「富豪刑事 Balance:UNLIMITED」プロデューサーが仕掛ける話題づくりの“妙”【インタビュー】 | アニメ!アニメ!

「富豪刑事 Balance:UNLIMITED」プロデューサーが仕掛ける話題づくりの“妙”【インタビュー】

筒井康隆のミリオンセラー小説を現代版にアレンジし、数多くの“仕掛け”で話題をさらったテレビアニメ『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』。今回、企画の発起人となったフジテレビの松尾拓プロデューサーにインタビューを行った。

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『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』場面カット(C)筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥
  • 『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』場面カット(C)筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥
  • 『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』キービジュアル(C)筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥
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  • 『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』場面カット(C)筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥
謎に包まれたキャラクター、先の読めない展開、最新鋭のガジェット、ユニークな宣伝手法……。
数多くの“仕掛け”で話題をさらったテレビアニメが2020年4月にスタートした。その名も『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』

原作は筒井康隆が1975年から1977年にかけて発表したミリオンセラー『富豪刑事』(新潮文庫刊)。原作の世界観やキャラクターを生かしつつ、全く新しい要素を取り入れ、“現代版”にアレンジしている。

『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』キービジュアル(C)筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥
『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』キービジュアル
本作についてアツい想いを語るのは、企画の発起人となったフジテレビの松尾拓プロデューサー。作品に盛り込まれた数多くの“仕掛け”の発起人でもある。

松尾プロデューサーと2話放送時点までの仕掛けを振り返るとともに、作品への想いやTwitterにトレンド入りした宣伝戦略、『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』の見どころなどを伺い、本作に込めた情熱に触れた。

[取材・文=阿部裕華 ]

原作へのリスペクトを込めながら“新しい作品”をつくる作業



―― 松尾さんは筒井康隆さん(『富豪刑事』の原作者)の作品が学生時代からお好きだったそうですが、今回『富豪刑事』のアニメ化に踏み切った理由について教えてください。

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松尾:アニメの企画を出す際、映像化して魅力が大きい作品を手掛けたいという考えが前提にあります。“ノイタミナ”枠は深夜アニメのため、GP帯(ゴールデン・プライムタイム)の放送枠ほど多くの視聴者に一斉に見られるわけではない。だからこそ、パンチ力のある派手な作品で“登場感”を演出したいと思っていました。

これは僕の好みでもありますが、アニメは派手なことが起きてナンボだと思っていて。映画『MISSION:IMPOSSIBLE』シリーズや『007』シリーズのように派手なアクションや、何が起こるか分からない展開の作品は、日本で実写制作するとなると相当大規模な映画でないと難しい。

でも、アニメなら何でもできるんですよ。宇宙に行ったり、動物が話したり……派手なことを起こしやすい。だから、派手な世界観の作品をつくりたかったんです。

また、カリスマ性を持つキャラクターにとても憧れがあって。『富豪刑事』の主人公である神戸大助は使い切れないほどの資産を持つ大富豪です。そんな彼が、警察という泥臭い組織の中で派手にお金を使って事件を解決していく姿は、とても魅力的で面白い。

『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』場面カット(C)筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥
大富豪・神戸大助
―― 『富豪刑事』の「お金で事件を解決する」設定やキャラクターは、たしかにド派手です。

松尾:とはいえ、原作通りに進めることは放送枠の関係上難しかった。原作は4つの短編エピソードで構成されているため、そのままやると1クール(11話分)はもたないんです。であれば、原作の魅力をリスペクトしながら、考え得る“おもしろ要素”を最大限詰め込んだものをつくってみたいというのが今回の企画の流れですね。

―― 原作の設定を取り入れてはいるものの、アニメでは新しい要素が満載ですよね。

松尾:「神戸大助」という圧倒的な魅力を持つ大富豪が、泥臭さを良しとする警察組織の中で華麗に大胆に事件を解決するというのが『富豪刑事』の面白さのコアになる部分だと思います。
今回、舞台を現代に変更し、アニメとしての魅力を最大化するためには……というアプローチで、バディとなる加藤春も、AI執事のヒュスクも、現代犯罪対策本部準備室も、原作にはない要素をいろいろと詰め込みました。
さまざまな提案を何もかもご快諾頂いた筒井先生には感謝の気持ちでいっぱいです。

―― 原作者の筒井先生や出版元である新潮社さんには、どのように企画を伝えたのでしょうか?

松尾:最初に新潮社さんに提出した企画書にはこのように書いています。

「原作の持つ大きな魅力である設定の大胆さや面白さ、そしてキャラクターの痛快さを活かしつつ、最先端のガジェットを盛り込み、オリジナルキャラクターや設定を加えながら、現代にリバイバル。ジェームズ・ボンドはMI6(イギリスの情報機関)を後ろ盾として活躍しますが、神戸大助は桁外れの個人資産をバックに、大胆にそして豪快に事件を解決していきます。大いなる個の力を活用し、時には華麗に、時には力技で事件解決を進める、新世代のヒーローを描いていきたいと考えております」

これはつまり僕たちが原作『富豪刑事』に宛てたラブレターだと思いますが、この内容でOKを頂き、筒井先生はこれ以降も、シナリオや絵コンテなど含め、全てを我々がやりたい通りにやらせてくださいました。自分が本当に筒井先生の大ファンなので、これは本当に嬉しいことです。

『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』場面カット(C)筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥
第1話には、筒井先生も…?
―― 原作の魅力を活かしつつ、新しい作品として企画を固めていくのは、かなり大変な作業だったのでは……?

松尾:世界観やキャラクターの設定づくりといった、シナリオの前段階となる「土台」の部分ではだいぶ苦労しました。伊藤智彦監督と、シリーズ構成・脚本の岸本卓さんと僕の3人で1年半くらい、歌舞伎町の喫茶店でずっと本打ち(シナリオ打ち合わせ)していましたね。楽しいですけど、なかなかスパッと決まらず……現代の設定にするとしても、作品の世界観や大助というキャラクターに対して「こんなアプローチがあるんじゃない?」と、アイデアを出しては考える作業を繰り返していました。

―― アイデアがあり過ぎて、まとめていくのが大変だったんですね。

松尾:そうかもしれません。案が出ないという大変さではなく、いろいろな案がどれも魅力的だったからどうしようという感じでした。

タイトルの『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』も悩んだうちのひとつです。現代版にリブートするならどういうアプローチが良いだろう?とたくさんの案を出しました。タイトルは作品の顔なので、それこそ100個以上のアイデアをチームで出し合って決めましたが、作品全体の雰囲気がビシッと伝わる素敵なタイトルになったと思っています。

今放送しているものが僕たちの選んだ「一番面白いバージョン」なのでもちろん世の中には出せませんが、クリエイティブに関してはさまざまなアイデア案がありました。僕の『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』フォルダに入っている資料類は、売ったら少しお金になるかもしれませんね(笑)。

ギズモードのシビアな審査を通過した、“リアル”なガジェットたち



『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』場面カット(C)筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥
『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』場面カット
―― 伊藤さん、岸本さんとはアニメ『僕だけがいない街(以下、僕街)』でもご一緒されていますよね。やはり「安定感がある」という感じですか?

松尾:「安定感がある」どころの騒ぎではないぐらい安定していますね。
僕たちプロデューサーを含むスタッフ陣で「こんなシーンが見たい」「こんなやり取りが見たい」と、ああでもないこうでもないとアイデアを出し倒して、岸本さんは自分のアイデアも含め、「その素材ならこう仕立てていくとお客さんは喜びますよ」と多種多様な料理方法を都度ロジカルに提案していく。
よく喋り、会議のムードメーカーでもある岸本さんとは対照的に、伊藤監督は基本的にとても寡黙なのですが、みんながワーワー喋り終わったあと、最後に「ならこれだね!」と、出揃った素材と調理方法を基に、自身の膨大な引き出しからもオリジナリティのある素材やスパイスを加えて最高の料理をテーブルにのせるという雰囲気です。
岸本さんと伊藤監督はお互いを信頼しあっている素晴らしいバディだと感じますし、なんなら僕はふたりの関係性に嫉妬しています(笑)。

もちろん僕もアイデアを出しますし、魅力あるキャラクターを生み出してくれたキャラクターデザインの佐々木啓悟さんや副シリーズ構成の村上泉さん、アニメーションスタジオのCloverWorksさんなど、スタッフが固まってからはチーム一丸となっていろいろな素材を出して、それを伊藤監督が凄腕のシェフとしてボンボン調理していく。
とても雰囲気が良く活気のあるシナリオ打ちだったので、この時点で、すごくいい作品になると思いました。

―― 佐々木さんやCloverWorksさんも『僕街』の制作チームですよね。一方、本作からの新しい顔ぶれに、ガジェットコーディネートとしてギズモード・ジャパン(以下、ギズモード)さんがいらっしゃいます。なぜ、ギズモードさんをチームに招いたのでしょうか?

松尾:作品の中に「大富豪が資金力を生かして最新鋭のガジェットをつくり活躍する」という要素を取り入れたいと思いました。この時代に自分が大富豪で事件を解決するなら、新しい秘密兵器を開発しないわけにはいかないですよね?(笑)。

とはいえ、世の中にどういうガジェットがあって、どこかの国立研究所で開発されている最新の技術はこれで、映像的にも映える形で具体的にガジェットに落とし込むには……と僕らだけで考えるのは難しい。餅は餅屋というか、力を貸してくれる人たちとチームを組みたいと思いました。そこで、世界中の最新技術やガジェットに関して日本で一番精通しているギズモードさんに、お声がけさせていただきました。

「新兵器を秘密裏に開発できる立場にある大富豪の大助が、困ったときにどういうガジェットで解決するか」と、ガジェットから物語のアプローチを考えてアイデア出しをしてくれました。

『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』場面カット(C)筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥
『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』場面カット
―― そういった役割の方には「監修」や「考証」といった肩書きがこれまでは一般的だったと思うのですが、なぜ今回「ガジェットコーディネート」というクレジットに?

松尾:ギズモードさんが参加してくださることが決まってから、企画書をアップデートするタイミングでふと思いついた言葉です。
実際にそんなことはないのですが、「監修」や「考証」って、肩書きとしての文字だけを見ると「受け身な立場」というような印象を個人的には受けると前から少し感じていたこともあり、今回のギズモードさんの「さらにやってくれている感」をどうしたらクレジットで出せるかなと思ってのことでした。

「ガジェットコーディネート」……ふと思いついた言葉ではありますが、異常に語感がいいというのもチャームポイントですし、彼らからもアイデアのボールを放ってくれている印象がつくかなと考えました。

ギズモードさんも非常に気に入ってくださっているようです。「ガジェットコーディネーター」という肩書きを、別の場所でも使ってくれています。この作品で生まれた言葉が、今後もギズモードさんの肩書きとして使っていただけると思うと、嬉しいですし面白いですね(笑)。

―― 作中に登場するガジェットはギズモードさんからのアイデアなんですか?

松尾:僕らから発信したアイデアもあれば、ギズモードさん発信のアイデアもあります。ただ、すべてのガジェットはギズモードさんのアイデアを足してブラッシュアップしています。

『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』のガジェットたちは、ギズモードさんのかなりシビアなチェックを経て登場していますよ。

―― シビアなんですね。

松尾:非常にシビアです(笑)。というのも、僕らはギズモードさんに「嘘を描きたくない」と最初に伝えているからなんです。神戸家の莫大なお金を使えば、10年先のテクノロジーに到達できると仮定して、ガジェットを考えています。10年先のテクノロジーで開発できるリアリティラインを教えてほしいとギズモードさんに伝えているので、彼らはプロフェッショナルとして話をしてくれる。

たとえば、SF映画でよく見かける、ホログラムが空中に浮かび上がるようなシーン。あれは、ギズモードさんからNGが出ました。「映像を投写するには、何もない空中では不可能です」と(笑)。スクリーンや壁に投写する以外だと、チンダル現象(ほこりなどの微小な粒子に光を通し、光を散乱させる現象)を利用しないと難しいし、清潔な空間だとそれすらも不可能だと。

そういう話をとうとうとされるわけですよ。「人間が何のサポートも無しに宙に浮くのは10年先でも無理です」とか。彼らと話していると「質量保存の法則に基づくと……」「〇〇の法則ってご存じですか?」みたいな、ザ・理系の方向からリアリティを正してくれて、僕なんかは全然分からないので「つまり●●ってことですか?」と全然的外れなことを言って苦笑いされたり……(笑)。そんな過程を経てシナリオやコンテはシビアなチェックを通過しているので、今後出てくるシーンで「えぇ!?」と思っても、「10年後は到達できるってギズモードさんのお墨付きなんだなぁ」という目で見てください(笑)。


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《阿部裕華》
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