「日本沈没2020」震災の実体験とエンターテイメントの両立を目指して…湯浅政明監督が語る、アニメ化の意義【インタビュー】 | アニメ!アニメ!

「日本沈没2020」震災の実体験とエンターテイメントの両立を目指して…湯浅政明監督が語る、アニメ化の意義【インタビュー】

Netflixオリジナルアニメシリーズ『日本沈没2020』より湯浅政明監督にインタビュー。1973年に発表されて以来、繰り返しさまざまなメディア作品になっている『日本沈没』を、今なぜ再び取り上げたのか。その理由とアニメ化の意図を、湯浅政明監督に聞いた。

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『日本沈没2020』(C)“JAPAN SINKS : 2020”Project Partners
  • 『日本沈没2020』(C)“JAPAN SINKS : 2020”Project Partners
  • 『日本沈没2020』キービジュアル(C)“JAPAN SINKS : 2020”Project Partners
  • 『日本沈没2020』場面写真(C)“JAPAN SINKS : 2020”Project Partners
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小松左京による日本SFの金字塔『日本沈没』初のアニメ化に挑んだ、Netflixオリジナルアニメシリーズ『日本沈没2020』が、7月9日(木)より全世界独占配信。
1973年に発表されて以来、繰り返しさまざまなメディア作品になっている『日本沈没』を、今なぜ再び取り上げたのか。その理由とアニメ化の意図を、湯浅政明監督に聞いた。 
[取材・文=中村美奈子]

■震災の実体験とエンターテイメントの両立を目指して


『日本沈没2020』キービジュアル(C)“JAPAN SINKS : 2020”Project Partners
「ビックタイトルで、どうやってアニメ化するかもすぐには想像もつきませんでしたが、チャレンジングな感じが面白そうだし、断わる理由がないと思いました」

『日本沈没』のアニメシリーズ制作を提案された湯浅は、当時をこう振り返った。

小松左京の『日本沈没』が発表されたのは、関東大震災のちょうど50年後。急激な地殻変動の影響で日本全土が沈没するという“ありえない”大災害を、地球物理学の見識を用いた科学的描写でリアリティを持たせた。
深海潜水艇のパイロットや学者、全国民を国外に脱出させようとする政治家、それぞれの奮闘を綴った重厚でドラマティックな小説は累計470万部を売り上げ、同年公開された実写映画も観客動員数650万人、興行収入約40億を記録する大ヒット作となった。

熱狂はその後も続き、1973年、1980年にラジオドラマ化、1974年にはTVドラマ化、そしてさいとう・プロによるマンガも登場した。
さらに映画の大ヒットを受け、国土を失った日本人が世界でどう生きているかを描く『続・日本沈没』の映画企画が立ち上がったが、小松の原作執筆が進まずにお蔵入りとなっている。

『日本沈没』が再び注目されたのは、1995年に起きた阪神・淡路大震災後だった。
2006年に樋口真嗣監督によってリメイクされた実写映画『日本沈没』は、設定を2000年代の社会に即したものにし、潜水艇パイロット・小野寺俊夫を主人公に据えたヒロイックな味つけの作品だ。

一般市民の視点を意識して取り入れるべく、登場人物の設定や役割を大きく変更したこと、製作費20億円をつぎ込み、特技監督出身でアニメ界でもその名を轟かす樋口真嗣が挑んだ特撮シーン、当時人気絶頂にあったSMAPの草なぎ剛や柴咲コウなどの人気俳優を起用したことで話題となり、興行収入53.4億円の大ヒット。

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その映画に合わせる形でコミカライズされた一色登希彦のマンガは、樋口版のキャラクター設定を踏襲しつつも、原作小説やそれまでのメディア化作品の要素を部分的に取りこみ包括化したうえで、“日本人の精神性”について一歩踏みこんだ表現をした。

『日本沈没2020』(C)“JAPAN SINKS : 2020”Project Partners
同じく2006年には、小松と若手SF作家による続編執筆プロジェクトでまとめられたプロットを元に、谷甲州が共著という形で執筆した続編『日本沈没 第二部』が刊行されている。
テーマは、小松が本来書きたかったという「国土を失った日本人の漂流」と「地球温暖化」であり、一色版にはこちらの要素も取り入れられている。

同じ小説を原作としながらも、作り手によってさまざまなアレンジが加えられたが、共通して描かれたのは、地震や噴火で日本列島が引き裂かれて沈んでいく大スペクタクルと、国土を失っても心を失わぬ “日本人の精神”への賛美だった。

同じテーマや見せ方では、既存の作品を単に今風のアニメーションにしただけにしかならない。湯浅は『日本沈没』をどう料理すべきか考えた。

「まず既存の作品の目玉だった大スペクタクル、建物がどんどん沈んでいくような説得力ある映像をつくるのは難しいと考えました。それなら、ローランド・エメリッヒ監督の映画『2012』がある。

それと同じことができないなら、逆にそれがあまり見えない、ごく一部の人たちにぐっと近づいた視点で描くのがいいんじゃないかと思ったところに、プロデューサーの厨子健介さんたちが先に考えられていた案も、災害に直面したある一家族を追うというもので、キャラクター設定案もありました。その方向が良いと思ったので、基本その路線でいくことに決めました。

まずは、キャラクターの設定や、起る出来事やストーリーの展開などを自分がしっくり来る方向へカスタマイズしてゆきながら、アイディアを入れてゆく所から作業を始めました。

その時点でキャラクターで気にした点は、ジェンダーにおける平等さと活躍具合、国籍などです。日本が沈没するとなったら、どうしても「日本は良かった」とか「日本人だから」「日本民族だから」という風な民族意識的な題目に流れがちです。
そうではなく、現代の人たちのごく普通一般の視点、たまたま日本に生まれて日本人ということになっているけれども、普段自分がどういう地面に立っているのかも、日本人であるからとかもあまり意識していない、ニュートラルで周囲の些末な中で生きている人を中心に描こうと思いました。

『日本沈没2020』(C)“JAPAN SINKS : 2020”Project Partners
そのために、登場人物たちをいろんなタイプにセッティングしてゆきました。(国籍が)ダブルの人、海外から来た人、日本が好きな人、嫌いな人、海外から来た人を受け入れられない人。
理由があって日本へ来たや、好きか嫌いかもあまり意識していないまま生活を営んできた人たちが、いっぺんに足場がなくなるという状況が起きたときにどうなるか。
そういう人達をリアルなタッチで描こう。一切カメラを彼らから離さないようにしよう。というような全体の方向性が決まってゆきました。

さらにエンターテイメントとして、毎回誰が生き残るかわからない、誰が主人公なのかもわからないのがいいなと思いました。どんどん人が亡くなっていくけれども、否応なしに進んで行く、視聴者の興味を失わない形でストーリーを進ませようとしました。

ロードムービーのように常に移動していくアイデアも最初の構成にあったので、どんな風に移動して、最後はどうやって誰が抜けるのか。
誰が生き残って誰が亡くなるのかを、ああだこうだと話し合いながら、全体の設定をざっくりと決めていきました。

詳細ははっきりと決めないまま、頭から作り始めたのですが、中盤に差しかかったあたりでようやく“視えた”というか、主人公が思っていたことがハッキリしてきて、最後に言わせるセリフに辿り着きました。
そのままラフに最後まで通して作ってから、第1話に戻って脚本を繰り返し書き直したり、設定や名前も変更したりしました」


次は、映像で表現したかったことについて語る。

→次のページ:『日本沈没 第二部』を意識して“漂流する日本人”の姿を描く

《中村美奈子》
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