2015年10月20日~22日まで東京・台場のホテル グランパシフィック LE DAIBAにて映像・音楽・アニメの国際見本市「Japan Content Showcase 2015」が開催された。会期中、同見本市では様々なイベントやセミナーも催された。20日にはアニメーション制作会社・神風動画の代表を務める水崎淳平氏によるセミナー「神風動画における海外クリエイティブの可能性」が行われた。独特のアニメ表現を続ける神風動画の制作フローとともに海外も含めた同社の活動展望を紹介するというものだ。まず、水崎氏は会社の概要を述べた。神風動画は1998年より個人事業としてスタート。2013年に法人化を果たした。立ち上げた目的は「自分がアニメをもっとよくしたい」という思いからだと言う。設立後、早い段階から基本的な技術で対応可能なワークフローを確立し、誰にでもている。2012年からスタートしたTVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズでは全クールOP映像を担当、大きな話題を呼んだ。キャラクター作成にあたって、誰にでも作れるようなワークフローが社内にあり、『ジョジョ』のOPもそのノウハウを用いられているという。使用している3DCGソフトは“After Effect”。メジャーなソフトであり、「アニメは技術ではなく、感性であるということを忘れてほしくない」という思いから技術的にハードルの低いこのソフトを選んだとのこと。実際、神風動画には、元警察官、元歌手、元料理人とさまざまな経歴をもったスタッフも在籍している。2013年には兵庫県にある顕微鏡「X線レーザー・SACLA」を擬人化したPRアニメーション「未来光子播磨サクラ」を公開。セルルック3DCGで制作され、公開直後に海外を含め15万アクセスを突破した。後日メイキング映像も公開されたが、この裏には「CGで制作されたものだということを知ってもらうため」という思いがあったと水崎氏は語り、続けて「日本のセルルックの技術は飛び抜けているのでは」と語った。2014年に制作されたTVアニメ「そにアニ -SUPER SONICO THE ANIMATION-」では第8話のED映像を担当。すーぱーそに子の3DCGデータが配布され「すーぱーそに子が出ていれば何をしてもいい」と言われたことから、セルルック→3Dプリンタでのフィギュア作成→フォトリアルという順ですーぱーそに子のさまざまな3DCG表現を果たした。神風動画の社内では作画作業などに一切紙を使っていないという。紙に描くような委託アニメーターもこの5年で大幅に減少したと水崎氏は述べた。社内スタッフには外国籍の者も在籍している。日本語をほとんど話せない者もいるが、アメリカの大学出身の日本人スタッフが通訳を担うことでコミュニケーションの壁をクリアしている。また、海外から日本に来るクリエイターは日本のコンテンツが好きなことから、ある程度の日本語は自主的に学習してくるとのこと。こうしたことから、外国籍スタッフの受け容れにも積極的であり、水崎氏は「作品に文化の違いを出していきたい」と語った。スタジオは原宿(本社)と新宿に構えておりSkypeで常時繋がっている。現在沖縄に新スタジオを準備中であり、いずれは海外にも設置したいと明かした。最後に水崎氏は「いつかマーベル映画のOPをやりたいと思っています」と力強く海外における目標を語り、セミナーを締めくくった。個性的なスタジオとして紹介されることも多い神風動画だが、当然個性を活かすためには元となる基礎がしっかりしていなくてはいけない。その基礎部分を設立当初から「誰にでも扱えるワークフロー」として育ててきたからこそ、技術に邪魔されることなく個々人の「独特の感性」を発揮できるのだと実感した。個人の感性を会社がフォローする。水崎氏の「アニメをもっとよくしたい」という理念はこうして形となっていく。[細川洋平]
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