でいう男の娘の先駆けキャラと言われるひばりくんを生み出し、その美少女造形センスをいかんなく発揮しています。

江口氏の漫画家としての最も大きな功績は、漫画における美少女キャラクターデザインを更新したことでしょう。現在の漫画には、競うように美少女が出てくるのは当たり前となっていますが、そのスタンダードを作った人物と言っても過言ではありません。

また、美少女デザインで有名な一方、格好いい男性キャラを描いても素晴らしく、漫画『エイジ』などでそのセンスが発揮されています。また『エイジ』では女性の鼻の穴を描きながらも可愛く見せるデザインを生み出したことでも有名。『Sonny Boy』のキャラクターもみな鼻の穴がきちんと描かれており、江口氏のセンスがいかんなく発揮されています。


『Sonny Boy』コンセプトビジュアル(C)Sonny Boy committee


江口氏の漫画は、その内容の面白さだけでなく、扉絵などの絵がイラストとして非常に完成度が高いことでも評判となりました。その傾向は『すすめ!!パイレーツ』の連載後期から顕著となり、『ストップ!! ひばりくん!』では非常に洗練された絵を毎週のように描いています。

イラストレーターとして一世風靡


扉絵などで発揮していた、洗練されたポップな絵柄を活かす場として、江口氏はイラストレーターとして活躍するようになっていきます。雑誌の表紙や挿絵、企業イラスト、CGジャケットなど多方面でそのセンスを発揮。美女を描かせたら日本一と言われるそのセンスとポップな作風は、イラストの世界で大きく開花していきます。

この頃の有名な仕事としては、1992年から1997年まで続いたデニーズのメニューのデザインや、80年代から手掛け続けた、女性探偵小説ものを得意とする作家サラ・パレツキーの作品群の装幀などが挙げられます。

そのほか、数多くの広告ポスターや雑誌の表紙などを飾り、江口氏の絵は多くの人に身近な存在となっていきます。90年代当時を知る人は、雑誌や街中のポスターなどで、江口氏のイラストをよく見かけた人が多いのではないでしょうか。

漫画家出身のイラストレーターとしてはピカイチの実績を誇り、そのセンスは漫画業界のみならず、イラストの世界でも、中村佑介氏など多くの後進世代に大きな影響を与えており、そのスタイルは現代の「美人画」の定番のひとつと言えるでしょう。


『江口寿史の「5分スケッチ」 自分の線をつかむコツ!』


アニメでもそのデザインセンスを発揮


その美女のデザインセンスを生かして、江口氏はアニメの世界でも活躍しています。


『老人Z』(C)TOKYO THEATERS CO.,INC./KADOKAWA SHOTEN PUBLISHING CO,.LTD./MOVIC CO.,LTD./TV Asahi/Aniplex Inc


『ストップ!! ひばりくん!』や『エイジ』など自身の漫画作品もアニメ化されていますが、原作・脚本大友克洋の名作OVA『老人Z』で初めてアニメのキャラクター原案を担当しています。主人公は江口氏得意の美女ですが、本作は多数の老人が登場する作品でもあり、老人の描き分けという点で江口氏にとって新境地だったと思われます。

さらに今敏監督の長編映画デビュー作品『パーフェクト・ブルー』のキャラクター原案も務めています。さらに、2003年~2004年放送のNHKのオリジナルアニメシリーズ『無人惑星サヴァイヴ』でもキャラクター原案を担当しています。

この度、放送される『Sonny Boy』は、アニメの仕事は実に18年ぶりとなります。江口氏のシンプルでクールなデザインセンスがいかんなく活かされたキャラクターたちがどんな活躍を見せるのか。アニメの展開に注目が集まります。

《杉本穂高》
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