「ガラスの仮面」劇中劇から飛び出した「女海賊ビアンカ」壮大な波瀾万丈の冒険潭 | アニメ!アニメ!

「ガラスの仮面」劇中劇から飛び出した「女海賊ビアンカ」壮大な波瀾万丈の冒険潭

高浩美の アニメ×ステージ&ミュージカル談義 連載第141回 ■ 原作の劇中劇、実際にはあらすじ程度の作品をリアルに舞台化、空想の世界をリアル化する企画

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(C)美内すずえ/アカルプロジェクト
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高浩美の アニメ×ステージ&ミュージカル談義 連載第142回
[取材・構成: 高浩美]

■ 原作の劇中劇、実際にはあらすじ程度の作品をリアルに舞台化、空想の世界をリアル化する企画

有名なマンガ『ガラスの仮面』、1976年から現在まで連載が続いている大ベストセラーで累計発行部数は5000万部以上。演劇が題材で、実際に劇が劇中で演じられる劇中劇の形式をとっている。
『奇跡の人』等の著名な作品もあるが、大半は原作者の手によるオリジナルの劇。主人公・マヤが一人芝居をするようになってからは、この劇中劇がストーリー性を持ち、描写も細かくなっている。

『女海賊ビアンカ』は体育倉庫で体育用具をセットに見立ててマヤが1人で演じるといったものである。どんな状況においてもマヤは観客を作品世界に誘うことが出来る、といった才能を示すエピソードとなっている。
原作においては物語は、さほど描かれておらず、おおまかなあらすじといった程度で、むしろ、マヤの芝居を観た観客の反応に重点が置かれている。だが、今回の公演『女海賊ビアンカ』は2013年の舞台化に際し、原作者美内すずえと作・演出の児玉明子がこのために作り上げたもの。原作から大きく飛び出し、舞台になる。”もし、これが実際の舞台作品だったら”という空想の世界をリアルでやってしまおうという企画なのである。

■ 適材適所のキャスティング、”ミュージカルにするとこうなるんだ~”という一種の理想形

舞台セットは倉庫をイメージするものだが、体育館という訳ではない。漠然と”倉庫っぽい”といった感じだ、そこに老人が現れる。この物語を書いた”作家”のようにも見える。
それから、場面は一転、海賊船、船上での裁判のシーン、海賊の出で立ちの若い女性、この人物こそが、この物語のヒロイン、ビアンカ・カスターニだ。イタリアのジェノバと敵対関係にあるヴェネツィアの大貴族の娘であったが、和平のためにジェノバの大貴族のところに嫁に来た。婚約者であるロレンツォは身分が高いだけでなく、品位もあり、何より優しい、平和を愛する男であった。2人は恋に落ちるのにそう長くはかからなかった。
しかし、この結婚をよく思わない不満分子がいた。彼らの策略により、ビアンカは追われる身となり、さらに逃げる途中で海賊に襲われ、そのまま、海賊の一味となってしまう。

ジェットコースターのような展開、過酷な運命に翻弄されるビアンカを演じるのは唯月ふうか。ミュージカル『ピーターパン』のタイトルロールを演じているだけあって歌唱力と身軽さは折り紙付き。
対する海賊の副首領のシルバー、何よりも柄が大きく、荒くれどもを仕切っているにふさわしいルックスで口跡の良い根本正勝の確かな演技が光る。
出番は少なめだが、ロレンツォ演じる神永圭佑、ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズンで幸村精市役を好演していたが、こういった”王子キャラ”を演じさせたら右に出ない者はいない、というくらいのはまりっぷりで、11月の『リボンの騎士』でもフランツ王子にキャスティングされている。また、ビアンカに忠誠を誓うアルベルトに原嶋元久、寡黙な、めっぽう腕の立つ騎士、ラスト近くのアルベルトは、もう号泣必至だ。
いかにも腹黒そうなビアンカの叔母・レオノーラ、狡猾で目つき鋭いスペインの刺客・ビセンテ、優しいが、大局を見るビアンカの父・カスターニ公爵、幼いビアンカの弟・ジュリオ、乳母のマリエッラ等、70年代の少女マンガを彷彿とさせる”お約束”感、期待通りの”働き”ぶり、観てる方はわくわくする。

物語の舞台は16世紀初頭の地中海。世界史を勉強すればわかるが、当時の情勢を上手く取り入れて、リアリティも感じさせ、ファンタジーではあるが、”もしかしたらそういう史実があったのかも”と錯覚するような世界観だ。豪華なセットではないところが、原作をそこはかとなくイメージさせる。
ストレートプレイではなく、バリバリのミュージカルだ。歌あり、ダンスあり、アクションあり、原作では北島マヤがたった一人で演じていたものをきっちり適材適所のキャスティング、”ミュージカルにするとこうなるんだ~”という一種の理想形だ。

原作者がプログラムの挨拶部分で書いているのだが、2年程度の連載作品として構想を練っていたものだとか。そういう訳で『ガラスの仮面』では物語の全貌を見せていなかったのだと書かれている。

テーマは”生きること”。どんなに辛い事があっても生きる、と誓ったビアンカ。結局、彼女はどうなったのか、ここははっきりとは描かれていないが、ラストは清々しい。
脚本は原作者自ら、というところにこだわりを感じる。劇中劇でも想像力をかき立てられる『女海賊ビアンカ』、マンガ化、アニメ化する前に舞台化されているが、2次元バリバリのビアンカも是非観たい。

美内すずえ×ガラスの仮面劇場『女海賊ビアンカ』
(C)美内すずえ/アカルプロジェクト
《高浩美》
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