日本ならではのCGアニメができた「ルドルフとイッパイアッテナ」湯山監督×榊原監督が思いを語る | アニメ!アニメ!

日本ならではのCGアニメができた「ルドルフとイッパイアッテナ」湯山監督×榊原監督が思いを語る

斉藤洋による名作児童小説『ルドルフとイッパイアッテナ』がフル3DCGアニメーションとなってこの夏劇場に登場する。アニメ!アニメ!では湯山、榊原両監督にインタビューを行った。

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斉藤洋による名作児童小説『ルドルフとイッパイアッテナ』がフル3DCGアニメーションとなってこの夏劇場に登場する。『ポケットモンスター』シリーズの総監督を長年務めている湯山邦彦と、『パックワールド』で監督を務めたLA在住の榊原幹典が監督として名を連ね、アニメーション制作をOLM DigitalとSprite Animationが担当。ルドルフたちの成長や心の交流、登場する動物たちのきめ細やかな仕草や日本の街並み、四季の移り変わりなどを瑞々しい映像で描ききっている。
8月6日からの全国公開を記念して、アニメ!アニメ!では湯山、榊原両監督にインタビューを行った。作品に対する思いやこだわりのポイント、3DCGでどうしてここまで描き切ることができたのか、などをじっくりとうかがった。
[取材・構成:細川洋平]

『ルドルフとイッパイアッテナ』
2016年5月6日全国公開
http://rudolf-ippaiattena.com/

■状況や環境が揃ってきた、今だからできた映画

ーまずはどういった経緯でお二人が『ルドルフとイッパイアッテナ』の監督となったのでしょうか。

湯山
制作母体のOLMと日テレさんで立ち上がった企画に呼ばれた形です。僕はまず原作本を「読んどいて」と渡されていたので、2Dでやるとばかり思っていたんです。ある日、日テレに呼ばれて行くと榊原さんもいて、90分のフルCGの映画をやると聞かされました。

榊原
そこで初めてお会いしましたね。こういう企画は最初に1分くらいのパイロット映像を作ってからやるかやらないか判断するものだし、大抵は通らないんです。でも今回はドンドン企画が進行していきました。

ー本作の企画がスムーズに通っていったのには理由があるのでしょうか。

湯山
いろんな状況が揃ってきたんだと思うんです。2年前に企画がスタートしたのですが、例えばこれが4年前だったらたぶんできなかった。今は制作フローや技術力、PCのマシンパワーも揃ってきています。昔、5分くらいの短編をCGで作ったんですけど、その時は線画の原撮(原画撮影)をしてそこからCGに変換していた。ものすごく手間のかかるものだったんです。当時はこの先どう進化していくのか想像もつきませんでした。ところが今回は絵コンテからアニマティクスを作るとその段階でもうCGを動かせるんです。個人的な感触で言うとそのフローの成立が、企画の成立に影響したのかなと思います。

ー一方で榊原監督は長年3DCGを手がけられていますが、どうご覧になっていますか。

榊原
うちはSpriteAnimationという会社でLAにあります。OLM Digitalとはこの数年間一緒にTVシリーズを含め何本もやっていたので、OLMとの制作フローの土壌もしっかりできていて、そういう意味でもすごくタイミングがいい企画だったのかなと思います。


ーお二人はどういった役割分担で監督を務められているのでしょうか。

榊原
基本的には湯山監督がシナリオや絵コンテ、演出面をやられて、僕はキャラクターデザインなどを提案したり、CG全般を担当していました。思い返せば「どこからどこまで」という打ち合わせはしてませんでしたね。

湯山
そうですね。何となくうまく分担できましたね。

ーキャラクターのお芝居部分を見ているのは?

榊原
湯山監督ですね。僕はLA、湯山監督は日本と離れていたので、そんなに直接お話をする機会はないんですけど、湯山監督が仕上げられた絵コンテに十分な情報量が入っていたので、こちらはそれを解釈しながら進めて行きました。打ち合わせはメールベースで、描いたイメージをこちらから湯山監督に送って意見を聞く、そういうコミュニケーションが多かったと思います。

■逃げないで作ろうと思った

ールドルフを初めとして、猫の動きが非常にリアルで印象的でした。

湯山
僕は全体のバランスを見ながら修正していきました。細部ではOLM Digitalのアニメーションディレクター池田さんが非常にがんばってくれました。

榊原
毛、体の骨格、アクション、カメラワークとそれぞれが分業になっていて、各部署の優秀なリーダーが取りまとめるんです。

ー美術も非常に美しいですね。写実性なども含め、どのくらいまで打ち合わせで話し合ったのでしょうか。

湯山
僕がお願いしたのは瑞々しさ、というところです。

榊原
シズル感ですね。写実は冷たい感じになってしまう場合があるし、今回は建築パースのような絵は合わないのかなと思いました。ですので、町の看板や標識に猫のネタを入れましょうと話をしていて、それによってみんなが「自分の作っている町だ」という愛着を持ってもらう。それがあたたかさに繋がるはずだと。あたたかさや手触りみたいなものを自然に入れていくという所は結構苦労しました。

湯山
看板はよく見るとかなり凝ったものになってますよね。猫にちなんだ名前や猫の絵が入っていたり。

ー物語の後半に出てくる水の描写も「ここまで表現できるのか」と驚きました。

湯山
水は質感がなかなか出なくてかなり苦労しましたね。

榊原
そうですね。体が濡れている感じや必要以上に怖い表現にならないよう、調整にもかなり気を配りました。

ー完成披露試写会でもおっしゃっていましたが、桜の花びらは一枚一枚手で置いていったのですか?

榊原
風景を作ろうと考えていくとやっぱり絵を描く作業と同じになってくるんです。花びらも適当にばらまくプログラムがありますけど、それでは「ばらまいた」という感じしかでないんですよ。美しい配置のためにはそこから手で置いていくという作業をアニメーターたちがやるんです。向きや表裏まで考えて置いていく、そういう積み重ねが落ち葉の配置には出ているんです。


ー技術が発達しても最終的にはアニメーターたちの存在が重要になってくるんですね。

湯山
最後は人の手ですね。やっぱり。

榊原
ええ、スタッフの才能が画面に反映されていると言うことです。

ー描写でもうひとつ、うかがいたいと思っていたのが「殴るシーン」です。物語の序盤でイッパイアッテナがルドルフを殴る、原作にも描かれているものではありますがアニメーションにするに当たって相当気を遣ったのではないでしょうか。そもそも別の表現に置き換えるという選択肢もあったのかなと思ったのですが。

湯山
『ルドルフ』を作るに当たって、今回は普通のアニメではやらないことを入れようと思っていたんです。殴るシーンは原作とは違うシチュエーションの中での行為となっていますが、イッパイアッテナがルドルフを心配するあまりに抱く怒りや、それからイッパイアッテナ自身の感じる心の痛みに強く繋がっていたのでどうしても別の表現に逃げたくなかった。「この映画は逃げないで描ききりたい」と思った1番の表れがまさにこのシーンですね。

(次のページに続く)
《細川洋平》
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