「ベイマックス」D・ホール&C・ウィリアムズ両監督インタビュー 作品の鍵に日本アニメへの愛情も | アニメ!アニメ!

「ベイマックス」D・ホール&C・ウィリアムズ両監督インタビュー 作品の鍵に日本アニメへの愛情も

12月20日から劇場公開が始まる「ベイマックス」。自然と涙して癒されてしまうアニメーション映画として話題を集める。監督のホール氏、ウィリアムズ氏に作品の見どころを伺った。

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映画『ベイマックス』の監督、クリス・ウィリアムズ氏(写真左)とドン・ホール氏(写真右)
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 いよいよ来週20日から劇場公開が始まるディズニー最新作『ベイマックス』は、オトナのオトコも自然と涙して癒されてしまうロボット映画として早くも話題を振りまいている。先日は日本語吹き替え版も完成しジャパン・プレミアも行われた。我々は、本作の監督であるドン・ホール氏、クリス・ウィリアムズ氏に、作品が誕生した背景と見どころをインタビューした。

----お二人は『ベイマックス』の共同監督でいらっしゃいますが、制作がスタートしてから、お二人でどのように役割を分担されてきたのでしょうか。

クリス・ウィリアムズ氏(以下:クリス):ドンは私より先に3年前ぐらいから『ベイマックス』の制作を始めていました。やがて物語がどんどん展開して大きくなって、関わるスタッフの人数も数百人規模に膨れあがってきた頃に、ドンから「一緒にディレクターをやろうよ?」と声をかけてもらったことがきっかけです。私たちは二人ともストーリーボード・アーティスト(絵コンテ作家)としてディズニーに20年近く勤めてきたキャリアがあります。『ベイマックス』の制作中はなるべく一緒に仕事をするかたちをとってきましたが、制作段階が佳境にさしかかって仕事が増えてきてからは、ドンがアニメーション、私が映像の照明やエフェクト周りという具合に役割を分担せざるを得ない時もありました。でも、コミュニケーションは密に取りながら、力を合わせて一緒につくった作品が『ベイマックス』だと自負しています。

ドン・ホール氏(以下:ドン):確かに、クリスは20年、私は19年とストーリーボード・アーティストとしてディズニー作品に関わってきましたし、いくつかの作品で一緒に仕事をしたこともあるとても良き友人です!こうして初めて監督として、一緒にクリスと作品をつくることができて、とても嬉しく感じています。

----作品を観ながら、日本の有名なアニメーション作品のキャラクターやストーリーのバックグラウンドを感じる瞬間がいくつもありました。お二人ともこれまで多くの日本のアニメーション作品をご覧になってきたと思いますが、今までに影響を受けた作品やクリエイターを教えて下さい。

クリス:確かに、私たちはアメリカに生まれ育ちながら、日本のポップカルチャーに子供の頃から触れてきた世代です。子供の頃は「Battle of the Planets」というアニメがお気に入りでした。アメリカ版の「科学忍者隊ガッチャマン」です。映像や物語の構成など、本当に色々なところから大きな影響を受けたと思います。大学生の頃に初めて“宮崎アニメ”に触れて、当時は友だちが手に入れたVHSビデオテープを皆で回し見していました。ディズニーの一員になった後、今から20年近く前のことですが、『もののけ姫』をシアターで観てもの凄く衝撃を受けました。私の宮崎駿監督へのリスペクトは全て『ベイマックス』に込めたつもりです!

ドン:私はアメリカの田舎町で生まれ育ったので、日本のテレビ番組があまり見られませんでした。だから子供の頃に受けた日本のアニメーションの影響といえば「おもちゃ」です。「Shogun Warriors」という、『マジンガーZ』のおもちゃに夢中でした。そして『勇者ライディーン』のロボットのおもちゃに付いていた「ロケットパンチ」も大のお気に入りでした。本作ではベイマックスのロケットパンチにもぜひ注目して欲しいと思います。物語の中でロケットパンチは時には復讐のための武器になったり、最後には人々を救う重要なアイテムになっています。私も遂に、憧れのロケットパンチを持つロボットの生みの親になれてとても幸せです!

クリス:ほかにも『ゴジラ』の影響も受けましたし、大友克洋監督の『AKIRA』はアニメ映画が実現できる無限の可能性を教えてくれました。『ラピュタ』もベイマックスにとって重要な作品の一つなんです。作品の製作総指揮であるジョン・ラセター氏と一緒に『ラピュタ』を観ながらストーリーのアイデアを練るミーティングをしていた時のことです。はじめは『ラピュタ』をほんの5分ぐらい観るつもりだったのですが、最終的には1時間近く皆でしっかり見入ってしまって(笑)。それほど宮崎監督の作品からは強いインスピレーションを受けています。物語の終盤に、主人公のヒロとベイマックスが空中アクションを繰りひろげる場面があるのですが、ここではぜひ、私たちがラピュタに込めたオマージュ的なシーンを見つけてもらえたらと思います。



----ベイマックスの物語は「サンフランソウキョウ」という、アメリカのサンフランシスコの地形に日本らしい景色が幾つも散りばめられて融合した美しい街が舞台になっています。私も作品を観ながら、リアルな日本らしい街の景色や自動販売機などのディティールを見つけて楽しませてもらいましたが、お二人が特にお気に入りの「日本らしい」シーンはありますか。

ドン:そうですね、僕がオススメしたいのは、冒頭のロボットファイトのシーンなんです。3年前に日本を訪れて、あるロボットシンポジウムを取材したときに実際のロボットファイトを目の当たりにしました。当時は確か、「キングカイザー」という名前のロボットが優勝したと記憶しています。ロボットたちの格闘を熱心に見つめる子供たちの目がキラキラと輝いていて、私も熱くなりました!ベイマックスの劇中では、全体のストーリーに抑揚を付けるために裏路地で夜な夜な非合法に開催されるイベントとして登場しますが、その迫力にもぜひ注目してもらいたいですね。

クリス:私が日本的な感性を最もうまく出せたと満足している場面は、ヒロとベイマックスが初めてサンフランソウキョウの上空を飛びまわった後に、タービンの上に座って静かに語り合うシーンです。激しくダイナミックな動きのあるシーンの後に、落ち着いた静寂なシーンをつなげることで、映像や物語のコントラスト感を表現しています。これはまさに宮崎監督の作品をはじめ、日本の素晴らしいアニメの影響を受けている部分でもあります。

----『ベイマックス』にはディズニーの新しい映像レンダリング技術である「ハイペリオン」というシステムが使われているそうですが、そのスゴさが最も良くわかる注目のシーンはありますか。

ドン:ハイペリオンについては本作品の全編で使っているので、どれか特定のシーンを切り抜いてご紹介するのは難しいのですが、この新しいレンダリング技術を使うことで、映像のディティールに磨きがかかり、引いては映画としてとてもナチュラルな映像に仕上げられていることが特徴だと思っています。とてもリアルな映像の世界に没入していただけるのではないでしょうか。敢えてオススメのシーンを挙げるなら、作品冒頭のところなのですが、サンフランソウキョウの街で5,000人を超える群衆が路上に集まるシーンが見所ですね。ぜひチェックして下さい。

----最後に劇場に『ベイマックス』を観に来る方々へのメッセージをお願いします。

クリス:子供の頃に観た『バンビ』が私にとって初めてのディズニー映画でした。優しく感情的なストーリーは、大切なものを失ってしまう喪失感についても語っています。子供たちにも力強くメッセージを届けてくれるアニメーションの可能性に興味を持った私が、ディズニーの一員として胸を張って皆さんに『ベイマックス』をお届けできることをとても幸せに感じています。

ドン:私も幼い頃からたくさんのディズニー作品に触れてきましたが、いつかは自らディズニー作品を監督してみたいという子供の頃からの夢が遂に叶ったという思いで胸がいっぱいです。皆さんに物語を伝える機会を得られたことは、今でも信じられないほど嬉しいことです。私たちが伝えたい物語が人々に触れて刺激を与え、様々な方々からコメントをもらって、今度は作り手である私たち自身が刺激を受けられることがとても幸せだと実感しています。『ベイマックス』をつくるために、制作に関わってきた全てのスタッフが全力を出し尽くました!ぜひ劇場に足を運んで下さい。

【特別インタビュー】オトコも泣ける!ディズニーアニメ『ベイマックス』…作品のキーにはジャパニメーションが

《山本 敦》
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