2015年11月27日、第19回文化庁メディア芸術祭の受賞作品が発表された。東京・六本木の国立新美術館では発表記者会見も実施され、受賞者のコメントや審査委員の講評も紹介された。受賞作品はこれまでどおりアート部門、エンターテイメント部門、アニメーション部門、音楽部門の4部門からなる。アート部門の大賞は英国のチュン・ワイチン・ブライアンの『50 . Shades of Grey』、エンターテイメント部門は岸野雄一の『正しい数の数え方』、アニメーション部門はフランスのボリス・ラべの『Rhizome』、マンガ部門は東村アキコの『かくかくしかじか』であった。アート部門の大賞『50 . Shades of Grey』は、プログラミング言語が平面に描かれたコンセプチュアルな作品。これまで大型のインスタレーションやプロジェクトの受賞が多かったなかで異彩を放つ。『正しい数の数え方』は軽快なステージパフォーマンスで、アニメーションなども含めた様々なメディアとコラボレーションする。2016年2月の受賞作品展では、会場内で連日パフォーマンスを繰り広げるという。東村アキコの『かくかくしかじか』は、東村が学生時代に経験したことを自伝エッセイ風に描いた。会見では東村のビデオメッセージが紹介され「こんなに長くなるとも、大きな賞を取るとも思わなかった」と語っていた。アニメーション部門は海外の短編アニメーションが強さを発揮した。大賞の『Rhizome』のほか、優秀賞4作品のうち3作品、新人賞3作品のうち2作品を占めた。なかでも大賞を含めた4作品がフランスからである。海外作品の大賞受賞は3年連続になる。日本からロトスコープとCGを融合させた岩井俊二監督の長編『花とアリス殺人事件』が優秀賞に、新井陽次郎監督の『台風のノルダ』が新人賞を受賞した。審査委員の小出氏は、近年、世界的に短編アニメーションのレベルが上がっていること、また応募も多かったと語った。一方で、受賞作品の有り様は、近年のメディア芸術祭全体の海外作品重視の流れも反映していそうだ。かつてはメディア芸術祭のアニメーション部門は、アートとエンタテイメント、長編と短編、テレビ作品のバランスを取りながらとの傾向があったが、現在の方向性は大きく変わっているとも感じさせた。こうした傾向は審査委員会の推薦作品にも表れている。23作品のうち短編が19作品、うちテレビアニメからはアニメ業界の内側を描き話題を呼んだ『SHIROBAKO』のみで、ほとんど審査の対象になってないことが分かる。また国内短編アニメーションは4作品、劇場アニメーション3作品だった。短編からは『息ができない』(木畠彩矢香監督)、『ズドラーストヴィチェ!』(幸洋子監督)、『ディス イズ マイ ハウス』(大川原亮監督)、『何も見なくていい』(伊藤圭吾監督)。若手の作品が並んだ。すでに国内外で活躍する作家が多い。劇場からは長井龍雪監督『心が叫びたがってるんだ。』と原恵一監督の『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』、細田守監督の『バケモノの子』と、いずれも本年高い評価を受けた作品だ。また功労賞も発表されている。4分野からそれぞれのジャンルで大きな貢献をした人物を顕彰するものである。アニメーション関連では、戦後間もない時期の東映動画(現・東映アニメーション)の長編映画の頃からアニメーターとして活躍した小田部羊一が選ばれた。またマンガの研究とその膨大な著者で知られる清水勲、ゲームからはファミコンの開発で大きな役割を果たした上村雅之、アートからは映画評論の飯村隆彦の各氏が受賞。作品の作り手、批評家・研究家、技術開発者と異なった立場から選ばれている。受賞作品は2016年2月3日から14日まで国立新美術館ほかで開催される受賞作品展にて披露される。期間中は展示や上映、講演なども含めて、最新のメディア芸術の様相を伝えることになる。[数土直志]第19回文化庁メディア芸術祭 受賞作品展会期: 2016年2月3日(水)~2月14日(日)会場: 国立新美術館、TOHOシネマズ 六本木ヒルズ、スーパー・デラックス入場料: 無料 ※全てのプログラムは参加無料です。主催: 文化庁メディア芸術祭実行委員会[/アニメ!アニメ!ビズ/www.animeanime.bizより転載]
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