東南アジア最大級「C3AFA」は他のアニメイベントと何が違うのか SOZO Pte.Ltd代表ショーン・チン【インタビュー】 | アニメ!アニメ!

東南アジア最大級「C3AFA」は他のアニメイベントと何が違うのか SOZO Pte.Ltd代表ショーン・チン【インタビュー】

2019年11月29日から12月1日まで開催される東南アジア最大級のアニメイベント「C3AFA Singapore 2019」。シンガポールでこれほど大規模なアニメイベントが行われるようになったのか、C3AFAの企画・運営を手掛けるSOZO Pte.Ltd代表ショーン・チン氏にインタビュー。

インタビュー
注目記事
東南アジア最大級「C3AFA」は他のアニメイベントと何が違うのか SOZO Pte.Ltd代表ショーン・チン【インタビュー】
  • 東南アジア最大級「C3AFA」は他のアニメイベントと何が違うのか SOZO Pte.Ltd代表ショーン・チン【インタビュー】
  • 東南アジア最大級「C3AFA」は他のアニメイベントと何が違うのか SOZO Pte.Ltd代表ショーン・チン【インタビュー】
  • 東南アジア最大級「C3AFA」は他のアニメイベントと何が違うのか SOZO Pte.Ltd代表ショーン・チン【インタビュー】
  • 東南アジア最大級「C3AFA」は他のアニメイベントと何が違うのか SOZO Pte.Ltd代表ショーン・チン【インタビュー】
2019年11月29日から12月1日まで開催される東南アジア最大級のアニメイベント「C3AFA Singapore 2019」。今年は『ゾンビランドサガ』などの人気作品や、茅原実里などの実力派アーティストが参加を予定している。

そもそもなぜ、シンガポールでこれほど大規模なアニメイベントが行われるようになったのだろうか。イベント本番が迫る中、C3AFAの企画・運営を手掛けるSOZO Pte.Ltd代表ショーン・チン氏にお話をうかがった。
[取材=数土直志、文=ハシビロコ]

    ショーン・チン(Shawn CHIN)


    2009年にシンガポールでSOZO Pte.Ltdを創業。AFA(Anime Festival ASIA、現C3AFA)の運営など、日本のポップカルチャーと東南アジア全域での懸け橋となる活動を行っている。


海外でも“本物”とふれあえる場所を


――AFAは業界内では有名ですが、日本のアニメファンには馴染みない方も少なくないかと思います。まずはイベント内容を簡単に教えていただけますか。

ショーン(以下、ショーン):AFAは体験型イベントを目指しており、とにかく“本物にふれる”ことに重点を置いたイベントです。
具体的には、アニメを中心とした日本のポップカルチャーを体験できる展示、スタッフ・声優を招いたステージ、アニソンライブなどですが、現地のファンが本物とふれあえる場所を目指して、10年前から開催しています。

――10年前は今よりもアニメコンベンションが少なく、ファンが運営する小規模なものがほとんどでした。企業が主体となって海外でアニメイベントを行おうと思った理由をお聞かせください。

チン:私自身、日本アニメの大ファンなんです。しかし当時のシンガポールには、まだオフィシャルなアニメイベントがなくて。
公式のコンテンツをシンガポールにも持ち込むべきだと思ったのが、AFAを始めたきっかけです。

当初は出展者集めやアーティストへの出演交渉など、すべてが手探りの状態。もしかしたら5,000人くらいしか来場者がいないのでは、と不安もありました。
ただ、やってみると約3万人ものお客様がいらっしゃいました。ビジネスとしても手ごたえを感じたので、継続して開催するようになりました。


――AFAは初回から大規模で行われており、順風満帆だったようにも見えます。当初大変だったことはありましたか?

チン:文化の違いには悩まされました。たとえばサインに対する考え方。日本では色紙にサインをするのが通例ですが、シンガポールでは服や持ち物などどこにでも書きます。
ほかにも国によってさまざまな違いがあり、それをひとつずつクリアしていくのが大変でした。当然、スポンサーから理解を得るために苦労したこともあります。

しかしそれ以上によかったのは、シンガポールからAFAをスタートさせられたこと。
シンガポールは東南アジアの中でも比較的インフラが整備されており、日本からもアクセスしやすい場所にあります。
シンガポールを起点として海外のアニメイベントをブラッシュアップしていく。それができたのは大きなメリットでしたね。

また、May’n さんやLISAさんなど日本を代表するアーティストの方々や、『けいおん!』などの有名コンテンツが初期から協力してくれたのも大きな後押しとなりました。
最初の4年間はシンガポールのみで開催していましたが、当時から多くの国々から参加してくれる人がたくさんいて。そこでシンガポール以外でもAFAを開催するようになりました。

音楽は国境を超える


――AFA開催当初、現地のアニメファンがとくに喜んだポイントは?

チン:やはり「本物」に触れられることです。みなさん喜んでいましたね。本物のアーティスト、正規ライセンスのグッズなど、これまでは身近になかったものばかりなので。

――現在のイベント規模を教えていただけますか。

チン:昨年の来場者数は約10万5,000人でした。18~30歳くらいの年齢層が多く、男女比は男性7割、女性3割。近々女性の比率が上がって、4割くらいになると予想しています。

――AFAは音楽イベントも見どころのひとつです。なぜJ-POPやアニソンに力を入れているのでしょうか。

チン:アーティストに来てもらうのが、お客さんに一番本物感を味わってもらえるだろうと。
音楽って国境を超えるんです。アニメは吹き替えで見ている人もいますが、音楽は同じものを聴いているので。言葉がわからなくても、「本物だ!」と思ってもらえるコンテンツのひとつがアニソンやJ-POPでした。

AFAを初めて開催したころ、日本でもアニソン系のライブが大成功していたので、ビジネスとしても参考にしました。SOZO Pte.Ltdにはライブ制作に特化した部門もあるので、毎回連携しながらやっています。


――日本のアニメ市場を参考にすることはありますか?

チン:日本のマーケットは常に意識していますが、日本でヒットしたものをそのまま持ち込むわけではありません。どのようにすれば現地で受け入れてもらえるかを考える必要があるので。
SOZO Pte.Ltdにはシンガポール人をはじめ、日本人やマレーシア人などさまざまな国籍の社員がいますし、オタクもいます。どう伝えれば現地のファンに「いいものだ」と思ってもらえるか。日本のマーケットだけではなく、そんな部分も意識しています。

また、コンテンツのブランディングにも気をつかっています。チケットを安売りしないなど、ビジネスベースでもできることを10年間実践してきました。
日本のマーケットから学んだことを、ちゃんと現地で受け入れてもらえるようにしていく。それが私の役割だと思っています。

海外ならではの姿を見てほしい


――C3AFA Singapore 2019の見どころは?

チン:これだけさまざまな作品やアーティストなどをひとつの会場で網羅できるのは大きな魅力ではないでしょうか。
ライブにしても、海外ならではの見せ方をしてくるアーティストもいますし、普段はサインをあまりしない方が「海外イベントなら」とサインに応じてくれることもあります。日本国内とはまた違った姿を見ていただくのもひとつの楽しみ方ではないでしょうか。

――ビジネス的な話になるのですが、アニメイベントC3とAFAが統合した理由と、波及効果をうかがえますか?

チン:C3もAFAも、もともと「日本のコンテンツを世界に届けていく」というミッションを掲げていました。開催地域は共通するところもありましたが、ほとんどが異なっていて。ですから、お互いのイベント規模を大きくしていくために統合しました。

結果として、お客様や物販のラインナップを取り合うことがなくなり、正規のメッセージを正規のお客様に届けることができて。日本のコンテンツを海外に届けるためのプラットホームを共有できたのが、最大の効果だったと思います。

――C3AFAを年に何回もさまざまな地域で開催する利点はありますか。

チン:シンガポールのみならず、ほかの国や地域にも本物のコンテンツを届けたいと思っています。実際に本物にふれてもらうのは大きな効果があるので。

また、地域によってプロモーション方法を変えたほうがうまくいくこともあります。細かな部分まで現地で受け入れてもらえる形にして、ファンに届けるためにフランチャイズ展開をしています。

まだ地域名は出せませんが、今後も広い地域で開催していく予定があるので楽しみにしていてください。


――C3AFAのシンガポール市場への経済効果はありましたか?

チン:国内の観光資源に対していい影響を与えたと、昨年シンガポールの観光庁から表彰を受けました。政府からも経済効果のあるイベントだと認識されているようです。

AFAを始めてから、シンガポールが東南アジアへ日本アニメを発信するときの中心地になりつつあって。開催し続けてきた意味はあったと思います。

「日本製」だけを活かした展開は難しい


――今後東南アジアにおける日本アニメ市場は、どのように変わっていくと思いますか。

チン:中国の台頭もあり、市場に少しずつ変化が見られます。日本アニメ・ゲームのビジュアルに見えても、実は中国で作っている場合も多くなってきました。ですから、今までのように「日本製」だけを活かした売り方はなかなか難しくなっています。
しかし日本製のコンテンツには大きな優位性があるので、東南アジアにおけるビジネスチャンスは、まだまだ広がっていくと考えています。

――シンガポールやマレーシアでも、一見すると日本アニメやマンガのように思える作品を作る可能性があると思います。そうしたコンテンツは今後取り込んでいきますか?


チン:国によってクリエイターが育つ環境が違うので一概には言えませんが、日本のような作品を作ろうと努力している人たちはいます。日本のアニメ会社から作業を下請けしている現地の会社もあるので、技術はこれから育っていくかと。
ただ、トータルで日本アニメに並び立つクオリティーの作品がいつできるか。それはまだ予想がつきません。

――日本では最新アニメを追いかける楽しみ方が主流ですが、シンガポールのアニメファンはどのように情報を得てアニメを楽しんでいるのでしょうか。

チン:情報自体はFacebookのコミュニティで得る人もいれば、日本からインターネットを通して直接得る人もいます。
自分の嗜好性にあう情報を手に入れ、気に入った作品は「これは見るべき」とコミュニティ上でおすすめする。こうした楽しみ方をする人が多いと思います。

そんな中、我々の所有するメディア「So Japan(ソージャパン)」では正規の情報を発信する役割を担っています。月間300万人が閲覧しているサイトです。

>「So Japan(ソージャパン)」

アニメが好きな人の中には、日本語を覚えて情報などを仕入れる人もいれば、日本語がわからないけれどアニメが好きな人もいて。ですから「So Japan」では最新情報を翻訳して、より多くのアニメファンに届けるようにしています。

◆◆◆
日本のアニメが好きだからこそ、海外のファンにも本物を届けたい。C3AFAはそんな熱い想いが原動力となって開催されている。

なお、アニメ!アニメ!では「C3AFA Singapore 2019」を特集取材するので、現地に足を運べない人もイベントの様子を楽しんでほしい。

[アニメ!アニメ!ビズ/animeanime.bizより転載記事]
《取材=数土直志、文=ハシビロコ》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集