“キカイダーをREBOOTした想い”KADOKAWA・井上代表取締役&東映・白倉取締役インタビュー  | アニメ!アニメ!

“キカイダーをREBOOTした想い”KADOKAWA・井上代表取締役&東映・白倉取締役インタビュー 

70年代の変身ロボットヒーロー、キカイダーが“REBOOT=再起動”した。映画『キカイダーREBOOT』のKADOKAWAの井上伸一郎代表取締役専務と東映の白倉伸一郎取締役企画製作部長の思い入れを聞いた。

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 70年代の変身ロボットヒーロー、キカイダーが“REBOOT=再起動”する。映画『キカイダーREBOOT』は24日から全国ロードショー公開される。製作キーパーソンの2人、KADOKAWAの井上伸一郎代表取締役専務と東映の白倉伸一郎取締役企画製作部長の、思い入れを聞いた。

--- KADOKAWAは媒体ですので、キカイダーをコンテンツのひとつとして映画を製作するのはわかります。いっぽう東映にとっては自社のコンテンツなのだから単独で映画化してもいいのに、KADOKAWAをパートナーに選んだ。そこにはお互いなんらかの“想い”があったはずです。

井上:私がリアル“中二病”なんですよ。中二のときキカイダーを見て(編注:初回放送は1972年)、好きで忘れられなくて。2011年になって白倉さんに、「来年は40周年だけど何か企画はありますか?」と聞いたら何もないというので、年明けてすぐに企画書を持って行ったんです。

白倉:井上さんでなかったらやってなかったですね。

井上:白倉さんにも思い入れがあったと後で知りました。実現までの2年間は大変でしたけれど。

--- 作品のメインターゲットは?

井上:オールターゲットです。平成ライダーが15年間続いて、ライダー映画の年齢層が広がってきています。しかし邦画で、ライダーの後に見る、思春期向けの映画が少ないと思うんですよ。とくに男の子向けの実写がない。映画を見ないわけじゃなくて、アニメやホラー映画は中高生に対して手応えがあるんです。もっと選択肢があってよいはずだ、ヒーローものもあるべきじゃないか、と。自分は中二のとき「キカイダー」が刺さったし。

--- その辺がコア層ですか。

井上:かつてテレビを見ていた我々の世代が見てもおもしろいですよ。敵役の神崎に「その気持ちわかるよー」と(笑)。子どもはマサルを応援するでしょうし、女性はミツコに感情移入してくれると思います。

--- テレビで放送中ではない作品の映画化ですが、そのデメリットがあるんじゃないですか?

白倉:ないですね。テレビは放送時間が決まっていて、ライダーや戦隊は日曜日の朝の放映です。その時間を基準にすると低年齢層向けにならざるを得ない(編注:白倉氏はライダーや戦隊の製作も手がけた)。ファンの裾野は広がっているというものの、コアターゲットから軸足をずらせない。テレビのレギュラー放送がなかったので、“裾野”=ハイターゲットをねらった作品を制作できました。

井上:製作の自由度が高い。テレビ発のヒーローではできない表現が可能でした。

--- では、キカイダーらしさとは何でしょうか?

井上:「良心回路」ですね。心とはどういことか。キカイダーは思春期の少年の象徴なんです。悩む。自我がどこにあるのか、と。


白倉:この映画では「キカイダーとは何ぞや」を描くことしかやっていません。キカイダーは、自分が人間ではないということに向き合う。ロボットがどう考えるかなんて、人間にわかるわけないじゃないですか。物語の視線を人間に置いたほうが楽なのですけど、キカイダー視線で描きました。……ロボットだって人間だ、と。

井上:キカイダーは“機械人形”なので、逆に「人間の心って何?」とストレートに表現できるのが利点です。ロボットであることが表現のクッションになります。人間で人間を描くのは恥ずかしい。ボーイズラブが似たような例で、男と女だと気恥ずかしい展開も、ボーイズラブなら素直に見られる。 キカイダーは思春期の想いをストレートに打ち出している。恋愛はライダーにはない要素ですね。

白倉:ライダーで同じ話だと見てられない。「戦ってくれよ」と(笑)。キカイダーは考える、「自分ってなんだろう」と。人間はそんなこと考えなくても存在できる。キカイダーは命令がないと動けないのが、他のヒーローと違うところです。考えなければならないのです。

--- 今回の作品は、敵ロボットが何体も出てくる対決ものではありません。

井上:つまり、いま言ったように、キカイダーの本質はそこではないからです。

白倉:敵ロボット軍団は毎週テレビ放送するためのテクニックであって、今回の映画ではむしろそぎ落とすべき要素だった。またたくさん敵ロボットが出てくると、対ハカイダー戦が“ワンオブゼム”になってクライマックスにならない。

--- 海外配給はいかがです?

井上:いっぱんに邦画は国内市場が充分大きいので、海外は最初から視野に入れない作品が多いですね。言葉や習慣の違いが大きいということもあります。ヒーローものはメッセージをストレートに出せるので、海外に持って行きやすいですね。今回のキカイダーは、戦いの構図が「悪と戦う」のではなく「敵と戦う」構図なので、海外の方に理解されやすい素地ができたと思っています。

--- さて、過去の作品をリブートするからには、個人的な思い入れもそうですが、現代に通じる内容があると考えたのだと思います。マーべルコミックスがヒーロー映画を作っていて、日本だったら、たとえば鞍馬天狗や赤胴鈴之助のリメイクもありえるはずですが、でもキカイダーをリブートした。その理由は何ですか。

白倉:それはキカイダーの普遍性です。キカイダーは誕生からして、仮面ライダーを中心とした変身ブームの中で生まれ、仮面ライダーではできない、作品としての普遍性を追求してきた。新しくすることはテーマではないのです。また、現代の我々が作るのですから、ほっといても現代風になります。その意味では昔風も無理ですね。

--- リブート、リメイク作品は、すでにイメージが出来上がっている作品が先に存在します。とうぜん全員を満足させられないと思います。否定的な声にはどう応えますか。

白倉:これ以外にはないという説得力を持たせよう、と。「ぽい」ではないのです。

井上:さっき白倉さんもおっしゃったように、「今ならこうでしょ」ははずしています。もちろん、そういう映画を否定はしませんが、2人の間では今回のキカイダーで間違っていません。私の師匠の一人である富野由悠季さんから「ヒーローロボットはハンサムでなければならない」と教えられたんですが、今回のキカイダーはハンサムにできたと思いますよ。

【インタビュー】KADOKAWA・井上代表取締役&東映・白倉取締役……キカイダーをREBOOTした想い

《高木啓》
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