あの衝撃から10年…伝説の個人制作アニメ「センコロール」続編で宇木敦哉監督が描くものとは?【インタビュー】 | アニメ!アニメ!

あの衝撃から10年…伝説の個人制作アニメ「センコロール」続編で宇木敦哉監督が描くものとは?【インタビュー】

『センコロール コネクト』が6月29日に公開される。本稿では本作の生みの親である宇木敦哉監督にインタビューを敢行。監督のパーソナルな部分にも迫りつつ、シリーズに込めた想いの丈を語っていただいた。

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マンガ家・イラストレーターとしても活躍する宇木敦哉がほぼ一人で作り上げた短編アニメーション『センコロール』

2009年に公開された本作は、巨大生物“センコ”とともに高校生活を送る主人公・テツと、同じく巨大生物を操る少年・シュウの遭遇、そして、戦いに巻き込まれる女子高生・ユキの姿を描いたSFアニメだ。
そんな『センコロール』と、続編である『センコロール2』がひとつになった『センコロール コネクト』が、6月29日に公開される。


10年を経ての続編ということで、期待で胸がいっぱいの方はもちろん、これを機に初めて本作に触れるという方もいるはず。
この記事では、『センコロール』の生みの親である宇木敦哉監督にインタビューを敢行。監督のパーソナルな部分にも迫りつつ、シリーズに込めた想いの丈を語っていただいた。
[取材・構成=山田幸彦]

■衝撃の個人制作アニメはいかに生まれた?


アニメクリエーター発掘プロジェクト「動画東京」より選出され、本格的な制作がスタートした『センコロール』。
無機物へと変形するセンコの能力を活かしたアクションシーンなど、高いクオリティで展開される個性的な映像は当時の観客の心を鷲掴みにし、多くの熱狂的なファンを生み出した。

そんな『センコロール』をほぼ一人で制作した宇木監督。だが、決して熱狂的なアニメファンだったわけではなく、マンガを愛する青年だったという。

「小中学校のときは『ジャンプ』の連載作品など、王道なマンガを中心に読んでいたんです。その後、浪人生時代に『アフタヌーン』で連載していた『BLAME!』などに触れて、こういう方向の作品もあるんだな、と驚いたんですよね。こういった表現ができるなら、自分もマンガ家になりたい、と考えていました」


そんな宇木監督がアニメを作り出したきっかけは、自らの手で映像を作り出す面白さに惹かれたことだった。

「僕が子どもの頃はインターネットもなかったし、観られるアニメ映画といえば、TVで放送されているジブリやディズニーの作品くらいだったんです。なので、アニメに親しむ中で『自分もこれを作ってみたい!』と感じたわけではなく、大学時代に試しに作ってみて、面白さを感じたことが始まりなんですよ。自分の描いた絵が動いてムービーになることが、当時すごく衝撃的でした」

宇木監督が大学に在籍していたのは2000年代初頭。パソコンの性能向上などに伴い、自主制作アニメーション制作の敷居が低くなりつつある時代だった。

「Macでアニメを作れることを雑誌が特集し始めたりと、ちょっとしたブームがありましたね。その時期、うちの大学にもMacが導入されて、僕も興味を持っていたんです。で、同じゼミにいたオタクな先輩方から、絵をタイムラインに並べて、コンポジットして……という、Adobe After Effectsを用いたアニメーション制作の基本を教えてもらいました。そこからアニメ制作にハマりまして、卒業制作もアニメにしましたね。センコとは違う存在ですが、その頃から自作の中に白いクリーチャーを登場させています(笑)」


大学卒業後、マンガ家志望として活動。2005年には講談社アフタヌーン四季賞にて『アモン・ゲーム』が大賞を受賞した。
そんな中、動画革命東京に提出した企画が同団体プロデューサーの目に留まったことが契機となり、『センコロール』の制作がスタートしていく。

「就職をせず、映像やWeb制作のバイトで食いつなぎながら、描いたマンガを講談社などに投稿する生活を続けていました」

その時期に動画革命東京のお話をいただき、『センコロール』のパイロット版を作ることになったんです。
当時はまだ話の内容は決まっておらず、中高生のキャラクターとクリーチャーを登場させようかな、くらいの気持ちでしたね」


その後、YouTubeへとアップロードされたパイロット版がアニプレックスの岩上敦宏プロデューサーの目に留まり、劇場公開版の制作がスタートしていく。
『真・女神転生』シリーズの悪魔や、マンガ『3×3 EYES』の妖魔など、クリーチャーに惹かれることが多かった宇木監督。自作においてもクリーチャー描写には特に力を入れたという。そのこだわりの強さは、本編を観れば一目瞭然だ。

「クリーチャーに加え、戦車やヘリといったメカが好きなので、『センコロール』でも、そこを前面に出していきたかった。なのでアクションシーンは『1』でも『2』でも、サクサクと制作が進みました」

反面、難しさを感じたのは人間同士のパートだったという。

クリーチャーたちがグニャグニャと動き回るカットは、『大変そうですね』と言われますけれど、実は一番筆が進む部分なんです。逆に人物同士の画の方が『どうやって描いたものかな……』と悩むことが多いですね。ボーイ・ミーツ・ガール的なシチュエーションが好きなので、高校生たちを主人公にしたのですが、基本的に恋愛ものにはあまり興味がないので(笑)、結果的に普通とはちょっと違う雰囲気が出ているのかなと」


先に収録した演技に合わせて映像を制作するプレスコ方式を採用している本作。キャラクターの演技に関して宇木監督は、非現実的なセンコたちとは対象的に、現実感ある芝居を要求した。

「僕の好みもあって、記号的なアニメの演技ではなく、実写映画のような雰囲気の抑えめの演技で、というオーダーをしています。『2』から出演している高森(奈津美)さんと赤羽根(健治)さんにも同じことをお伝えしました」

個性が前面に出たビジュアルが評価を受け、第13回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品にも選出された『センコロール』。だが、当初は宇木監督の中には不安があった。

「アニメの師匠もいなかったので、常に試行錯誤しながら描いていました。それもあって、商業アニメでは枚数を割かないカットも『センコロール』では派手に動いていたりするんですよね。観る人の違和感に繋がってしまわないかな……と心配になることもありましたが、良い方向に受け止めてもらっていたようで、嬉しかったです」

■世界観が広がり、よりエンターテイメント性を意識した『センコロール2』


1作目から10年を経て公開される『センコロール コネクト』。監督は、前作の反省点を意識し、より明瞭さのある作品を目指したと語った。

「1作目は尺が30分と決まっていたので、キャラや説明を最低限に抑えた作りにしました。『2』は前提となる世界観などを観客の人たちも理解した状態でのスタートなので、1作目よりも作りやすかったです。
前作を完成させたときに、終盤でクリーチャーのコントロールが乱れるシーンの流れなど、もう少し明確に描いても良かったな、という反省点もありました。そこを踏まえて、『2』はわかりやすさも意識した作りになっています。総じて、前作よりも見やすい作品になっているのではないでしょうか」

話の中で、監督は1作目と2作目共に、脚本ではなく、イメージボードから作業を開始し、絵を描く中で物語を創造していると明かす。


宇木監督によるイメージボード

「テキストから始めるのではなく、まず、『こういうシーンを描きたいな』というイメージを絵にしていきました。その後、いわゆる絵コンテではなく、マンガのネームのような形式で映像の設計を考えていくという流れを踏んでいます。
理想のシーンのイメージを描きためておいて、それを繋げていくという作り方が、描きながら考える自分には合っていますね

劇中に登場するクリーチャーの総称が“ドローン”であることなど、『2』では新たなる設定も開示されていく。宇木監督は、新キャラクターのデザインと共に、それらの設定も描きながら考えていった。

「『センコロール』を終えた頃は、ドローンたちを管理している組織があり、そこからシュウが逃げ出して……程度のバックグラウンドは考えていたんです。そこから膨らませて『2』のストーリーが出来上がっていきました。そういった設定やキャラクター、ドローンのデザインも、描きながら考えていく形でしたね。ただ、今回はスタジオに動画をお願いしている部分もあるので、後から設定画は起こしていますが」


また、『センコロール』といえば忘れてはいけないのが、supercellのryoが手がける劇中音楽だ。

「劇伴に関しては、多少オーダーした部分もありますが、基本はお任せです。前作の主題歌『LOVE&ROLL』をはじめ、上手く映像の雰囲気を掴んだ楽曲を作っていただいたなと。『2』でも映像はもちろんですが、音楽面においても、楽しみにしていただきたいです」

最後に、宇木監督へクリエイターとしての今後の展望についてお聞きした。すると、今後への期待が高まるコメントをいただけた。

「完成した『2』観たときに、達成感と同時に、今度はこういう挑戦したいな、とイメージがどんどん浮かんできました。
センコたち“ドローン”もそうですが、僕はクリーチャーやモンスター、半人半獣といった人外キャラを描くのが大好きなんです。そういった存在が活躍する作品を、今後も作っていきたいですね」
《山田幸彦》
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