“タマシイのぶつかり合い”でよりよい作品を…「消滅都市」原作スタッフが明かす、アニメ化企画の裏側 | アニメ!アニメ!

“タマシイのぶつかり合い”でよりよい作品を…「消滅都市」原作スタッフが明かす、アニメ化企画の裏側

2018年5月27日に開催されたリアルイベント「PROJECT消滅都市発足発表会」にて、アニメ化が発表された人気スマートフォン向けゲーム『消滅都市』。

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左から大桑哲也氏、下田翔大氏、濱坂真一郎氏
  • 左から大桑哲也氏、下田翔大氏、濱坂真一郎氏
  • 大桑哲也氏
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  • 左から濱坂真一郎氏、下田翔大氏、大桑哲也氏
2018年5月27日に開催されたリアルイベント「PROJECT消滅都市発足発表会」にて、アニメ化が発表された人気スマートフォン向けゲーム『消滅都市』。

間口の広いゲーム性とドラマチックな物語が同時に楽しめることから幅広い層の支持を集め、すでに全世界で900万ダウンロードを達成。アニメ!アニメ!で2016年に行った“アニメ化してほしいゲームランキング”でも1位を獲得している人気ぶりだけに、アニメ化発表はファン待望といっても過言ではないだろう。
>「アニメ化してほしいゲームは?」アンケート、アプリ部門1位は『消滅都市』

そこで今回は、原作の制作を手がけるWright Flyer Studiosから、シリーズディレクター兼シナリオライター下田翔大氏、アート面を取りまとめるリードデザイナーの濱坂真一郎氏、アニメ化への取りまとめを行った大桑哲也氏の3名へのインタビューを敢行。アニメ化を進めていく中での舞台裏エピソードを語ってもらった。

すでに大勢のファンがいる原作の物語を大事にしつつも、制作を託すアニメスタッフとの交流を重ねていくうちに“喧嘩をしつつも背中を任せられる関係”となったという、熱いエピソードの数々をお楽しみいただきたい。
[取材・構成=馬波レイ]

TVアニメ『消滅都市』
https://shoumetsutoshi-anime.com/

■脚本を巡っては喧々囂々の話し合いが!?


――アニメ化がスタートした経緯をお聞かせください。
大桑
1年半ほど前に、今回アニメ制作を担当していただくポニーキャニオンさんのプロデューサーからお話をいただいたのがきっかけです。そこから社内での調整や製作委員会といった陣容を整えて、プロジェクトがスタートしました。
弊社内でも『消滅都市』をアニメ化したい意向はずっとあったのですが、なかなか一社だけで動かせるようなものではないので、お声がけはありがたかったです。

下田
グリー(※Wright Flyer Studiosの親会社)としては過去に自社IPのアニメ化で、反省点のあった作品もありました。ただ作ればいいというわけではないと思っていたので、今回の座組ができるまでは、アニメ化に対してかなり慎重な姿勢でした。

――ポニーキャニオンさんとの制作がきまってからは、アニメとしてどういう方向性を打ち出そうとされていたのでしょう?

大桑
『消滅都市』はゲームとしての知名度がある程度あるとはいえ、テレビ放送でより広い方々に知ってもらううえでは我々はチャレンジャーの立場にあります。
今回、アニメーション制作はマッドハウスさんが担当されるのですが、制作プロデューサーと最初に相談したのは、どのような制作スタイルを取るかです。
今回は、原作の我々が強いイニシアチブを取るのでもなく、完全におまかせするのでもなく、議論を重ねていきながら両者が一緒に進めていくスタイルを取りたいと考えました。

大桑哲也氏
大桑哲也氏

――アニメ側のスタッフと、一緒になって制作をしていくスタイル。

大桑
ええ。下田が言ったように、過去にアニメ化した際は、言い方は悪いですけど"ゲームの宣伝媒体"みたいな形になってしまったこともありました。当然アニメファンにもそれが分かってしまい多くの方に楽しんでいただくことができなかった。一方で完全にお任せしてしまうと原作の良さは活かせませんから今回は疑問や不明点はみんなで議論して、一緒に解決していくことを強く意識しました。

下田
ゲーム制作でもそうなんですけど“ものづくりの場”が機能していないと、不幸な結果になりがちです。
決してなあなあではなく、お互いが本気になって意見をぶつけ合いながらも、最後には手を取り合っている関係でないといいものは作れない。そういった“場”を作ることはすごく重要だと考えました。

――同じクリエイターの立場としてともに作り上げていったと。具体的にはミーティングを重ねていくことで?

大桑
そうですね。週に一度夕方から深夜まで本読み(脚本チェック)の場を重ねています。

下田
最初こそお互いの顔色を伺いつつだったんですけど、回数を重ねるごとに意見交換が活発……というよりヒートアップしていきましたね。

大桑
スタッフ全員が“地に足の着いたドラマを作りたい”という意思のもと、物語の中で「こういうことは起こらない」「こういう言い方はしない」といった部分に、とことんこだわっていました。ときにはかなりヒートアップしたりもありましたけど、それがあったからこそ方向性が定まったと言えます。

左から下田翔大氏、大桑哲也氏、濱坂真一郎氏
左から下田翔大氏、大桑哲也氏、濱坂真一郎氏

――ゲームとアニメでの表現の違いによる摩擦なのでしょうか?

大桑
いや、そういう対立構図ではないんです。『消滅都市』をアニメ化するんだったらこういう方向性だろうというのは、最初からおおよそ同じ方向を向いていたんです。その中でどのような表現にしたほうがよりいいのかが、おのおの違っていました。
面白かったのは、監督はもちろんのこと、脚本家、下田、プロデューサー、マッドハウスのプロデューサーの方も、脚本から明確に“どんな画ができあがるか”をイメージできるスタッフの集まりだったんです。なので、脚本上はいいのだけど、細かく詰めていくとイメージしている画が違うということでのぶつかりが結構あったなという感じです。

下田
特に議論が白熱したのが“タマシイ”(※ヒロインの少女ユキに召喚されるキャラク
ター)についてですね。
設定がどうこうというよりは、タマシイを目の前にした登場人物たちが、どういう気持ちで向き合ったらいいのかということ。タマシイは幽霊ではないのですが、肉体はすでに滅んでいるかもしれない存在。生きて戻ってくる可能性が1パーセントでもあるのか、あるいは生きていると信じたいだけなのかと、“この世界を生きる人がタマシイとどういう気持ちで向き合っていくのか”という尺度を巡ってはかなり話し込みました。

――タマシイは原作の物語でも重要な要素です。

下田
アニメにおける表現に関しては、プロのみなさんですし当然100パーセント信頼しています。だからこそ、伝えたいこと、表現したいことについて、根っこの部分について意識をひとつにすることが大事だと考えました。お任せするための大事なポイントをガッツリ論議したということですね。
それだけあって、完成した1話の絵コンテを見たら「(激論を交わして)よかった~!」という気持ちでいっぱいでしたね。

大桑
たとえば、みんなが煮詰まっているときに制作プロデューサーの方の提案で、一気に解決への道が開けたりすることも何度もありました。喧々諤々の議論を交わしつつも、それぞれのスタッフの職能がパズルのピースのようにカチッとハマっていきましたね。
なので、本読みの後半になっても遠慮せずに意見が言い合える関係が続いて、最終的にはお互いが背中を預けあっている、よい信頼関係が結べたと思っています。
《馬波レイ》
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